【感想・ネタバレ】花盛りの椅子のレビュー

あらすじ

傷ついた古家具には、無数の命が仕舞われている。緑生い茂る山の中、ぽつんと佇む「森野古家具店」。そこには、過去の沁みこんだ被災家具たちが、各々の物語をたずさえ集まってくるのだった――。職人見習いの「鴻池さん」が、家具に秘められた当時の記憶に触れる、感性ゆたかな連作短編集。

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ネタバレ

『被災した古家具に宿る想いに心を寄せて…』

被災し使えなくなった古家具を集めリメイクする『森野古家具店』で家具職人見習いとして働く鴻池さん。東日本大震災、伊勢湾台風、関東大震災、阪神淡路大震災を題材として、独特の世界観を描き出すファンタジー!?

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2022年09月06日

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ネタバレ

「小説すばる」2月号だったかに書評、というか対談が載ってて、どうも設定に聞き覚えがあると思ったら、やはり2021/8号に最終回が載っててそれを読んでいたらしい。最終回だけぼんやりと覚えている状態で、一章から読み直すというのはなかなか得難い経験。
まあ、短編集に近いものなので一章ずつ読んでも違和感はないが、それでも主人公のバックストーリーや他の登場人物との関係性も最終話だけではわからないので、なるほど、と思いながら改めて楽しめた。

全体としては、本のタイトルの「花盛りの椅子」が一話でいきなり終わってしまってちょっと面食らったが、章立てのような短編集のような形だった。第一章は特に不思議なことはあまりなく、水害にあった家具を修繕する主人公たちが静かに日々を過ごしている風景を描く。

二章からちょっと雰囲気が変わってくる。主人公は誰にも明かさないが、どうも被災家具からメッセージのようなものを受け取ってしまっているらしい。幻覚だったり、言葉だったり… それをきっかけに行動を起こしたり、何かに巻き込まれたり…
と言っても事件というほどでは全くなく、淡々と過ぎていく。
とても静かな、でもちょっと怖い話。
「万祝い襖」が特に良かった。

2011/3の震災から始まり、今をときめくコロナ、そして熊本地震など、被災家具をテーマにしているだけあって日常に災害が染み込んでいて、不意に家具から色々と出てきたり、放射線量という話題が出てきたりしてぐっとなってしまうときがある。2011どころか1959年の伊勢湾台風や1995の阪神淡路大震災も話題に出る。
特に被害を受けてない自分でこれなのだから、読む人によっては注意したほうが良いのかも。

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2022年03月27日

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装丁に惹かれて読んでみたのが大正解。
震災などで行き場をなくした家具をリメイクして販売する森野古家具店
出勤するとお店の屋根がなくなっているところから始まる物語に一気に心を掴まれました。
主人公の鴻池さんは、なんだか不思議な感覚の持ち主みたいでゾクゾクぞわぞわするオカルト寄り?なでも全然恐くはない。
素敵に再生されていくからなのかな?
この雰囲気、好きです。

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2023年02月18日

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古い家具を修復し、仕立て直す職人の話。災害で持ち主がいなくなった家具が多い。家具に縁がある死者が自然に近くに存在していたりする。不思議な雰囲気。

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2022年10月11日

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「家具は部屋の時間をその身に記憶している。生活の時間の蓄積が美しく現れている家具は、どこか清潔な気配がある」までは、ふむふむ、さくさく読んでいたが、霊的な話が展開し始めて姿勢を正してしまった。初めての作家だけど不思議な空気感漂わせている。

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2022年06月26日

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杉江松恋さんのツイッターで発見。
読んでると、ちょっと不思議で静謐、おまけにフルカラーのショートムービーを見てるような感じになる。
作者は映像作家でもあるらしい。
大震災の経験者が出てくる。
「巣籠り箪笥」のラストはぞわっとした。

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2022年06月23日

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キャラクターが良く立ち上がっていて、鴻池さんもどんな女性か想像できるし、イケメンあり、癒しキャラの社長ありです。
ただ家具が蘇って、心温まる話で終わるわけでは無いけど、本当に日本のどこかでこういう話ありそうだなーって思えるお話です。

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2022年03月19日

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記憶を紡いでくれる物たちの存在。
短編集がそれぞれの震災と当時の家具たちをテーマにしていて、どれだけ壊れても、時間が経っても、その時の使われていた様子を家具は刻んでいるんだと心温まりながらも少し悲しい物語でした。
どれだけ廃れてもそこに存在している限り、人が忘れてしまうような長い年月を静かに語りかけているような家具たちを見て、ものを大切にしようと思えます。
そして、古家具屋で新たな命を吹き込まれてまた誰かの元へ流れて時を刻んでいく素敵な流れだなぁと。
しかもその家具たちからのメッセージを感じる時が、また不可思議な光景が見えたり、鴻池さんには綺麗に見えていたり不思議体験な感じが神秘的でした。

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2025年05月03日

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どこかで好評価を見かけ、調べたら著者の清水裕貴さんは写真家、グラフィックデザイナーとして活躍している方と知って興味を持ちました。
しかし、ダメでした。
震災などで被災した家具を仕立て直して販売する家具店の 職人見習いの女性を主人公にした連作短編集です。過去を背負った家具を相手に、ごく自然な流れでオカルト的な話に入り込んでいくのですが、どうもそれが不自然に感じられるのです。普通、もう少し驚いたり、怖れたり、原因を探ったりするでしょう。
不思議な世界が嫌いなわけでは無いのです。梨木香歩さんの『家守奇譚』も、川上弘美さん『神様』も、小川洋子さんの『沈黙博物館』も好きです。でも、この物語には入っていけませんでした。

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2024年03月19日

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読書備忘録707号。
★★★。

千葉県の田舎にある「森野古家具店」。
全国から廃棄された家具を引き取り、リメイクして古家具として販売する。
社長の森野さん独特の目利きで"これはっ!"という廃家具を見つけてくる。
リメイクの方法が一風変わっている。箪笥を引き取ったら箪笥としてリメイクする訳ではなく、一部分だけを使って机として仕上げたりする。
家具職人たちは、倉庫に陳列している廃家具を物色し、ピンときた家具を引き取って、リメイクして納品する。それを社長の森野さんがネットで販売する、という仕組み。

主人公は家具職人見習いの鴻池さん(女子)。
鳴かず飛ばずで9年。ひとつもリメイク家具を完成出来ていない。
物語は、東日本震災や阪神大震災で廃棄された家具と向き合い、鴻池さんが目に見えない速度(笑)で、家具職人として成長としていくというもの。

読む前は、リメイクのテクニックなど、今まで知らなかった世界に誘ってくれるものとワクワクしましたが、読んでいくうちに、災害で廃棄された家具たちが長年溜め込んできた人々の念がオカルト的に見えてしまう鴻池さんの物語であることに気づき若干興ざめしてしまいました。笑笑
オカルトにせず、家具が語りかけてくるような描写が読みたかったぁ。

家具のパーツ同士が組み合わされキメラのように新しい家具を完成させたり、移植手術の様にパーツを組み込まれた家具が拒絶反応を起こさない様な匠の世界を期待していた。

まあでも読むのがしんどかった訳ではないので★3つ。個人的嗜好が合わなかっただけです。

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2023年01月06日

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職人見習いの鴻池さんが働く修繕工房「森野古家具店」には
傷ついた古い家具がたくさん置かれている。
リフォームして、新たな持ち主の元へと旅立つ。
彼女は被災した家具から伝わることを静かに受け止める。

「巣籠り箪笥」は少し怖いけれどエピソードに心惹かれる。
震災のシーンを読むとき、ちょっと覚悟のようなものも必要だったけれど
鴻池さん以外の登場人物が明るくて救われたかな。

震災で亡くなった人たちの声はこのように
何かの形で受け継がれ語り継がれていくのかもしれない。

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2022年09月05日

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古家具にまつわる怪異譚だが、主人公の語りが必ずしも信用できないこと、開示されない情報があることでミステリ的な要素も。
作業場の奥でひっそり眠っていた被災家具が、突然ぬるっと様相を変える。呼び込んだ記憶は、思いのほか水分を含んで生臭くさえあるのに、突き放せない切迫さと愛おしさが、確かにある。

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2022年06月17日

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古い家具にまつわる様々な過去が、一人の女性家具職人の目を通して語られる連作短編集。

廃棄されることになった古い家具の背景には、東日本大震災や阪神淡路大震災などの自然災害があり、霊的なものも現れて、薄暗く湿った雰囲気が漂っている。
作者は美大で映像を専門に学んだというだけあって、情景の切り取り方がうまく、印象的な場面の光景は目に浮かんでくる。

その一方で、言葉の使い方や文章は気になるところが多い。会話文で「ですねー」「でしょー」など平仮名の語尾に長音の記号を多用したり、「?」「!」「…」の記号もしばしば出てくる。全体を通してSNSのような軽い表記はかなり違和感があり、最後までなじめなかった。

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2022年06月01日

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震災などにより傷ついた家具をリメイクしている「森野古家具店」で働く「鴻池さん」。彼女自身、東日本大震災により家族が犠牲になっている。
家具を使用している人はもとより、家具自体にも歴史や思いが込められている。それがリメイクされ新たな人の手に託され、人生と同じように家具も巡り巡りながら生きているのだなと思った。
全体的に静に丁寧に話が進んでいくことから、家具にも癒すための時間が必要なのでしょうか。 

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2022年03月12日

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森野古家具店では、災害などで損傷した家具を回収し、家具職人がその中から作り直して販売している。そこで働く職人見習いの鴻池は、様々な人や家具と出会うことで、気持ちに変化が訪れる。


人と共に家具にも歴史ありということで、背景にある天災がもたらした人々の心情には心苦しかったです。
東日本大震災や阪神大震災など、そこで生き残った家具達が職人の手によって再生されていくということで、考え深いなとも思いました。

「女による女のためのR−18文学賞」で受賞された清水さん。時々男女の描写で、エロい場面ではないのに艶かしい表現をされている所があったので、一瞬ドキっとしました。

全体的には、ゆったりとした時間が流れているように感じました。急がせず、一つの家具と向き合い、歴史を振り返りながら、新たなる旅路へと旅立つといった流れになっていきます。そこには「死と再生」といった深いテーマが込められているように感じました。

家具にとっての「死と再生」は、もしかしたら人にとって「悪夢」かもしれませんし、「生きた証」かもしれません。そう思うと、なんとも複雑な心境になりました。

その家具を見るだけで、その人が味わった思い出が蘇ります。なかなか高い買い物をした分だけ、捨てられませんし、状態によっては、人よりも長く生き続けます。

味わい深いといった解釈もできますし、曰く付きといった解釈もできます。
そういった家具達を職人がどのようにして、再生していくのか?そう考えると、職人の凄さを感じました。

ゆったりとした空間や時間で読みたい作品でした。

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2022年03月04日

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