小沢さかえのレビュー一覧
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〔!〕それで十分だと、パパは思うんだ。同じ、生きものどうしだからね(p.67)
〔内容〕人間の教師であるウタドリさんが、マッドガイド・ウォーターのちいさな水棲生物クーイ族の少年ヤービから聞いた彼らの暮らし/同じヤービのパパ、ママ、セジロ、マミジロやベック族のトリカたちが登場/人間による環境破壊により少しずつ棲みにくくなっているらしい。
〔感想〕トガリネズミに似た感じの一種の妖精? まあ、多くの人が「ムーミン」を思い出すでしょう。どこか凍えるような冷たさのあるムーミンの世界より温かいと思うが、しかしヒト族の絶え間ない自然への侵食等の問題も扱っている。
〔好み度〕ここちよさ:B/キャラ:A/設定:A/文章・絵:B/思いがけなさ:B/総合:B
■ヤービについての簡単な単語集
【アウリキ】トリカのおばさん。
【ウタドリさん】人間。ヤービと知り合った。マッドガイド・ウォーターにボートを浮かべて本を読んだりのんびりしたりするのが好き。サニークリフ・フリースクールの教師。ウタドリと戯れている? ので生徒からウタドリ先生と呼ばれておりそれを知ったヤービたちからはウタドリさんと呼ばれるようになった。たぶん女性ではないかと思われる。
【エイラ】トリカの母。
【お隠り谷/おこもりだに】マッドガイド・ウォーターの北の方にある渓谷。人間は「姫君たちの小部屋」と呼ぶ。
【カワガラス】最近姿を見かけるようになってきた。カワセミよりおそろしいかもしれない。ヤービにとって悪の大魔王の代名詞。
【カワセミ】マッドガイド・ウォーターで暮らす水棲生物にとってもっともおそろしい天敵。
【カンヌキさん】学校の庭師。ウタドリさんが生徒だったころから庭師をしていた。
【キジバト】ベック族が空を飛ぶときに頼む。ヤービたちは怖がっているが肉食ではない。
【キャリ】トリカと仲がいいキジバト。
【クーイ族】ヤービ族、ベック族、デューイ族などの総称のようだ。
【グラン・グランパ・ヤービ】博物学者だった。
【ことば】《生きもの同士のあいだでは、もともとことばは必要ないのかもしれません。》p.182
【サニークリフ・フリースクール】古い地主屋敷を使った素敵な寄宿学校。
【スーツ】クーイ族が生まれたときに着てくる。外に出ることを決心したとき脱ぐが脱いだ後も成長を続ける。これを着ると水中の生物として行動できる。
【図鑑】ヤービ《それこそ、ぼくがつくりたいと思っているものです!》p.150
【セジロ・ヤービ】いとこの女の子。花弁のサラダが好き。
【タガメ】ストローを他のいきものに突き刺し殺して食べる。クーイ族の子どもが狙われたというウワサがあり恐れられている。
【飛び沼】マッドガイド・ウォーターとたそがれ川の間にあるちいさな沼。マッドガイド・ウォーターとは地下水路でつながっていることをパパ・ヤービとマミジロが確認した。ママ・ヤービの実家である飛び沼ヤービ家が棲んでいる。
【トリカ】ベック族の女の子。セジロの友だち。家はタガメのストロー屋。生まれてすぐ家業を知って以来すべてを否定されたような気分になって絶望し何も食べていない? マミジロいわく「詩人の魂」を持っている。母はエイラ。
【名前】いちばん上の子がヤービ、二番目がマミジロ、三番目がセジロ。子が生まれた時点でそれまでのヤービはパパ・ヤービになる。パパ・ヤービはグランパ・ヤービになる。
【蜂飼い】ヤービ一族に伝わる呪文と飼育法により可能になる伝統ある職業。
【パパ・ヤービ】ヤービの父。ママ・セジロとマミジロの兄。蜂飼い。「クーイ族史」を研究している。
【冬】ヤービたちは冬ごもりをする。トリカたちはモリバトに乗って南の土地に行き越冬する。そちらにも家がある。
【ベック族】地中に棲んでいるそうだ。大きい人(人間)を小さくしたような姿だが細部は異なる。体毛が退化しているので服を着る。キジバトと仲が良い家系の者は乗って空を飛ぶことができる。虚言癖があり話を盛ることが多い。昔はミルク売りをしていた。
【ヘルゲ】トリカのおじさん。
【ほのおの革命家】ヤービのあこがれ。いずれこの辺りに棲むことができなくなるだろうからユートピアを見つけねばならないと言っていたらしい。毛むくじゃらな一族のようだ。
【マッドガイド・ウォーター】たそがれ川かわ分離した三日月湖。
【ママ・セジロ】セジロ・ヤービの母。マミジロの妹。娘が蜂の子や蟻の子を食べるのは残酷だと言い出して困っている。
【ママ・ヤービ】ヤービの母。
【マミジロ・ヤービ】ヤービの叔父で詩人。
【ミリ】キジバト。キャリの妹。
【ヤービ】クーイ族の小さな男の子。何世代かにひとり誕生する「異種間交流」が可能な能力を持つ個体のようだ。《そうです、ヤービがひきつけられているのはスリルなのです。》p.100
【ヤービ一族】カワネズミほどの大きさの小さないきもの。イラスト的にはムーミンのスニフとかトガリネズミのトガリィに似ている。オオアカゲラの開けた巣穴に住むことが多いが最近減ってきたのでアオゲラの巣に棲むことも増えてきた。主食は蜂の子や蟻の子。
【ややこし森】マッドガイド・ウォーターより北の森。ややこしい魔境。
【ヨン】ナミハナアブ族のなかまの幼虫。ふやけた細長いお米のつぶに長い長いしっぽがついている感じ。ゆっくり成長するタイプ。
【わたし】→ウタドリさん -
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◼️ 梨木香歩 小沢さかえ「岸辺のヤービ」
自然を愛する著者が編んだ穏やかな児童小説。湿地森林地帯、小さなヤービたちの生活。
梨木香歩さんは植物や鳥に造詣が深く、彩り深い作品が多い。さて児童小説はー。
三日月湖や川のある湿地帯マッドガイドウォーター。近くのフリースクールの教師・ウタドリさんは湖にボートを浮かべての読書が趣味で、ある日、水辺にカヤネズミほどの大きさの生物が2本足で立っているのを見つけ、ミルクキャンディーを置いてその場を去る。すると次に行った時、お礼がしたい、と持ちかけられる。彼は水辺に住むクーイ族の少年、ヤービといった。あのミルクキャンディーのおかげでいとこが助かったのだという。ウタドリさんは、ヤービたちの世界の出来事を聞くことにしたー。
小さなヤービたちは、オオアカゲラが木に作った巣を利用して住んでいる。パパ・ヤービとママ・ヤービがいる。近くに住んでいるいとこのセジロは最近かわいそう、と主食である蜂の子や蟻の子を食べるのをやめて絶食してしまった。よくよく話を聞くと別の一族のトリカの影響を受けたらしい。ヤービは持ち帰ったミルクキャンディーからママに飲み物を作ってもらい、セジロはようやく栄養のあるものを口にした。
ヤービはセジロとともに鳩の背中に乗って移動するトリカに会いに行く。
空を飛んだり、モグラのトンネルを探検したり、ほのおの革命家が帰ってきたりと妖精とも言えるヤービたちの湿地での生活。もちろん著者らしく、ネイチャーの知識がふんだんに散らされ、マッドガイドウォーターでの小さな暮らしは野趣豊かで、活き活きとして見える。
カイツブリ、オオアカゲラ、カワガラス、キジバト、クロウタドリ、オオヒシクイ、カワアイサ・・著者は「渡りの足跡」というエッセイ集で自分で車を運転して鳥を観察しに行く活動的な面を綴っていて、今回舞台の設定から、直接の主役ではないけども、やはり鳥の生息地がベースになっている印象で、名前だけで登場しない鳥もいるけれど、生息の痕跡も含め、なんか感じるものがある。
トリカの家は生活苦を抱えている。ウタドリさんはトリカの一族を救おうと学校である作戦を実行する。その結果は続編のようだ。この巻にも数々の冒険は描かれているけれど、まだ序章で、広いマッドガイドウォーターとその周辺にはまだ見合わないかも。ほのおの革命家の言うことも気になる。これからだな、という雰囲気。
カラーページも含め、1ページ、見開きとふんだんに絵が挟まれている。長いスカート様のものを着て、水薄荷の花のブーケを両手に抱えて、ヤービの家を訪ねたトリカの可愛らしさ!モノクロでシンプルでも本当にすばらしい絵だと思う。
で、どうもやたら美味しそうなサンドイッチを作ったりするウタドリさん。私はてっきり男性かと思っていたら・・最後の方の挿絵で、ひょっとして?と微笑したりする。
たくさんのワクワクするエピソードは詰め込まれているが、物語はまだ編み上げ途上。いずれ続編も読もうかな。 -
Posted by ブクログ
ハリネズミには友達がいなかったが、それを全く気にしてはいなかった。
そんなハリネズミにも趣味や楽しいことはあったが、決して他人に見せるものではなく、役にも立たないし、あくまで個人で楽しむものだった。
しかし、そんな思いを抱いていたのは、ハリネズミだけではなかったことを知り、その日を境に、ハリネズミの毎日は変わっていった。
長所も短所もあるのは、何も客観性の強さだけでは無いし、それが自分ひとりだとも限らない。
いつかは自分と気の合う存在と、出会う日が来るのかもしれないし、来ないのかもしれない。
結局、人生における物事の成否は全て可能性であるのかもしれず、それをプラスに捉えるか、マイナスに捉えるかは、人それぞれだし、それを幸せと思うのか、不幸せと思うのかも、人それぞれ。
しかし本書は、それをプラスに感じられそうなストーリーであり、どちらか分からないからこそ、期待してしまうという、ポジティブな思考法を持つようになる展開には、明日への希望を感じさせられ、そこに、小沢さかえさんの可愛らしいペン画と、多国籍風の混在しながらも美しさの均衡のとれた、油彩カラーが加わって、独自の雰囲気を醸し出している。