御田寺圭のレビュー一覧
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普段、意識することはあっても、そこまで真剣に考えるテーマではなかったため、刺激的でとても面白かった。序盤は読んでいて少し気が重かったが、2章以降は興味があったためかスラスラと読み進めることができ、それによって序盤の内容も後から理解が追いついてきた。
「自由」や「平等」がヨシとされている中で、意外とそれらの言葉が条件付きのものであることが明快に述べられている。わりと当たり前とされていることや、共有されている価値観みたいなものについて改めて考えてみることができる。
著者は各トピックについて話題提供を行うのみで、その答えは読者に委ねられているようである。もちろん、著者なりの見解もあり、首肯できるもの -
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差別などしない善人だと思ってる自分が読んでて不愉快な気持ちになった。それぐらい無意識に正しさで他者をジャッジし排除してる。能力主義だったり、ルッキズムだったり。もちろんジャッジも常にされている。小さな潔癖が集合体となり社会全体の大きな潔癖となり、それにより行き場をなくした人々がやがて無敵の人になる。じゃ、どうすればいいのか。一生かけて考えて行動しても答えの出ないことかもしれない。ただ、前から思ってたのがネットニュースには「これは間違っている!」と正しいことをコメントすること(しなくても思うこと)で、日々のストレスを発散させてるふしがあり、またいいね!がつけば称賛にも似た快感が得られて、無料の娯
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「あれ?俺こんな本書いたっけ?」というくらい、自分が普段から考えて理不尽を感じていた様々な社会の歪みを、丁寧なロジックと信頼性の高いデータを元にして、みごとに言語化してくれた著書である。
従来あった社会の歪みを批判し、新たな「社会的正義」を作り上げてきたリベラルとネオリベラルの立場をとるマスコミや知識人、そしてそれにだらしなく盲従する政治家たちは、そのことによって新たに生み出した社会の歪みを「正しくないもの」「前時代的なもの」「あってはならないもの」として切り捨ててきた。本書では、そうした新たな正義の時代に打ち捨てられ、見放され、虐げられている者たちに光を当てて、その歪みが生まれた構図から丁寧 -
購入済み
自由社会の裏でこぼれ落ちる人達
Twitterで見かけて気になったので購入。
自由で先進的で個人主義の社会においては、個人の自由意志によってやんわりと阻害され孤立する人が出てきてしまう。
封建的な社会に戻って欲しいとは思わないが、社会からつまはじきにされる人々を減らす方策は検討されるべきだし、自分もできる範囲で目を向けていきたい。
少なくとも、作中でも作者Twitterでも触れられている植松理論に知らず知らず染まってしまう事のないように肝に銘じたい。 -
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タイトル通り、これから紛糾するであろう様々な社会の矛盾の為の序説となる本。
どこまでもニュートラルに、現代社会の触れられなかった部分を描いている。問題提起が主目的であり、解決の方法を考察するものではない。では私たちはこれら矛盾にどれだけのことができるのだろうか?
良くも悪くも「考えさせられる」という言葉が正しい。
私は良いと思ったので、星5をつけたが、きっと社会学の論客の中では異端だろう。
内容に関しては本文中より、ここにメモとして記載する。
"かかわりあう誰かを自由に選べることは、選ばれることのない誰かが存在することと裏表であり、
耳ざわりの良い建前の背後で、疎外された人びと -
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透明化されたひとびと
かわいいものは優先的に救済される
大きく黒い犬は救われない
ドナルド・トランプは大きく黒い犬(かわいそうランキングの下位)をまとめて引き取ったから快進撃となった
ガチ恋おじさん
そもそも、他人に恋心を向けて、それが報われたことなんて一度もなかった。好きだと恋心を伝えて、それを、迷惑がらないでいてくれたのは、いままでの人生で、アイドルだけだった。
公正世界信念
ある行いには、その行いの内容によって、のちに公正な結果が伴う
地方の町では学校生活が終わらない
やりがいとは、やってるうちに内発的に生じるものであり、人から与えられるものではない。
生存としてのベーシッ -
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ネタバレ「〇〇を倒せば世界はもっと良くなる」と期待できるわかりやすい悪を明確に提示してくれる「単純系」と、「あなたの生き面だや苦しさは、あなたのせいではなく〇〇の加害によってもたらされた」とする「責任の外部化」が、反ワクチンやフェミニズム、ヴィーがんなど多くのラディカルな思想に共通する。これらは「私憤」から「公憤」「義憤」へ昇華しているとも捉えられる。
ハンデのある人の感動の物語は「ハンデを抱える人は努力を重ねて卓越しなければならない」という社会的メッセージと同義であり、今の社会を肯定するマジョリティにとっての「赦し」でもある。
食肉や喫煙など、個人の自由が温暖化や感染症など、社会のリスクのために -
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Twitterで有名な著者による本。
現代の承認欲求について様々な角度から言及している。これまで学問の対象にならなかったような「モテ」のような素材を現代日本の問題として料理していて勉強になる。
現代日本を生きる男性で、原因がよく分からないけどモヤモヤイライラする人におすすめ。
<アンダーライン>
・人々は不安にさらされたとき「早く説明を受けて安心したい」と願う。そこにデマの付け入るスキがある。たとえるなら、デマがシンプルでわかりやす「物語」なら、一方で真実とはたいていは複雑で理解するのに時間も労力もかかる重厚な「説明書」だからだ。
・金銭的な富は富める者に集中しやすい性質を持つが、承認にも -
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ネタバレタイトルがもう不穏ですね。これを手に取る人は自分なりに「正しさ」というものについてきちんと一度は考えたことのある人なんではないかなと想像。
「本書は物語の否定である」確かに読み終えて振り返るとそういう一冊だったと思う。
私自身が往々にして、世間によくある「いい話」を見たり聞いたりすると鼻白むことがあるのは、著者が言うような「誰からも快く受け入れられるように美しく整えられた物語」だと感じさせられるからだなとわかった。もやもやしていたものが言語化されてちょっとすっとしましたね。
「不寛容には不寛容に対処すべき」「被害者ポジション」「面倒くさい他者が訪ねてきたらもっとふさわしい場所があるよと優し -
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先生のnoteは読んだことなかったが、この本を買った。
一つの現象に対して多種多様なレトリックを駆使して深掘りしていくのは圧巻だった。このような著者の豊穣な語彙のアプローチはSNS上での note購読者とのコミュニケーションによって洗練されたのだろう。しかし序盤と終盤が特にそうなのだが、あまりにも詩的で陶酔的な文章だと、「慈愛に満ちた人たちが作った影のある社会に対する挑戦」という本著のスタンスが崩れる気がする。
一番面白かったのさ「排除アート」の章です。存在そのものは知っていました。排除アートはまさに著者が問題意識を抱える現象の象徴のようなものである。「加害性の無自覚、無意識」を指摘する姿 -
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p112 自由な社会において、「何か・誰かを選ぶ」ということは「選ばれない何か・誰か」がセットになって生じうることを、往々にして人々はあまり認識しない。人々がそれぞれの立場、それぞれの視点で日々行っている選ぶという行為の積み重ねによって生じだのが40代一人暮らし+独身、貧困、男性なのだ
p142
デマと真実は、運用・拡散ともにデマの方が遥かにローコスト
一つのデマを潰す真実が一個できる間にデマは10個の子孫を産む
デマは悪意ではなく、「不安を解消したい」という願いによることも少なくない
人々は不安に晒されたときに、「早く説明を受けて安心したい」と願う。そこにデマの付き入るスキがある。 -
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p054 2021/11 ベラルーシ ルカシェンコ大統領
難民そのものを、西欧各国が共有する道徳律である「人権」によってコーティングして他国に向けて打ち込む、いうなれば人間ミサイル兵器として活用する方法を考案し、実際にやってみせた
p66 力強く少子化対策にのりだし、そして成功を収めはじめている国がある ハンガリー 年間予算はGDPの4.7% 首相 オルバン フェミニストでなく国粋主義者 自国民以上に出生率が高く、ますますその勢力を拡大する移民を追い出し、純血のハンガリー人をひとりでも多く増やしたいという宿願がある
オルバンがこうした政治的意思決定を断行できるのは、彼が民主主義的な手続 -
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Twitterの有名人の白饅頭氏の本。
端的にまとめると「かわいそうではない弱者」を無視する(これは「排除」よりも救いが無い)ことで、現代の豊穣でリベラルな社会が成り立っていることを指摘するものだ。
橘玲はリベラルの胡散臭さはその「ダブルスタンダード」ゆえだと言ったが、それと共通する視点だと感じる。
この背景にあるのは、個人の価値が尊重され、嫌なことを拒否する自由が広範に認められるようになったことだ。
自由は愛情の偏在を認めることになり、愛情を手にできない人間を外縁部に押しのけて不可視化する。
各人が個としての最適を目指すことで、外縁部に押しのけられた人々の重みで社会は軋む。それが自由の代償