空海が密教を求め、またその修行に励んだのは、まだ科学がない時代における、人生の苦しみから逃れる術を求めたのが根源だと私は考えている。これはキリスト教や神道など他の信仰・宗教でも共通していると思う。正しい答え=真実を求めて、手に入る中で最も尤もそうなものを調査・体得していったのだろう。
人間は、妄信や強い信心など一つのことに没頭したり、非日常的な経験をすることで心理的な高揚感、恍惚感、無敵感などを得ることが出来る。儀式などによって非日常的な修行を繰り返し、権力者や師匠などによって「これが正しい道である」と権威付けされたり、同じ志を持つ仲間によって共同意識を高めることで安心感や自信も醸成されてくる。
こういった信仰・宗教の基本的な思考ベースを念頭におくと、GAFAMのプラットフォームのごとく、生活におけるインフラとして、日常生活に根差させることが教義の拡散・浸透という成功の秘訣になる。
家に仏壇を置き、毎日拝む。新年、お彼岸、お盆などの年中行事を執り行う。死亡時だけでなく、その後も継続的に法要をする。
こういった生活の延長、果ては人生単位で人の心を放さないようにすることが、宗教の成功に寄与する。
宗教の成功というのは金儲けや権威を高めるという発信側の下賤な目標に留まらない。
人民の心に救いをもたらすことや、他宗派・他宗教よりも自らの信者数や影響度合いを増やすことにも共通する。
目標に価値観の差はあれど、生活インフラ化させることは成功に繋がる。
空海が密教を学び、真言宗として体系化して朝廷への影響力を高めたそのプロセスにおいて、宗教の成功を視野に入れていたかどうかまでは分からない。
しかし他宗教・他宗派と同じく生活へのインフラ化的行動規範を含んでいる点には、真理を求めた前時代の試行錯誤だけに留まらない、「宗教の成功」的な目的意識が垣間見えた。