こういう小説って、あんまり男性が読むもんじゃないよなって気はします。
たぶん、主人公の奈津美と会社での立場が近いとか、年齢が近いとか、置かれている状況が近いとか……何かしら、共感できる部分のある女性が読んだほうが面白いのではないかと。
奈津美と一緒に、戸惑ってみたり、いらいらしてみたり、わくわくして
...続きを読むみたり。そういうことができてこそのラブストーリーですよね、こういうのって。
というわけで、とても他人事な感じで奈津美の恋愛を眺めてしまった僕としては、そのぶん、奈津美の前に現われた三人の男を客観的な目で判断ができたのでは。
まずは奈津美が二十八歳にして初めて恋に落ちる相手、中野さん。
年収一千五百万円。お酒に飲まれやすいという欠点があるものの、そこがまた可愛らしいと奈津美は思います。お金でまわりの歓心を買うような行為に、自分と近しい孤独を感じ、一緒に幸せになりたいと彼女は思います。
でもって、奈津美は自分のほうから告白なんかしちゃったりするんだけど。
ダメだ、こんな優柔不断のお子ちゃま。こんな男と一緒にいて幸せになんてなれるもんか。
まあ、でも中野さんはそのことを自分でちゃんとわかっていて、だから誰とも付き合えないって言うところはさすが大人だなって思うんですけどね。
次は社内に恋人がいるのに、奈津美に言い寄ってくる桑田君。
恋人がいるのに、って時点で僕ならもう駄目だな。ちゃんと相手と別れてからならともかく、それをせずに奈津美にアタックするなんて最低。
個人的には、よしんば、ちゃんと別れたとしてもそれはナシだろって思いますけど。
気が回って、マメで、面白いことたくさん知ってそうで、恋愛初心者の奈津美の最初の恋人はこういう人がいいとは思うんだけど……誠実さが足りんよ、誠実さが。
さて、最後はお見合いの相手、神保君。奈津美の脳内ではギンポ君。どんな顔してんの、ギンポって。
彼はなんだか謎めいていて、マイペースで、でも優しくて。奈津美にとっては終始、よき友人、よき相談相手。悲しいことや辛いこと、悩みがあるといつも奈津美はギンポ君に電話をしてしまいます。
ギンポ君が奈津美に恋愛感情を抱いているのはあからさまなだけに……これ、奈津美はギンポ君を都合のいいように利用しているだけになっていますよ。こんなの、友人関係とすら言えませんって。
ギンポ君のほうは鉄の意志と広い心で奈津美の心をフォローしていきます。なんで、ここまで出来るのよ、君は……と思っていたら、ラストでその理由が明らかになります。
うーん…よく頑張りましたね、ギンポ君。