一本木透のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
首都圏で立て続けに起こった3件の殺人事件。そんな折、太陽新聞の記者である一本木透のもとに、殺人事件の犯人を名乗る者から手紙が届く。「お前だけに犯行メッセージを送る。言葉でおれの殺人を止めてみろ」
かくして、人間をウイルスと定義し、自らをワクチンと称する犯人との、読者を巻き込んだ紙上討論が始まる。犯人の動機は何なのか、なぜ一本木を対戦相手に定めたのか。新聞紙上での「殺人犯」と「記者」との対話は、実はまた別の顔を持つ者同士の対話でもあった。解決編でこの意味深なタイトルの意味を知り、結末でまたそれがひっくり返されたことに気がつく。何が善で何が悪なのか、簡単に答えを与えてはくれない。
マスコミ業界の緻密な描写から想像されたが、著者は元朝日新聞記者だという。なるほど、太陽新聞という社名はそこからなのか。もしかしたら著者と同名の主人公、一本木は「一本気」に掛けているのかも知れない。周到な劇場型犯罪に、幾重もの人間ドラマを絡めて、とても読み応えのある社会派ミステリだった。 -
Posted by ブクログ
大学新聞記者とタウン誌記者や大小新聞webテレビ各々媒体の落ちこぼれジャーナリストが寄せ集まって、大学総長の性加害から始まり、検事、国会議員の闇を暴いてゆく物語。
私の生涯ベストたる「七人の侍」をオマージュ(「大統領の陰謀」もオマージュしてる)しているとのことなので、少し期待していたのだけど、七人が挑むという構図だけだった。
それから、大学新聞という普通小説に登場してこないジャーナリストの活躍にも期待していた。私が元大学新聞記者だったからである。しかし、そもそも政治家の巨悪を暴くという設定からして、リアリティなさすぎ。しかも、取材過程が、ちょっと都合良すぎる気もした。
いまは、大学新聞もウェブと紙媒体の両方で作っているらしい。
この機に、リアル大学新聞のweb版を2-3見てみた。事実の報道を大切にしているのはよくわかった。しかし、どういう記事を書くか、その対象選択はあまりにも当局(大学)寄りになっている気もした。また、解説記事が一切無いのも気になった。つまり極めて保守化している。国立、私立両方ともにである(2-3眺めただけで断定しない方がいいかもしれないけど)。こんな大学新聞記者からは七海のような気骨ある記者は出てくるだろうか。
偶然にも、国民の言論統制、情報統制システムを作る動きを描いた小説を、2本立て続けに読んだ。本作は(政府に都合が悪い配信をAIで察知して直ぐに潰す)「JUSTICE」という名の「分かりやすい」法案が通ってしまう未来を描いている。しかし、私には所々穴が見えて、そんなあからさまな法案通るものか!などと思ってしまう。全てを創作で描いてはいけない。既に現在ある事実を織り交ぜて作った東野圭吾の『魔女と過ごした七日間』の方が、私にはリアルな警世の書のように思えた。『魔女-』の方が、ファンタジー色を持たせて、一読では警世の書と思えなくさせているところも、更に良い。
著者は元朝日新聞記者らしい。朝日新聞のジャーナリズムとしての凋落も近年著しい。著者の忸怩たる想いには共感する。だからこそ、もう少し煮詰めて欲しかった。
志村が、トラ次郎をしっかり抱き直す。
「ひとつだけ言えることがある。問題はメディアの大小でも、立ち向かう相手の強弱でもない。まして過去の失敗でもない。常に一番強いのは真実だ。真実をつかめれば怖いモノなんて何もない」(121p)
⸺もちろん、ストーリーはそんなに真っ直ぐには行かなかったけど、この言葉は基本的に真実であるだろう、真実であってほしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「7人の記者」というタイトルをみて、最初の登場人物欄にある記者であろう人を数えました。
この人たちのことかな、と読み進めたら最後
トレイシー編集長が記した名前にはユズルが…!古賀は嘘つきな敵なので当然ですね。
自分の利益よりも、誇りのために立ち上がる記者たち。しかし376ページで、志村は七海の動機こそが、自ら命を絶った女性の尊厳を取り戻すことが立ち上がる起点である。自らの地位や名誉挽回を求めることはジャーナリスト失格である。と言っている。確かになと思いました。
自らの地位を追い求めることは、本作での政治家たちと同じになってしまう。本末転倒だ。
しかし誰しも、自分のために活動することは至極当然である。その活動が自分のために嶽なの、そこに気づけるか否かで記者として変われるのではないか?と感じました。