筧菜奈子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった。
美術館で見てもシュルレアリスムとかレディ・メイドの魅力がちっとも分からなかったのだけど、それらが生まれてきた過程や芸術家達の思想や理論を知ると「なるほどなぁ…」となるところもある。
でもそれを知ってなお、芸術としてどうかと見ると、やはり好みではなかったりする。
元々万人に受け入れられるものが良いわけでもないし、そこを目指してるわけでもないだろうから、それはそれでいいのだと思う。
デュシャンの便器はやっぱり全然分からないけど、ローズ・セラヴィ関連の作品は面白い試みだし好きだな。
抽象絵画の魅力あまり分からなかったけど、カンディンスキーの理論を知ると少し納得や安心するあたり、自分の理屈っぽい一面だなと感じる。
音楽用語がタイトルに使われてるのも納得感がある。
自動筆記は絵描いてたら誰でも覚えがあると思うけど、それを作品にしようとまでは思わないかなぁ。
シュルレアリスムは、ダリは好きなんだけど、映像作品は病みそうな世界観で苦手。
これらの創作意欲が「思考や感覚に一石を投じる」というような感覚であるとするならば、謙虚にも感じる。もちろん人によるだろうし、それを好ましく感じるのは私の感覚に過ぎないが。
ただ写真や機械が出てきたから「芸術とは何か」を考えるという流れは、もちろん必然ではあったと思うし悪いことではないけど、「何かありきで別の何かを考える」というのは本筋がズレる可能性を含みやすいと私は思う。
写真や機械やAIの存在がなくても「絵を描く」「何かを作る」というのは歌や踊りと同じくらい本能的なものだと思うのだけどな。「何が芸術か」と定義する必要もなく、その人にとって心が動くかどうかだけが大事なのではないかな。
まぁその上でそれを表現する方法を色々試行錯誤してるって話なのかもだけど…。
ポップアート・コンセプチュアルアート・ランドアートの紹介で感じたのは、平等性や「誰でも同じ絵を描ける」ことや「コンセプトがあれば誰が作ってもいい」や「たくさんの人の共同作業で作る」など、他人を巻き込んだり、「人は誰でも芸術家になりうる」「どうすればそうなるか」といった考え方。
芸術を特定の高尚な人達だけのものとせず裾野を広げる寛大な思想に感じるが、同時に他人の思考に踏み込んだりラインを引くような傲慢な行為とも感じた。
ランドアートに関しては、発想が自分の中になさすぎて、一体どういうきっかけや思想で自然に布をかけたいと思いつくのだろう?ととても不思議。
制作過程で一番大変なのが許可を取ることというのも、世界が違いすぎて面白い。
美術というものが自分の中では基本的に一人で籠ってできるものというオタク的な感覚があり、そこが好きなので、こういうたくさんの人との共同作業で作る芸術に挑む人達の発想や実行力に慄いてしまう。
大きいものは展示期間も刹那的なことが多いし…。
どちらが良い悪いということではなくて、芸術って幅広いのだなぁと改めて思う。
現代アートに関して思うのは、後々になって流派として纏められることによってある程度まっとうに見える部分もあると思うが、同じ時代に生きていたら「ただの奇抜ぶる浅ましい人」と自分からは見えたかもなぁと感じる芸術家もいそう。
実際いくつかの作品は本当に全く魅力や価値を感じない。
でもそれももしかしたら自分の中で変わる時も来るのかもしれない。
「アートとはそういうもの」「芸術は文化だから」「生きてるうちに認められたらラッキー」という説もあるが、そういう時間という縦の流れでも見えてくるものが違うのかなぁ。
時代や世界情勢によって芸術が変容していくのは当然のことではあるが、こうして見ていくとやはり感慨深い。どの時代にどの場所に生まれどのようなものや人と出会うか、といったコントロールできないことに思いを馳せてしまうな。
著者が一人で描き上げているのも興味深い(こういうのは専門家と漫画を描く人が別々のことが多いから)
とても読みやすくて良かった。
-
Posted by ブクログ
最近、息子が現代美術に興味を持ち始めたので、勉強も兼ねて読んでみました。
非常にわかりやすい一冊です。
有名なアーティストをジャンルごとに取り上げ、その周辺のアーティストも合わせて紹介する流れで解説が進んでいきます。マンガで描かれているので、解説がスッと頭に入ってくるのはもちろん、作品もイラストで紹介されているため、実物が見たくなります。私はデュシャンの《大ガラス》を実際に見てみたくなりました。
また、ビジネスにも応用できそうな内容が盛り込まれているのも魅力です。
たとえば「色が人間に与える心理的影響」や「点・線が持つ意味」など、資料作りやプレゼンにも役立ちそうな解説がありました。
中でも全く視野に入れていなかったのが、第7章の「ランドアート/環境アート」。
かなり壮大な作品が多く、実物を目にするのは至難の業ですが、せめて写真でも見てみたいと思わせられました。アートというと作家一人がコツコツ作るものだと思っていましたが、この分野はその概念を覆します。巨大な作品を制作するため、許可を取る苦労や、チームで一つのプロジェクトを成し遂げる必要があるのです。
特に興味を引かれたのは、夫婦アーティストのクリスト&ジャンヌ=クロード。
自然や公共物を布でくるむという特徴的な作風で、《ヴァレー・カーテン》をはじめ、海岸線やパリ最古の橋・ポン・ヌフなど、発想に驚かされる作品を数多く生み出しています。
もちろん、こうした作品は勝手に作れるものではありません。
クリスト&ジャンヌ=クロードはこう語っています。
「一番難しいのは許可を得るとうことです。世界中のすべてのもの、すべての場所は誰かに属しています。」
「やりたい」を形にするためには、数々の試練を乗り越えなければならない。
芸術作品を前に立ったとき、その造形や色彩だけでなく、作品が生まれるまでの背景や作者の思いを知ることで、受け取る感情はきっとより深くなる――そんなことを感じさせてくれる本でした。 -
Posted by ブクログ
読んでよかったと思います。
全体的に非常にわかりやすく構成されている本でした。現代アートと呼ばれるものがたどってきた道と合わせて、作家・作品の志向がなんとなく理解できました。
成り立ちを知ることで、漠然とよくわからないものだった現代アートが、少しだけ身近になったように思います。
見たものそのままをアートとして感じることが意図されたもの、社会や風潮・先行の芸術への批判など背景を読み取ることで意図が浮き彫りになるものなど、作品を観る視点が備わったような気がします。
分からない、理解できない、自分でも描けそう――。
世の中の、自分が及ばない領域について、こういった感想だけでその場を立ち去ってしまうのは、もったいないしつまならい。
もっともっと知らないもの、新しいものに触れていきたいと思うようになりました。
では、アートを通じて社会的な課題や、何らかの対象を批判するという衝動に関連して、例えば環境団体が芸術作品を巻き込んで行ったパフォーマンスについて、現代アートの文脈で整理することはできるのでしょうか。あるいは今は犯罪行為と認識されていても、やがて評価されるようなことがあるのでしょうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレきっかけ:アーティストごと、テーマごとにかかれていて、文章もよみやすそうだったので読みました。
感想:苦手な現代アートだけど、理解はしてみたいと思っていたのがかなえられた。人間の内側にフォーカスしているから怖いんだなとわかった。でも、そのアーティストのこだわりが知れるのは面白い。(見に行って直にふれるのはまだ怖い)
p64クリスチャンボルタンスキー
失われた記憶が作品テーマ(ユダヤ、古着=死など)
p139「作者→観者」から「作者⇔観者」へ
p135キュレーター
欧米のキュレーターの仕事は学芸員よりもげんていされており、展覧会の考案、監督がその役割
ニコラ・ブリオーやハンス・ウルリッヒ・オブリストなど -
Posted by ブクログ
私の目論見が外れて、私にはあまり役に立たなかったが、見方を変えれば力作であり、大変面白いと思う。しかも、オールカラーでこの値段ということは、案内役の「うめモン」ちゃんだけでなく、ここに出ているあらゆる「文様」を筧さん独りで描いたということでしか説明がつかない。いくら芸大出身だからといって、恐ろしいほどの力技だと思う。
第1部「日本の文様77種」に平均4つのイラストを配置したとして約300、その他いろいろで400-500の文様を正確にトレースしたはずだ。表紙を見たらわかるように、ひとつひとつが、ほとんど絵画だ。
しかし、残念ながら、日本と世界の文様の比較や、歴史から来るその大きな特徴、また、弥生時代の流水紋は現代まで生き残っているのだが、それは何故か等々の考察はほとんどされていない。ただただ、どんな文様(意匠)があるのか、分類して紹介しているだけなのである。目論見が外れたと言った所以である。
もちろん、着物を説明して「貝尽くし文様夜着」と聞いてどんな着物か想像できたら楽しいだろうし、京都四条通界隈に錦天満宮の梅、1928ビルの星、京都大丸の八芒星、先斗町入り口の千鳥、松竹南座の松竹等々の意匠を見つけたら楽しくて仕方ないだろう。
この本を持って、古い街に行き日本を感じる、そういう使い方がよく似合う本だと思う。