「女王はかえらない」の作者による新作。今回も映像化はまずできなさそうな作品になっている。
主人公のひとりは夫と暮らす編集者。そしてもうひとりは事故で寝たきりになった妻を抱え、実家に娘を預けて働く国家公務員の男(子ども用のコスプレ衣装を作るお裁縫が趣味でそれを公開するためのブログも開設している)。こ
...続きを読むの2人の物語がSNSやブログなどを通して絡みあっていく。
周囲の登場人物にも何かがありそうだ。編集者のいわくありげな女友達、もうひとりの主人公がやっているブログをネタに企画書を通そうとするライター、彼女に粘着するイラストレーター、そしてウェブ上で彼女を励ますフォロワー。公務員の親友である元同僚、実妹、そして(回想シーンではあるが)眠っている妻のかつての謎の言動。
コスプレ衣装は娘のためなどではなく単なる自己満足だと喝破した編集者は、思わずブログのコメント欄に辛辣なコメントを書き込む。書かれた男は彼女のSNSのIDを突き止め、晒すというやり方で彼女を追い詰める。彼女はしだいに不安定になり、やさしい夫の慰めも甲斐無く…イヤーな感じの展開だが、後半怒涛の畳み掛けがあり、縺れた糸が一気に解けるごとく隠されていた真実が明らかになっていく。
まあ、今回も見事に騙されました。時代が進んだら作中で使われているさまざまなメディアも古くなってしまうのだろうなあというあたりは"賞味期限のある"作品かもしれないとは思う。
お話として好みかというとそうでもないのだけれど、最後にパズルのピースが嵌って一枚の絵になる瞬間はある種の爽快感があった。