吾妻ひでおのレビュー一覧
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「失踪日記」の続編。
作者が生きることに大変苦悩しながら、表現者として、芸術家として、本物であることを証明した本。
本当に大変な経験をしている中、よくぞここまで自分を客観視して、完成度高い漫画にできるなと。
アルコール中毒は、死に至る病気。
これは以前、西原理恵子の本でも、実体験として、心の底からの叫びとして書かれていて、印象に残っている。
アルコール中毒という病気と折り合いをつけながら生きていかなければいけないのは、我々には想像もつかない恐怖であろう。そもそも、アルコール中毒の人は、日常の不安から逃れたいという人が多いと思う、その不安と付き合いながら、アルコールの誘惑からも逃れないと -
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一時は人気を誇った漫画家・吾妻ひでお。私も子供の頃に
作品を読んだ記憶がある。
その人気漫画家が仕事を放り出して失踪。自殺未遂、路上生活、
肉体労働、そしてアルコールに溺れ、家族に入院させられるまでを
描いたのが前作『失踪日記』だった。
本書は『失踪日記』の終わりの方で「続きはまた」と書かれていた
アルコール中毒治療の病棟での日々を綴ったものである。あ、
勿論、漫画です。
入院生活を送るなかで体験した治療内容や、他の入院患者を
観察した描写なのだが、禁断症状やら鬱に晒されながらよくぞ
これだけ記憶していたなと思う。
依存症からの脱却って辛いと思うし、その治療の過程でも
しんどいことがた -
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前作の続きですが、絵の雰囲気や、描写の仕方が正統後継って感じで、歳月の経過を感じました。入院中にイライラするとか、他人の退院期日に嫉妬っぽい感情を抱くとか、そういうところをぼかさずに書いちゃうくらいには、今は俯瞰視されているんだなぁと。
アル中については、ぼんやりと知っている部分がありつつ、わからないことも多く。AAについてとかは、いくつか疑問点があったので、その辺が解消してすっきり。アル中にならずにお酒を我慢するのは自分でもできると思うけど、アル中になってからお酒を我慢するのは段違い。
アル中病棟の様子も、かなりわかりやすかったです。おかげさまで、今後はイメージしやすくなりました。
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これを普通に笑いながら読めるんだけど(密度は濃いから読み進むのに時間がかかるの)、けれど、実際にアル中病棟に入院したのが作者であると思うと……なんというか、じわじわくる。
自分の内面についてじぃと見つめるでもなく、ただ、淡々と作品としてこの本を仕上げた精神力はさすがギャグ漫画家であると思う。ストーリー漫画家であったら、物語にしてしまい「よい話」になってしまったんじゃなかろうか。
アルコール依存症からの回復は20%程度に留まる。
つまりそれは、何度も何度も再発するということを示している。出てくる人たちは当たり前のように普通なのにどこかおかしい(おかしいというと失礼なのかもしれないし、漫 -
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漫画家吾妻ひでおさんが、アルコール中毒で強制入院となり、自身の入院治療の様子を、漫画として描きあげたこの話は、本として出来上がるまでに、8年かかったそうです。
ここにはあまり描かれてはいない、その退院後が、本当の闘いだったことと思います。
個性的な入院患者たちの面白いエピソードや、治療や入院の日常、役員の仕事や勉強会の数々など、アルコール中毒という悲惨で壮絶な経験をしたにも関わらず、でも笑えるように、丁寧な描き込みで細かく見せてくれたり、登場人物のそれぞれにも悪口を言いながらも、温かい眼差しを感じるような、吾妻ひでおさんの、ピュアな真摯さがよくわかるようです。
アルコール中毒患者にとって、 -
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大勢の強烈な人たちが登場し、その中に主人公もいる。なんというか、『魔の山』に匹敵する傑作かも?
俯瞰の画面がなんか好き。
細かいところまで描き込まれている心地よさ。
病棟はそれ自体が一種のコミュニティとなっているようだ。(もちろんそんなことはないのだろうけど)ある意味楽しそうでもあり刺激的でもある。
知らない世界を知ることができる興味深さもある。
素面って 不思議だ……(p.169)
たとえ地図があっても俺は目的地には辿り着けない…(p.303)
時折の大きなコマに、自分と世界が乖離してる感覚、疎外感のようなものが残っているように見える。
舞台が病院なだけに前の巻ほど押しつぶされるような感じは -
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「失踪日記」の続編。アルコール依存症を患った漫画家の吾妻ひでおは、アルコール依存症専門の病棟、「アル中病棟」に入院する。その時の経験を漫画で綴ったもの。
アルコール依存症は、本人にとっても家族にとっても悲惨な病気であるが、日本にどれくらいの依存症の人がいるのか、ネットで調べてみると、80万人以上ということであった。80万人というのは、日本全体の人口1.2億人からすれば、0.6-0.7%程度。成人人口の比率からすれば、おそらく1%程度になるのだろう。ただ予備軍を含めると、その5倍以上の440万人になると言われており、成人人口の5%以上になるのだろう。予備軍の440万人という数もすごいし、5%とい -
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吾妻ひでおは、古い漫画家であるが、けっこう売れっ子で、また作風が独特だったので、コアなファンが多かった。しかし、メンタルの不調に陥り失踪し、また、アルコール依存症となり治療のために入院することとなる。本書は、そういった体験をありのまま綴った漫画である。2005年の発行なのでかなり古い本であるが、発行当時に話題になったことは覚えている。
失踪しホームレス生活を続けていたり、精神病院のアル中病棟に入院していたりした体験談なのであるが、深刻さを表に出さず、どちらかと言えばコミカルに、淡々と体験を描いている。淡々と描いてはいるが、本来的には、とても悲惨な状態であり、また、ご家族にとっては地獄のような体