あらすじ
建前ばかりの社会が目を背け続ける「透明化された存在」の話を始めよう。
ネット上で賛否を巻き起こした『白饅頭note』、遂に書籍化。
社会が「自由」を謳歌するには「不自由」をこうむる人柱が必要不可欠であり、
耳あたりのよい建前の背後で、疎外された人びとの鬱屈がこの世界を覆っている。
現代社会の「矛盾」に切り込み、語られることのなかった問題を照らし出す。
「かわいそうランキング」下位であるということは、
ほとんどの人からかわいそうと思ってもらえないどころか、
その存在を認知すらされず「透明化される」ことを含意する。
場合によっては、「自己責任だ」「自業自得だ」と
石を投げられることすらあるかもしれない。
そうした人びとの、誰の目にも触れることのなかった小さな祈りを
、本書の19編にまとめたつもりである。(本文より)
【目次】
01 「かわいそうランキング」が世界を支配する
02 男たちを死に追いやるもの
03 「男性 “避” 婚化社会」の衝撃
04 外見の差別・内面の差別
05 「非モテの叛乱」の時代?
06 「ガチ恋おじさん」――愛の偏在の証人
07 「無縁社会」を望んだのは私たちである
08 「お気持ち自警団」の誕生と現代のファシズム
09 デマ・フェイクニュースが「必要とされる社会」
10 「公正な世界」の光と影
11 橋下徹はなぜドナルド・トランプになれなかったのか
12 なぜ若者は地元から去ってしまうのか
13 「働き方」の呪縛
14 ベーシックインカムが解決できない問題
15 疎外、そして近代の甦生
16 「ひきこもり問題」のパースペクティブ
17 この社会には透明人間がいる
18 「社会的な死」がもたらすもの
19 相模原事件の犯人を支持した人びと
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Posted by ブクログ
「あれ?俺こんな本書いたっけ?」というくらい、自分が普段から考えて理不尽を感じていた様々な社会の歪みを、丁寧なロジックと信頼性の高いデータを元にして、みごとに言語化してくれた著書である。
従来あった社会の歪みを批判し、新たな「社会的正義」を作り上げてきたリベラルとネオリベラルの立場をとるマスコミや知識人、そしてそれにだらしなく盲従する政治家たちは、そのことによって新たに生み出した社会の歪みを「正しくないもの」「前時代的なもの」「あってはならないもの」として切り捨ててきた。本書では、そうした新たな正義の時代に打ち捨てられ、見放され、虐げられている者たちに光を当てて、その歪みが生まれた構図から丁寧に説明し、放置することで将来起こりうる問題を的確に示している。
自由を認める社会というのは、選択されなかった者を排除しても構わないとする社会である。リベラルでさえ、そうした排除をしている自覚が無いのである。
ぜひ、多くの(自称)知識人や(自称)社会学者に読んでいただきたい。
ただ、ペドフェリアの議論についてのみ、もう少し丁寧な議論をすべきだったと思う。たとえ先天的な苦悩であろうとも、それによって被害を受けるのは抵抗する力を持たない子供なのだから。
ガチ恋おじさんの話も、本著の主張の傾向とは若干異なるような気がする。
Posted by ブクログ
「多様性」が尊ばれる昨今、その「多様性」から取りこぼされ透明化されてしまう存在がいる。そして我々の健全で安定した生活はその透明化した存在に負債を押し付ける形で成立している
このような構図は様々な環境や組織、文脈で再生産されている気がする、今になって始まったことではないんだろうなと思う
透明化された存在を言語化し、改めてそれらとどう対峙するかの手がかりになりそう
自由社会の裏でこぼれ落ちる人達
Twitterで見かけて気になったので購入。
自由で先進的で個人主義の社会においては、個人の自由意志によってやんわりと阻害され孤立する人が出てきてしまう。
封建的な社会に戻って欲しいとは思わないが、社会からつまはじきにされる人々を減らす方策は検討されるべきだし、自分もできる範囲で目を向けていきたい。
少なくとも、作中でも作者Twitterでも触れられている植松理論に知らず知らず染まってしまう事のないように肝に銘じたい。
Posted by ブクログ
タイトル通り、これから紛糾するであろう様々な社会の矛盾の為の序説となる本。
どこまでもニュートラルに、現代社会の触れられなかった部分を描いている。問題提起が主目的であり、解決の方法を考察するものではない。では私たちはこれら矛盾にどれだけのことができるのだろうか?
良くも悪くも「考えさせられる」という言葉が正しい。
私は良いと思ったので、星5をつけたが、きっと社会学の論客の中では異端だろう。
内容に関しては本文中より、ここにメモとして記載する。
"かかわりあう誰かを自由に選べることは、選ばれることのない誰かが存在することと裏表であり、
耳ざわりの良い建前の背後で、疎外された人びとの鬱屈がこの社会を覆っている。
「社会が自由を謳歌するためには不自由をこうむる人柱が必要不可欠である」という、
現代社会の「矛盾」に切り込み、語られることのなかった問題を照らし出す。
「かわいそうランキング」下位であるということは、
ほとんどの人からかわいそうと思ってもらえないどころか、
その存在を認知すらされず「透明化される」ことを含意する。
場合によっては、「自己責任だ」「自業自得だ」と
石を投げられることすらあるかもしれない。
そうした人びとの、誰の目にも触れることのなかった小さな祈りを、
本書の19編にまとめたつもりである"
Posted by ブクログ
透明化されたひとびと
かわいいものは優先的に救済される
大きく黒い犬は救われない
ドナルド・トランプは大きく黒い犬(かわいそうランキングの下位)をまとめて引き取ったから快進撃となった
ガチ恋おじさん
そもそも、他人に恋心を向けて、それが報われたことなんて一度もなかった。好きだと恋心を伝えて、それを、迷惑がらないでいてくれたのは、いままでの人生で、アイドルだけだった。
公正世界信念
ある行いには、その行いの内容によって、のちに公正な結果が伴う
地方の町では学校生活が終わらない
やりがいとは、やってるうちに内発的に生じるものであり、人から与えられるものではない。
生存としてのベーシックインカム
自由としてのベーシックインカム
ベーシックインカムは存在意義をあたえることはできない
あなたは無価値じゃないというくせに、自分の周りには多くの人に価値を認められた人にいて欲しい
Posted by ブクログ
Twitterで有名な著者による本。
現代の承認欲求について様々な角度から言及している。これまで学問の対象にならなかったような「モテ」のような素材を現代日本の問題として料理していて勉強になる。
現代日本を生きる男性で、原因がよく分からないけどモヤモヤイライラする人におすすめ。
<アンダーライン>
・人々は不安にさらされたとき「早く説明を受けて安心したい」と願う。そこにデマの付け入るスキがある。たとえるなら、デマがシンプルでわかりやす「物語」なら、一方で真実とはたいていは複雑で理解するのに時間も労力もかかる重厚な「説明書」だからだ。
・金銭的な富は富める者に集中しやすい性質を持つが、承認にもそのような傾向があることは留意すべきだ。
Posted by ブクログ
p112 自由な社会において、「何か・誰かを選ぶ」ということは「選ばれない何か・誰か」がセットになって生じうることを、往々にして人々はあまり認識しない。人々がそれぞれの立場、それぞれの視点で日々行っている選ぶという行為の積み重ねによって生じだのが40代一人暮らし+独身、貧困、男性なのだ
p142
デマと真実は、運用・拡散ともにデマの方が遥かにローコスト
一つのデマを潰す真実が一個できる間にデマは10個の子孫を産む
デマは悪意ではなく、「不安を解消したい」という願いによることも少なくない
人々は不安に晒されたときに、「早く説明を受けて安心したい」と願う。そこにデマの付き入るスキがある。例えるならば、デマがシンプルでわかりやすい物語なら、一方で真実とは大抵は複雑で理解するのに時間も労力もかかる重厚な説明書だからだ
デマに踊らされるような人がいるからこそ真実にはプレミアがつく
賢く情報を集めて結果的に特をする人がいるためには、間違った情報を集めたりそもそも情報収集を怠る人が必要になる
デマが渦巻く社会とは、多くの人が豊かに暮らす社会が産んだ代償としての側面がある
p143 公正世界しんねんとは、人々が持つ「倫理的・道徳的な道理」に自然に沿うような考え方、あるいは、このようは最終的に善性が優勢になるようなバランスの素で構築されていると考える信念のことである。簡単に言えば、ある行いには、その行いの内容によって、のちに公正な結果を伴うとする考え方のことである
p149 公正世界信念とは、日々を前向きに生きようとする態度に少なからず付随してしまう観念でもある。希望を抱かずに将来の夢を描けないのと同じように、自分の行いが報われないと信じないで、日々の積み重ねを継続できる人はそう多くはない。人間とは希望を抱かずにはいられない生物だ。
頑張る人が報われる(と信じる)社会」と「犠牲者が落ち度を責め立てられる社会」は、まるで別個のものではない。むしろそれはコインの裏表であり、一つの社会を二つの異なる側面から見たものでしかないのだ
p161 彼(トランプ)ほどの成功者でも、生まれがそうでなければ、エリートにはなれない。アメリカには経済的階級の上昇を認める寛容性はあるが、社会的階級の情報には極めて不寛容な実情がある。トランプは比類なき大富豪ではあることは間違いないが、純正のエリートでは決してない
この階級の移動しやすさこそが、橋下徹がトランプになれなかった最大の原因である
p167 日本社会において、いまだ掘り起こされていない鉱脈は、政治右派、経済左派のポリシーを持つ無党派層であると言える
p175 絆という字は、古くは「ホダシ」とおまれ、人々の心や自由を妨げるもの、人の行動や思いを制限し束縛するものーすなわち手枷や足枷のことおをさしていた
p178 あなたにとって、地域社会のつながりは絆だったろうか、それともしがらみ(柵)だったろうか?
p179 人によっては、都会が自分に対して徹底的にむかんしんでいてくれることに、無上の喜びを感じることすらあるだろう
p181 優秀な若者こそ地域に残ってほしいのであれば、優秀な若者たちを自発的に東京に差し向けるような「学校生活の永続化」と「片務的な絆」の社会観を地方から拭い去る必要がある。すなわち自由で無関心な世界の成分を地方に混入させるということだ
自由とは、何かを選ぶと同時に何かを拒否することである。煩わしいつながりを拒否する自由を若者たちに与えなければ「絆」から外れることを望む一定数の若者たちは地域に残らないし戻ってはこない。煩わしいつながりを拒否する自由な若者たちの姿を「けしからん」とい憤っているようでは、東京からの人的搾取に地方が抗う方法はほとんどないだろう
p183
人間関係とは往々にして「めんどくささの対処」に終始するものであり、地縁的共同体が時として一部の人々にその負荷を残酷なまでに押しつけたりする態度は、「大多数の構成員のめんどくささを最大限に減らす」ための合理的であったことを、都市の若者はやがて認めることになるだろう。和を乱す人間は敬遠して当たり前、負担金をhしはらわないものには共益を与えないのが当たり前、みんなが負担すべき労力を支払わないものは低く扱って当たり前、ー地縁社会でいやというほど見されてきた風習が、実は共同体の運営の根幹を成していることにも気づくことになるだろう
だが、そこからが始まりだ。かつて自分を縛り付けてきた因習を追体験し、合理性の中に差別性を見つけた時、人はどのように振る舞うべきなのか。新たな中間共同体の構築を託された都市の若者たちは、間もなくその問いに直面することになる。協同体の安心・安全・調和とは、勝手気ままな自由や気楽さとはトレードオフの概念なのだ
p184 絆の二面性は誰にとっても均一に現れない。ある人にとっては、秩序と包摂、別のある人にとっては、束縛と排除の概念として機能する
地域社会から若者の流出を食い止めるには、絆の持つ機能の批判的な再検討、再構築が必要である
人間関係とはめんどくささの連続である
コミュニティの運営とはめんどくささの処理の最適化の工程である
p196 今この国を呪い続けているものの正体は、「便利で安いもの」「高品質で安いもの」を求めようとする客であり、それに応えようと「やりがい」を持って働く企業の従業員でもあり、そしてそれらがウロボロスの輪のように食い合っている構造である
従業員として働くときはさながら奴隷のように、客として街を歩くときはさながら王のように そんな両極端な社会とは訣別しなければならないのだ
安い報酬なら手を抜く、安い対価なら上等なものを期待しないことが、この国の呪いを解くための第一歩となる
p217 我々が自由という概念を考えるときに、上述したような「選ぶ自由」のことをまっさらに考えがちである。しかしながら、選ぶ自由とは「選ばない自由」とほとんど必ずワンセットとして存在する自由であることまで想像する人は多くない
自分が関わりたくないもの、ごめん被りたいものに対する拒否権が拡大した時代となったとも言える
Posted by ブクログ
自由主義の犠牲者について思いを馳せる本
〜主義というものには必ず正の面と負の面が存在する。今この社会で流行っている自由主義で皆が快適に自由を謳歌する一方でその歪みを押し付けられている人々がいる。それについて話している。
Posted by ブクログ
Twitterの有名人の白饅頭氏の本。
端的にまとめると「かわいそうではない弱者」を無視する(これは「排除」よりも救いが無い)ことで、現代の豊穣でリベラルな社会が成り立っていることを指摘するものだ。
橘玲はリベラルの胡散臭さはその「ダブルスタンダード」ゆえだと言ったが、それと共通する視点だと感じる。
この背景にあるのは、個人の価値が尊重され、嫌なことを拒否する自由が広範に認められるようになったことだ。
自由は愛情の偏在を認めることになり、愛情を手にできない人間を外縁部に押しのけて不可視化する。
各人が個としての最適を目指すことで、外縁部に押しのけられた人々の重みで社会は軋む。それが自由の代償である。
自分が最も興味深く感じたのは「公正世界信念」(世界に因果応報を求める姿勢)について文章だった。これは常に感じていた人間の特性だが、名前がついていて研究も進んでいることは本書で初めて知った。
Posted by ブクログ
自分自身にも思い当たる、認めたくない事実が淡々と書かれており、世の中は白黒では決して解決できない事象が組み合わさり成っているのだと思い知った。今後の考え方に影響を与えてくれた一冊。
Posted by ブクログ
自分にとって都合の悪いことに目を背けたくなるのが人間の性でありそれを否定も肯定もしない。だが、目を背け続けたときに起こりえるリスクを認識しておく知性を持っておくことが人類には必要だと考えます
Posted by ブクログ
「自由」な生き方を謳歌できる世の中になった一方で、その代償を背負って生きている人たちがいる。「かわいそうな人」の中にも明らかな序列が存在し、世間の同情を集められる人がいる一方、その存在すら認められずに「透明化された存在」として扱われる人もいる。本書はそのような人々にスポットを当て、建前だらけの現代社会の闇の部分を見事に炙り出している。ポリティカルコレクトネスが喧騒される現代社会だが、その主張に含まれる矛盾に気付かせてくれるという点において有益な一冊だった。ベーシックインカムに関する論考も一読の価値あり。
Posted by ブクログ
現代日本が抱える矛盾だったり生きづらさを、複数の論点から記述的に説明していた。
ただし、それらの矛盾をどう解決するかというのは難しい。本書でも特に有効な案は提案されていなかった。
Posted by ブクログ
読むのに体力を使う社会論考集。「かわいそうランキング」で電撃走り、「ガチ恋おじさん」では歯を食いしばる。「いるけど見えていない存在」「引き取り手のいない大きい黒犬」にフォーカスを当て、問いを投げかける本。おすすめだけど、体力のあるときに。
Posted by ブクログ
光ある所には影があるという話。
自由な社会において何か誰かを選ぶということは、必ず選ばれない者が出てくるという言葉が印象的。
かといってこの本では何か解決策が提示されているわけでもない。自由な社会の負の側面としてそういったことが存在するのは仕方ないが、それを救うのが政府の役割ということになるだろう。
Posted by ブクログ
「透明化された人々」について著した本。自分が普段何気なく過ごしている中で、見過ごしている事実を露わにしている。不幸な事件が起きている中で、その底流にあると思われる事実を考えさせられました。