三浦哲哉のレビュー一覧

  • LAフード・ダイアリー

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    ネタバレ

    おもしろい! 旅、食、人類史などが好きな人なら間違いなく楽しめる。
    ただ、タイトルや帯文から「LAの食について深く知れるエッセイ」を期待していた自分は、第5章「カナダの自然食」あたりから、ん? カナダには興味ないんだけど……と首を傾げることになり、第6章〜9章は工芸品や料理評論家ジョナサン・ゴールドの人となり、著者の専門である映画の話が続くので、違和感がずんずん募る。ついに9章の終わりでは本を置いてしまった。それから数カ月積読状態が続き、いや、やっぱり読み切ろうと思って最後まで読んだらおもしろかった。あきらめなくてよかった。

    第11章に、こうある。

    《「味覚は記憶なのです」と書いた評論家の勝見洋一は、食の感動が、人生の記憶の襞の折れ重なりからこそ生じるということを深く理解し、そのことだけを説き続けたのではなかったか。ジョナサン・ゴールドも、その師匠のカルヴィン・トリリンも、アメリカの食について書きながら、そこで生きる一人ひとりの生活史を重視した。》

    つまり著者はLA食とは直接かかわりがない生活のあれこれも、LAの食文化を描き出すうえで欠かせない要素だと信じていたのかもしれない。確かにLAに渡ったばかりの苦労(住宅事情とか子連れ移住の困難さなど、食以外の話)を詳細に書いてあるからこそ、10章のスキヤキにまつわるエピソードは胸を打つものがある。生活のことを記すからこそ、食というものの輪郭が浮き上がってくるのだ。食エッセイを読む上で、これは大きな発見だった。
    もし途中で挫折したくなっても、ぜひ最後まで読んでみてください。

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    2026年09月26日
  • 演出をさがして 映画の勉強会

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    なんてぜいたくな勉強会なんだ!濱口竜介監督/三宅唱監督が今好きな邦画監督二大巨塔なこともあるけれど、脳が焼き切れるくらいおもしろかった。

    まずは、映画監督が映画を観る際に受け取っている情報量とその解像度に圧倒された。さらに、監督ならではの視点(「顔選び」「自分がこのテーマで撮るとしたら」「参考にしたシーン」「全部オンで切り返すだけのつなぎ、できなくない?」などの話)がおもしろすぎる。

    また、お互いによく褒め合っている通り、言語化がうますぎる。ビクトル・エリセ作品を評して「ものの肌理に感覚が伸びていく感じ」!
    とくに、濱口監督の勉強家ぶりはすさまじく、「ロベール・ブレッソン『シネマトグラフ覚書』をフランス語までタイプして写経」「平倉圭・砂連尾理との勉強会」などのエピソードは、その脳の容量に気が遠くなった。

    最後の二章では、そんな二人の監督がお互いの作品について質問をぶつけ合うのだからたまらない。主にどこまで意図的なのかという話。印象的だったのは、お互いに緻密な計算の内と思っていたシーンが、意外と現場での偶然の集積によって生まれているところ。三宅監督の「監督の仕事ってほんと見えづらい」けど「強烈に面白い」という言葉が沁みる。

    黒沢清や蓮實重彦の話も多く、「かつて東京のさまざまな映画館で見かけた観客としての西島秀俊」の話もとてもおもしろかった。

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    2026年09月18日
  • 演出をさがして 映画の勉強会

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    トニスコ以外の章を読んだ(トニスコだけぜんぜん観てないので) 3人の勉強会の文字起こしはオンラインで見かけては食い入るように読んできたので書籍化とてもうれしい ブレッソンは特に去年全作完走したところ&ラルジャンをスクリーンで見返したばかりだったのでアツかった エルスールや非情城市も大好きだ 話が深く鋭く面白いというのは言うまでもなく、3人のフラットで遠慮がなくアクセルを踏むタイミングも意見を交換するタイミングも限りなく自由なやりとりの公平さが不思議な癒し効果を生んでいる この形式でこの世の全ての名作たちについて語り合ってほしい

    わたしの映画人生は濱口竜介『ハッピーアワー』を2018年に観たことから始まっていて、その5時間17分ある映画をそれぞれ違う友人と計7回観たこともあるくらい、映画の原点を(それは監督としても鑑賞者としても)濱口竜介に置いているのだけど、映画のつくり方に対する姿勢や振り返り方は三宅唱の方がずっと好きで、その違いを改めて噛み締めるラスト2章もよかった 濱口作品は裏話を聞いても見方があまり変わらない(というか自分の人生の写し鏡としてしか見れない)けど、三宅唱作品は裏話を聞けば聞くほど自分がその作品と親密になっていくように感じる どっちも好きだけど好きの方向がてんで違う 三浦さんも文章好きだし、改めてすごい3人だ あと100冊出してほしい

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    2026年06月05日
  • 自炊者になるための26週

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    自炊の良さを布教するためのオリジナルな内容。
    自炊による季節、食材の使い方、自分好みの発見という感動>自炊に関わる面倒さを実現するためにメニューやTipsを載せている。
    スープの塩分濃度は0.6%から増やしていく。
    調味だし:だし:醤油:みりん 20:1:1 から10:1:1に増やしていく。
    魚は全部こぶ締めなどの保存法でゆっくり食べることができる。柳葉包丁はあった方が良い。
    しめ鯖:策を手に入れ、塩を両面に真っ白になるくらいかけ20分億。流水で洗い流し米酢をかける。キッチンペーパーでくるんで40分-2時間冷蔵庫。

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    2025年07月06日
  • 自炊者になるための26週

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    自炊は面倒臭い。サイゼリアのミラノ風ドリアも信じられないくらい安くて美味しいし、回転寿司に行けば洗い物なんて気にせず美味しいお寿司もポテトも食べれる。自炊をすれば洗い物も発生するし、割高になることもあるし、おいしくできる保証もない。それでも、自炊をすると言うことは、毎日を少しだけ味わい深くする手段であり、自炊では得られない、食材本来の自然な香りと、その変化を楽しむことであると筆者はいう。いつも同じ味が食べられる、その安心感を指す意味でのおいしさを「C嗜好」つまり、コンフォタブルなおいしさである一方、調理方法や食材の質によって、可変性のある個々の味わい深さを楽しむのが「F嗜好」、フレーバー嗜好というわけである。筆者が提示してくれる毎週の課題をこなしながら、自炊者への一歩を踏み出し、料理の醍醐味を味わいたいものである。

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    2025年04月06日
  • 自炊者になるための26週

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    個人的に最高すぎる本。
    写真がない料理本とも言えるが、文章だけで食欲をそそる!いくつかレシピを作ってみたし、肉も焼いてみたが美味しかった。肉に関しては、家で初めて納得が行く仕上がりになった。ここからは好みを極めていく世界なんだろうと思うとワクワクする。
    作るだけでなく、旬の食材を選ぶ、調理器具を愛着持って揃える、より使いやすい台所を目指すなど、考え方によってはめんどくさく感じるだろう工程が愛しくて、光り輝く。また少し、自炊が好きになった。

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    2024年08月13日
  • 自炊者になるための26週

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    映画批評者が風味について語った本ということで、五感を研ぎ澄まされるような感じで読み進めることができた一冊。

    なるほどと思ったのは、F感覚とC感覚という風味の前提となる認識の話が興味深かった。美味しい、という一言に差が大きい理由も理解できる。

    書名から高尚な内容かもしれないと感じたが、無理せず、一方こだわりも大事にしつつ、ちょっとしたこだわりを自炊に見出していくという印象を受けた。

    共働きや在宅勤務で、家族のために食事を作るようになった男性には特にオススメ。価値観がグッと広がると思う。

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    2024年07月24日
  • 自炊者になるための26週

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    ネタバレ

    こういう本が大体10年に一回出る。かなり今様で、とてもよい。中庸の感覚とか、最後の家事負担の話とかこの十年ならでは。この手の本は文才が要るんだなあ。丸元も魚勝も文章がよかった。この人の文章は今風だが古風で品がある。

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    2024年07月20日
  • 自炊者になるための26週

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    丁寧な自炊生活だけを追求する本ではありません。サイゼやマックなどのジャンクフードも愛する著者が両者を「ギアチェンジ」できる豊かさを解いてくれます。また、ロベール・ブレッソンを引用して、風味のモンタージュ論を解いたり(凄く分かりやすい!)、映画批評家でもある著者ならではの少し変わった食本。

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    2024年03月15日
  • 食べたくなる本

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    著書とその料理を通して親しんできた料理家について、とにかく読み出したら面白くて最後まで止まらないという体験。特に丸元淑夫氏について。笑ってしまうこともしばしば。日々の食事に役立てるのみならず、料理本の、料理人の面白さを再認識した。

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    2021年12月09日
  • 演出をさがして 映画の勉強会

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    映画監督の濱口竜介、三宅唱、映画研究の三浦哲哉の三人による映画制作、演出の対談集。
    ロバート・ブレッソン
    ビクトル・エリセ
    トニー・スコット
    候孝賢
    濱口「ドライブ・マイ・カー」
    三宅「ケイコ 目を澄ませて」
    ほとんど観たことのない作品ばかりだが、演出に関わる逸話が面白い。これから少しずつ作品を観ていこう。

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    2026年09月19日
  • 自炊者になるための26週

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    自炊初心者の方から経験者の方まで楽しめる本。この本のいいところは自炊が絶対と言っているのではなく、自炊もいいし、外食も既製品も素晴らしいよね、というスタンスのところ。三浦さん自身が五感で最大限に食を楽しんでいるのが伝わってくるので、自炊が必ずやらなければいけないという視点ではなく、生活が豊かになる視点で書かれているのが読んでいて心地よかった。
    正直魚を捌くことや発酵食品の一部に関しては「感動<面倒」が勝ってしまうので将来いつか…と思いつつ、取り上げられていたレシピは挑戦してみる。

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    2026年07月23日
  • 自炊者になるための26週

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    映画の批評家である筆者による、自炊の入門書。
    風味の魅力を説き、「蒸す」「焼く」「魚」「乾物」など26のテーマを立てて、それぞれの風味の楽しみ方やレシピを紹介する。

    旬のものを丁寧に料理したくなるような、素敵な本だった。

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    2026年05月17日
  • 演出をさがして 映画の勉強会

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    濱口竜介監督と三宅唱監督、映画研究者の三浦哲哉さんの3人が集う映画の演出についての勉強会の第1集。題材になる作品とその監督は初めて知るものばかりだったけれど、プロの表現者が巨匠の演出をどう捉え、どこに心が動いたのかを語るプロセスがとても興味深い。カット割り、光、エキストラ、カーテンの色… 「そんな細部まで見ているのか」と驚かされる深掘りされた考察の連続で、これから映画を見る時の視界がガラリと変わりそう。題材になった作品も観ようと思った。

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    2026年05月08日
  • 演出をさがして 映画の勉強会

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    濱口竜介監督と三宅唱監督の映画勉強会を書籍化した一冊。正直あまりにもマニアックというか、いつぞやの岡本喜八と庵野秀明の対談ばりにどう考えても一般の観客には伝わらない細かすぎる話のオンパレードw両氏が自作の『ドライブ・マイ・カー』と『ケイコ 目を澄ませて』を解説する章は映画監督はそんな深く細かい点まで考えて撮り、編集しているんだと目から鱗。

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    2026年01月27日
  • 食べたくなる本

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    料理の本についての本。平野紗希子ちゃんや高山なおみさんまでカバーしてあってうれしい。最後の原発による被曝と食べものとの関係についての論考が胸に刺さった。

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    2025年12月25日
  • 食べたくなる本

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    読みたくなる本が多数出てくる。幅広く多角的な視点で紹介しつつ、やはり料理は楽しく奥が深いと感じさせられる。

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    2025年12月23日
  • 自炊者になるための26週

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    「風味の魅力」で料理をしたくさせる。
    入門書ではなく、より豊かに自炊を捉え直す本。

    ・目的によるトーストの焼き方。違いを楽しむ。

    ・レトロネイザル経路のにおいを味わう。

    ・風味は映像
    ①風味インデックス:香り物質が直接移動する。ある地域、ある季節に固有のにおい物質が食べ物に含まれていて、それが食べ手のところに届くとき。
    ②風味パターン:においの組み合わせによって、遠くの何かが映る。ある地域の伝統料理。
    ③風味シンボル:情報消費

    ・自炊の風味のレンジ

    ・基礎調味料のノイズキャンセリング
     例 生魚の生臭みの原因となるトリメチルアミンを抑えるしょうゆ

    「蒸す」
    ・失敗が最も少なく、簡単・確実においしくなる
    ・野菜、魚
    ・バーニャカウダー
    ・たちうおの清蒸魚

    「焼く」
    ・表面に焼き目をつけて香ばしくする(メイラード反応)
    ・グラデーションをつけられる
    ・アロゼ

    「煮る」
    ・水に風味とうまみを移す。
    ・スープの塩分濃度は0.6%から(1リットルに小さじ1杯)
    ・調味だし:だし:しょうゆ:みりん=20:1:1

    「揚げる」
    ・バット3つで動線確保

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    2025年03月09日
  • 食べたくなる本

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    料理本ばかりの書評って珍しい。
    同世代かつ食に興味があるということで、なかなか視点や考察が興味深かった。

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    2024年11月10日
  • 自炊者になるための26週

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    “各章に設定された課題に取り組みながら26週かけて読む”という想定で書かれているが、パンのトースト、青菜のおひたし、蒸し料理程度は実践しつつ1週間で読み切った。また時間をかけて読み返しながら全てのことを試してみたい。
    自炊することの意義をたいへん痛感し、自分の中で“面倒”との決闘をさせたが、さすがに揚げものや魚を捌くことは敗北した。これは厚切りジェイソンの投資法を読むような感じで、自分のやれること、やりたいことを実践すれば良いのだと思う。読み切ってみると著者も行きすぎた食の思想を批判しているし、そんな軽薄な気持ちで読めばいいのだろう。いつか勝つかもしれないし。
    インターネットを中心に政治的なイデオロギー、善や悪、世の中に転がるさまざまな事象を極端に考える傾向がある。まさかこの自炊に関する本から、世の中にあるものはあるんだと認め、その全てを好きなように享受する姿勢を学べるとは。この豊かな時代を普通に楽しんでいきたい。

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    2024年09月28日