橋本倫史のレビュー一覧
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新型コロナウイルスが蔓延して以降、すっかり旅をすることから遠ざかってしまった。もう自分の人生の残り時間で、かつてのように旅をすることは二度とないだろう。でも本のなかで旅をすることはできる。著者は、新型コロナウイルス蔓延以降、かえって、旅に出たいと感じるようになったのだという。医療従事者である私は、感染してしまったら患者さんたちを死に追いやりかねないので旅を自粛しているが、物書きである橋本さんは、今だからこそ、と感じたのだろう。道後温泉から始まり、登別・洞爺に終わる本書で一貫しているのは、その土地の歴史をたどり、その土地で生き、死んでいった人々の語りに耳をすませることだ。インスタ映えする風景や土産物の向こうに日々の暮らしを営み続ける(た)無名の人々の声を聴くことの大切さが強調されている。
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水納(みんな)島は沖縄県本部半島沖に浮かぶ面積0.47平方キロ、人口わずか20人ほどの小さな島だ。 三日月の形をしていることから「クロワッサン・アイランド」と呼ばれ、さまざまなマリンアクティビティが楽しめることから年間7万人もの観光客が訪れる。
著者は2015年春に初めて訪れ、島の雰囲気を気に入り、毎年のように足を運んできた。 そんな中、親しくなった島の民宿のオーナーが発した「このまま行けば無人島になる」という言葉をきっかけに、水納島のことを記録しておかなければという思いにかられる。
そして書き始めたのが、この本、2021年4月1日から4泊5日の滞在記だ。
著者は見た景色や島民の話から島の暮らしと歴史を見つめ始める。
拾い集められた史実は多岐にわたるが、やはり悲惨な沖縄戦の話には、胸を打たれた。水納島にも3000名もの米兵が上陸、砲兵陣地が築かれた。
他にも、瀬底島から渡った人々が水納島を開拓した歴史、海洋博の前後にリゾート開発を目当てに島の土地を買い漁ろうとした内地企業に対し島を守ろうと立ち上がった島民がいたこと、離島ゆえの教育や就業環境の厳しさなど貴重な話が掘り起こされている。 文中、著者の基調となる思いが凝縮されていると思われる箇所を以下に示す。 著書である「ドライブイン探訪」や「観光地ぶらり」にも通じるところがあり、自分でも共感を覚えた記述である。
「自分の視点からだけ世界を眺めていると、見落としてしまうものばかりだ。こんなふうにじっくり滞在する機会がなければ、水納島に暮らす人たちの言葉に触れる機会もなかっただろう。言葉に触れると、自分とは異なる誰かの視点と出会う。たった5日しか滞在していないのだから、まだ、気づいていないことがきっと山のようにある。」 -
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橋本さんが「マツコの知らない世界」に登場して、俄然興味を持って本書を紐解いた。橋本さんがドライブインに興味を持ったのは、10年前と最近だ。この間に200軒のドライブインを訪問し、記事を書くためには、印象深かった店を再訪し 、一日ゆっくりと顔を覚えてもらって、そこで記事化の許可をもらい、やっと後日足を運んで取材する。典型的なノンフィクション作家なのである。
よって、昭和回顧的な軽い読み物ではない。「マツコ」で指摘している通り、「ドライブインには家族の歴史が詰まっている」それは即ち、昭和の側面史にもなる。当然、ドライブインが作られる地域独自の背景(ハイウェイ時代、米国統治、瀬戸大橋時代等々)も詳しく調べられ描写される。また、「明日からやるぞ」と言われて夫について行く妻や、強かに生きる女の一生も描かれる。
私は当初、「平田食事センター」が出てくるのではないか、と期待していた。岡山県からは二軒も扱われているのに、2つとも既に閉店しているのに、数年前に閉店したこの超有名トラックドライブインが扱われないのは、おそらく何かの事情があるのだろう。出来たら、次回本では、その事情含めて扱って欲しい。最後の一カ月前の写真ならば、私は持っている。 -
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私の出身は札幌市だが、父親の実家が日本海沿いの田舎町であるということもあり、幼少の頃は自動車で3時間ほどかけて墓参りに行く習慣があった。当時、その道筋には何軒かのドライブインがあったと記憶している。その寂れた雰囲気とは裏腹に、日本海の新鮮な海産が食べれるドライブインは、一種の原体験として印象に残っている。
本書は平成も終わる現代に消えつつあるドライブインを静かに訪問し、その成り立ちなどを丁寧に聞いて回ったルポルタージュである。登場するドライブインの多くは1960-70年代に創業された店が大多数を占める。それは、高度経済成長により道路インフラが投資され、国民にレジャーという娯楽が浸透した時期である。客数の減少に苦しみながらも地道に経営を続ける全国のドライブインの姿を通じて、我々はかつての日本社会の成長を辿ることができる。過度な物語性や装飾を排除しながら、ストーリーを紡ぐ著者の語り口も好意が持てる。 -
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ぶらりというより、その土地のことをじっくりと調べて綿密に計画を立てて、旅行をしているように思えた。
土地の人々と会話して、昔はこうだった…という過去の歴史を辿る。
そして、所々で読んだ本の解説なども挟んでくる。
とても深い話になっている。
じっくりと読むことになり、時間がかかったが、その土地の歴史を知ることができた。
しまなみ海道での「シキタリの巣」の話に全国各地にシキタリはあるということに驚く。
田舎だけじゃないのね…。
○道後温泉〜いつか旅は終わる
○竹富島〜人間らしさを訪ねる旅
○摩耶山〜ひとつひとつの電灯のなかにある生活
○猪苗代〜結局のところ最後は人なんですよ
○羅臼〜人が守ってきた歴史
○横手〜店を選ぶことは、生き方を選ぶこと
○しまなみ海道〜昔ながらの商店街にひかりが当たる
○五島列島〜世界は目に見えないものであふれている
○広島〜この街にいた誰かを思い出す
○登別・洞爺〜絶景・記憶をめぐる旅
旅したくなった。
ぶらりと旅に出る…それが憧れ。
なんの予備知識もないと不安だけど、かっこよく旅できたらと思う。
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日本全国のドライブインを訪ね歩き、そこで働く人達の軌跡を中心に取材している。マイカー時代や高度成長期の到来で隆盛を極めた頃と今を振り返る昭和テイスト溢れる本。
どのドライブインもほぼ例外なく「全盛期は朝から晩まで毎日働いた」「今は立ち寄る人も激減し、存続するか否かを考えている」という話題が出てくる。自販機食材のブームなどで健闘しているドライブインもあるが、やはり時代の趨勢には抗えない。
全盛期の活気と、長距離ドライバーだけでなく地域住民との交流も懐かしく語られている。ドライブインはその外観も観光資源となり得るので、「古きよき新しさ」が少しでも多く残っていくのを願いたい。