神島裕子のレビュー一覧
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正義論を、リベラリズム・リバタリアニズム・コミュニタリアニズム・フェミニズム・コスモポリタニズム・ナショナリズムという6つの立場から纏めている。終章が、名言の塊で熱い。
「社会に生きる哲学者は民主的決定を受け入れなければならない」「社会に生きる哲学者は普遍主義を諦めなければならない」「人間の脳は生まれつき正義のアルゴリズムが実装されているわけではありません」
ここでの哲学者とは、職業としての哲学者だけではなく、社会の中で生きる我々自身のことを指していると思われる。
民主主義をケア・点検しつづけるという視点を持ち続けながら、皆で学びながら「正しさ」を見つけていくことが重要そうだ。 -
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本書は、政治哲学の大テーマである「正義とは何か」について、ジョン・ロールズをベースにしながら(著者はロールズの『正義の理論 改訂版』2010年の共訳者の一人)、リベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリアズム、フェミニズム、コスモポリタニズム、そしてナショナリズムそれぞれの思想から平易に論じたものである。
6つの思想潮流がすべて西欧起源の思想であり、その点、現代のグローバルな諸問題にアプローチする限界がありはしないかという疑問は湧くにせよ、ロールズやノジック、サンデル、セン、ヌスバウムなどの思想がとてもわかりやすく書かれており、ポスト・ロールズの思想について勉強になった。
経済学を勉強す -
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そもそもこの本がそういう作り方をしているというのもあるけれど、それを抜きにしてもやはり現代の正義論はロールズを大きなエポックとして捉えて、ロールズ正義論に賛成または反対することを通して自らの主張を訴えてきたのだと思う。
内容は多岐に渡るので一言では言い表せないけれど、コスモポリタニズムはなんとなく理想郷的なことを言っているのかと思い込んでいたけれど、他国の正義と自国の正義の関係をどう捉えるかという点だけでも難しい問題をはらんでいるのだなあということを感じた。
ロールズに対する批評の蓄積はだいぶ進んできた。個人的にはヌスバウムに共鳴する部分が大きかった。とはいえ、彼女にもたくさんの批判があるはず -
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4冊目もとても読みやすく重要なポイントがまとまっているので、現代の西洋での倫理学を理解したい方には良い内容である。
個人的には徳倫理学の章が興味深かった。カントなどの義務論は、行為の是非を問うが、徳倫理学は人格を問う。それはそうだと思うのだが、人格を重視するのであれば、例えば、西洋ではゲーテやシラーなど、教養を高める教育思想があるし、日本の報徳思想や心学など、人間性を高める伝統的教育がある。それらを学ぶことの方が有意義だと思えてきた。
また、徳を重視し過ぎると軍国主義になるや、慰安婦の国家賠償の問題からケアを考えるなど、事実を無視した左翼思想が出てくるところは残念である。 -
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面白かった。
哲学の本を読んでると「そんなこと延々と考えてどないすんねん」と思うことが多いけど、まあ倫理学は考える価値があると思う。万が一、皆が納得できる形で正しさをルール化できたら、立法やらなんやらがすごくスムーズになると思うので。そんな夢を追って思考を深めているならカッコイイと思う。
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とはいえ、やっぱり倫理は何かしらの理屈で説明できるものではないのでは、というのが読み終わっての感想かもしれない。
徳のある人物を目指す徳倫理学や、現場レベルの判断を問うケアの倫理は、結局「皆が心に手を当ててやっていくしかない」的な発想やと思うし、まあ実際そうよな、という気持ちもある。 -
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面白かった。第5章「明日から実行!幸福になる力を高めるヒント」に自力でたどり着ける子は逆境に克てる。たどり着けない子に、届けれるか否か。
こと自分に関しては、他人(同じ環境で育ったのに「親ガチャに外れた人の結果」みたいな人生を歩んでる人への疑問、不信感。)に注意が行ってたが、自分はどうか?と問いかけるきっかけになった。私は私で価値を想像できているか。人のことばっか言ってて、全然なれてないな、と反省。
■アマルティア・セン ケイパビリティ(何かをしたりなにかになったりするための実質的な自由。)アプローチ
貧困=ケイパビリティの剥奪
■ニーチェ 超人=自分で新たに価値を創造できる人
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ソクラテスの無知の知
論敵トラシュマコスの主張=ポリスの国制を取り上げて、どの国制においても「正義」は支配階級の利益になることだと豪語している。
「支配階級というのは、自分の利益に合わせて法律を制定する。これこそが被支配者たちにとって正しいことなのだと宣言し、これを踏み外した者を法律違反者の犯罪人として懲罰する。したがって強い者の利益になることこそが、正しいことなのだ」
ソクラテスは「国家」でこう述べている。
「そのものが何であるかを知らずに、そのものについて語るもので、大衆自身の集合に際して形作られる多数者の通念以外の何物でもなく、それを詭弁家達は知恵と称している。」
ソクラテスは真理を -
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かなり面白く読んだ。
ロールズのリベラリズムを大きな軸として、リバタリアニズム、コミュニタリアニズム、フェミニズム、コスモポリタニズム、ナショナリズムを俯瞰する。
シンプルに、こういう人たちが今の正義論界隈でのメジャープレーヤーなんだ、というのを知ることができ、それぞれの考え方を整理するのに役に立つ。
他方で、正義とは何か、正義はどうあるべきか、という問いは、社会がどうあるべきか、あるいは、どのように私と他者が共に生きていくのか、を問うことであるという「正義論」の意義を語りかけてくるところに温かみがある。神島は、私たちがこの答えの定まらない問いに対して議論を重ねていくこと、考えることを通し -
Posted by ブクログ
現代政治哲学の6つの視点ということで、政治哲学初心者の立場で本書を手に取りました。率直な感想ですが、少し中身を盛り込みすぎではないかという印象です。6つの視点(リベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリアニズム、フェミニズム、コスモポリタニズム、ナショナリズム)を取り上げること自体は非常に有意義かと思うのですが、それぞれの中でさらにかなりの数の識者の主張を盛り込んでいて、正直頭が追いつきませんでした。もしそこまでやるのでしたら新書ではなく、もっと本格的な教科書として丁寧に解説してもらった方がありがたかったかもしれません。多くの政治哲学者の名前を知ることができたのは有意義でしたが、繰り返しにな