井崎英典のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
・書名:教養としてのコーヒー
・著者:井崎英典
・出版社: SBクリエイティブ
・内容:
コーヒーを単なる嗜好品としてではなく、歴史・地理・経済・文化・ビジネスの視点から読み解く教養書。エチオピアでの起源から世界的な流通、スペシャルティコーヒーの発展、バリスタの役割、そして現代のコーヒー産業が抱える課題までを幅広く扱う。コーヒー好きが「一杯の背景」を知るための入門書である。
コーヒーを飲むことが好きになってくると、不思議なことに味だけでは満足できなくなる。
この豆はどこで育ったのだろう。
なぜこんな香りが出るのだろう。
どうして同じコーヒーなのに、エチオピアとケニアではまるで別の飲み物のように感じるのだろう。
そんな疑問に答えてくれるのが本書である。
本書の面白さは、コーヒーを「飲み方」ではなく「世界の見方」として語っているところだ。
コーヒーの歴史をたどれば、中東やヨーロッパの文化史に行き着く。流通を調べれば国際経済や農業の問題に触れる。さらにスペシャルティコーヒーの世界を知れば、生産者から焙煎士、バリスタまで、多くの人々の技術と努力の上に一杯が成り立っていることが見えてくる。
普段何気なく飲んでいるコーヒーが、実はとても複雑な物語を背負っていることに気づかされる。
特に印象的だったのは、バリスタという仕事に対する見方が変わったことである。
かつては「おいしいコーヒーを淹れる人」という認識だった。しかし、今は機械が進化し、温度管理や抽出制御も高度に自動化されている。極端な話、誰でも一定以上においしいコーヒーを淹れられる時代になった。
だからこそ、これからのバリスタは単に抽出技術を持つ人ではない。
豆の背景を語り、客との会話を生み、空間そのものを演出する。コーヒーを飲むという行為を特別な体験へ変える人。それが現代のバリスタなのだろう。本書を読んでいると、そのような考え方が自然と腑に落ちる。
また、近年のコーヒー業界が抱える課題についても考えさせられた。
気候変動による生産量の減少や品質低下は、もはや避けて通れない問題である。高温化や異常気象によって、アラビカ種の栽培適地は今後大きく減少すると言われている。私たちが当たり前のように飲んでいるコーヒーも、未来永劫同じ品質で手に入るとは限らない。
そう考えると、毎朝の一杯が少し違って見えてくる。
もっとも、私自身は難しいことを考える前に、まず儀式を始めてしまう。
豆を買ってきたら、必ずクンクンするのである。
開封したときにクンクン。
豆を挽いたときにクンクン。
ドリップ中にもクンクン。
飲む前にもクンクン。
もはやコーヒー愛好家というより、警察犬の訓練に近い。
しかし本書を読んでいると、その行動にも少しだけ意味がある気がしてくる。香りはコーヒーの大切な個性であり、生産地や精製方法、焙煎によって大きく変化するからだ。
ケニアのベリー感に驚き、エチオピアの華やかさに感動し、ニカラグアの穏やかな甘みに癒やされる。
その違いを楽しめるようになったのは、コーヒーを飲むだけでなく、少しずつ知る楽しさを覚えたからなのだと思う。
読み終えて感じたのは、コーヒーは単なる飲み物ではなく、人類の歴史や文化、経済活動が凝縮された存在だということだった。
そして今日もまた私は豆袋を開けてクンクンする。
教養として読む前に、まず鼻が先に反応してしまうのである。 -
Posted by ブクログ
ネタバレコーヒーの1000年の歴史を通して社会やビジネス的な側面を学ぶ本。意外に一気読みしてしまうテンポの良さとコーヒーの面白さに驚いた。
日本がコーヒー消費量で世界4位だということには驚いた、たしかにカフェ難民が生じる国って日本くらいではと感じる。みんなカフェが好きなのか、コーヒーが好きなのか。
コーヒーの焙煎機の中は炉みたいな構造になっているとか、豆なら冷凍で保存したほうがいいとか、デカフェはどうやってカフェイン抜いてるのかとか面白いお話が満載だった。マックのコーヒーはハンバーガーと一緒に飲む前提だから単体で飲むコーヒーとは基準が違うというのも目からウロコ。
中国に行ったときラッキンコーヒーを結構見かけたが、そこのアドバイザーってことはすごい人なんだなと思った。 -
Posted by ブクログ
コーヒーをより深く味わうことができるようになる一冊。地理、世界史、化学、経済など様々な面からアプローチすることで現在のコーヒーの輪郭がはっきりとしてくる。生産量ランキングがブラジル、ベトナム、インドネシア……となっているのも意外だった(よく飲んだり聞いたりするのがコロンビアやエチオピアだったので)。アイスコーヒーの文化が日本発祥であることにも驚いた。知らないことばかりだ。
老舗の純喫茶に行きたくなる。
ペットボトルのコーヒーが薄いことや、チェーン店によってコーヒーの味わいが異なる背景に、しっかりとビジネスの姿があった。誰がどのようなシチュエーションでコーヒーを飲むのか、ニーズを追求した結果の形だったのか。読んでハッとさせられることも多い。
筆者の淹れ方もとても参考になる。湯を注いだ後に揺らしてドリッパー内を均すことはしていなかったので今度実践してみる。