清水裕貴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「小説すばる」2月号だったかに書評、というか対談が載ってて、どうも設定に聞き覚えがあると思ったら、やはり2021/8号に最終回が載っててそれを読んでいたらしい。最終回だけぼんやりと覚えている状態で、一章から読み直すというのはなかなか得難い経験。
まあ、短編集に近いものなので一章ずつ読んでも違和感はないが、それでも主人公のバックストーリーや他の登場人物との関係性も最終話だけではわからないので、なるほど、と思いながら改めて楽しめた。
全体としては、本のタイトルの「花盛りの椅子」が一話でいきなり終わってしまってちょっと面食らったが、章立てのような短編集のような形だった。第一章は特に不思議なことはあ -
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「蚊の視界は上下が逆さまになっている。我々の目に天と映るものが下にあり地は上にある。蚊にとって上昇とは我々にとっての下降であり、だから飛行も難しくないのだ」という話を読んだ記憶がある…ずいぶん前なので真相は定かではないが。
ものの見方捉え方が全く異なるということもあるらしい。
見たままを克明に捉えれば画は写実的になるはずだが
描く人によって表現が変わるということは、描く人それぞれにとって見え方は違っているのだろう。
川沿いにある美大とそこに携わる人々を描いた短編集。
描く人・見る人の視点だけでなく描かれる側・見られる側の視点からも表現があって、丸いドームの中にいるような立体的な構造とい -
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記憶を紡いでくれる物たちの存在。
短編集がそれぞれの震災と当時の家具たちをテーマにしていて、どれだけ壊れても、時間が経っても、その時の使われていた様子を家具は刻んでいるんだと心温まりながらも少し悲しい物語でした。
どれだけ廃れてもそこに存在している限り、人が忘れてしまうような長い年月を静かに語りかけているような家具たちを見て、ものを大切にしようと思えます。
そして、古家具屋で新たな命を吹き込まれてまた誰かの元へ流れて時を刻んでいく素敵な流れだなぁと。
しかもその家具たちからのメッセージを感じる時が、また不可思議な光景が見えたり、鴻池さんには綺麗に見えていたり不思議体験な感じが神秘的でした。 -
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どこかで好評価を見かけ、調べたら著者の清水裕貴さんは写真家、グラフィックデザイナーとして活躍している方と知って興味を持ちました。
しかし、ダメでした。
震災などで被災した家具を仕立て直して販売する家具店の 職人見習いの女性を主人公にした連作短編集です。過去を背負った家具を相手に、ごく自然な流れでオカルト的な話に入り込んでいくのですが、どうもそれが不自然に感じられるのです。普通、もう少し驚いたり、怖れたり、原因を探ったりするでしょう。
不思議な世界が嫌いなわけでは無いのです。梨木香歩さんの『家守奇譚』も、川上弘美さん『神様』も、小川洋子さんの『沈黙博物館』も好きです。でも、この物語には入っていけ -
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読書備忘録707号。
★★★。
千葉県の田舎にある「森野古家具店」。
全国から廃棄された家具を引き取り、リメイクして古家具として販売する。
社長の森野さん独特の目利きで"これはっ!"という廃家具を見つけてくる。
リメイクの方法が一風変わっている。箪笥を引き取ったら箪笥としてリメイクする訳ではなく、一部分だけを使って机として仕上げたりする。
家具職人たちは、倉庫に陳列している廃家具を物色し、ピンときた家具を引き取って、リメイクして納品する。それを社長の森野さんがネットで販売する、という仕組み。
主人公は家具職人見習いの鴻池さん(女子)。
鳴かず飛ばずで9年。ひとつもリメ -
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古い家具にまつわる様々な過去が、一人の女性家具職人の目を通して語られる連作短編集。
廃棄されることになった古い家具の背景には、東日本大震災や阪神淡路大震災などの自然災害があり、霊的なものも現れて、薄暗く湿った雰囲気が漂っている。
作者は美大で映像を専門に学んだというだけあって、情景の切り取り方がうまく、印象的な場面の光景は目に浮かんでくる。
その一方で、言葉の使い方や文章は気になるところが多い。会話文で「ですねー」「でしょー」など平仮名の語尾に長音の記号を多用したり、「?」「!」「…」の記号もしばしば出てくる。全体を通してSNSのような軽い表記はかなり違和感があり、最後までなじめなかった。 -
Posted by ブクログ
森野古家具店では、災害などで損傷した家具を回収し、家具職人がその中から作り直して販売している。そこで働く職人見習いの鴻池は、様々な人や家具と出会うことで、気持ちに変化が訪れる。
人と共に家具にも歴史ありということで、背景にある天災がもたらした人々の心情には心苦しかったです。
東日本大震災や阪神大震災など、そこで生き残った家具達が職人の手によって再生されていくということで、考え深いなとも思いました。
「女による女のためのR−18文学賞」で受賞された清水さん。時々男女の描写で、エロい場面ではないのに艶かしい表現をされている所があったので、一瞬ドキっとしました。
全体的には、ゆったりとした時