ミランダ・ジュライのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
・あらすじから想定されるちょっとコミカルな筋。その先からはちょっと予想外の展開をして、最終的には静かな感動(達成感?)に辿り着く。小説を旅になぞらえる比喩があったりするけれど、まぁまぁ長いこの小説を読み終えたその読後感はまさにそれだなぁ、と思った。
・自分は男なので、この女性の更年期問題(それだけじゃないけど)に感情移入を完全に出来たかは、あやしい。ただ、「老い」の問題、それに伴う生物的、社会的、経済的な変化という点として見るならば、完璧でないながらも、重なる所は多い。
・その上でのある種エキセントリックな、そして滑稽な主人公の行動、その果てにあったちょびっとの癒しにはグッときてしまった。
・旅のたとえをしてしまったけど、あと読みながら、特に後半部分は、最近読んだ東畑さんのカウンセリングの本、まさにカウンセリングの道程の様な話だな、と思ったりした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人生をローラーコースターに例えるのは安直だが、じゃあ登り切った頂点は、あなたにとって、いつなのか?
そして、そこからの落下は、恐怖?それともスリルに満ちた体験?
やっかいなことに、このメタファーは、滑り落ちた先で、これにてお終い!さようなら、ともいかないのだ。
完全停止して下車するその日まで、僕らに待っているのは再び車両を自力で押し上げていく作業だ。もう以前ほど楽々と高くへ昇ることはできなかったとしても。
ミランダ・ジュライの、“はいつくばって”は、彼女の、彼女たちの二周目のローラーコースターだ。
もちろん同じ敷かれた軌道には戻らない。
コースアウトした先にレールがあるかも分からない。
ふと気づけば無頓着だった若さ/性的な魅力は失われる手前。若い恋人に焦って執着してもモノにできない。幸せな家庭生活は、妻と母を無条件に請け負うことの言い換えだとも気づいている。
それってミッドライフ・クライシスでしょ、通り過ぎ去れば笑い話だよ、なんて世間の知恵みたいなことを彼女は当然言わない。
これって何?わたしは何処へ向かえばいいの?
まっしぐらに全力で落下した後に、冒険と探究が再び始まる。
つまり本当の問題は、更年期の乗り切り方のハウトゥーなんかじゃないのだ。
“わたし”がハッキリと気づいてしまったこと。
それは、ホルモンにコントロールされた身体と欲望が求めるままに人生を生きることではない。
かといって、旧式であれ進歩的であれ、頭と理性で考えた人生を生きることでもない。
誰も所有せず/誰にも所有されない、“遍歴する魂”の赴くままに、生きること。
例え大切な人を傷つけ、損なってしまうことが見えていても、自分の心を誤魔化さずに生きること。
それは自由であること。
これは高らかな宣言ではない。
本作中で示された家族の形のように、紆余曲折の末にパートナーもまた新しいガールフレンドを見つけて、対等な関係性が築かれるといった、物語的エンディングが待っていると期待するのは難しい。
それでも、墜落の痛みに怯えずに飛ぶのだ。
ゴミ袋に身を包んで窓枠を乗り越えるのか? No!
赤裸々で、生身で、弱さをあらわにしながら這いつくばって崖っぷちを前進する彼女は、タフだ。
“いちばんここに似合う人”の、世界に対して私をハグしてと、泣きべそと共に訴えていた彼女たちはもういない。
作中で語られる通り、四つん這いの体勢は、“ちょっとやそっとじゃ倒せない”。
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Posted by ブクログ
作品紹介・あらすじ
水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘(「水泳チーム」)。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそうな中年女(「マジェスティ」)。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人(「妹」)-。孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮やかに写し取る、16の物語。カンヌ映画祭で新人賞を受賞した女性監督による、初めての小説集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作。
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けったいな一冊、って印象。奇談、というわけでもなく、前衛的ってわけでもなく、虚実入り混じった印象でもなく。荒唐無稽な話でもなく、あくまでも現実に即した話なのだけれど、ちょっとどこか変。最初はあまりシックリこなくて「あれ、失敗だったかな」と感じたのだけれど、読んでいくうちにドンドンとこの底なし沼みたいなけったいな世界にズブズブと浸ってしまった。
僕はあまり読書体験が豊富な方ではないので、断言はできないけれど、この短篇集に収録されているものと似たような作品を書いている人を知らない。唯一無二という意味でかなりユニークだと思う。仮に「小説の書き方」みたいなマニュアルがあったとしたら、そのマニュアルを完全に度外視して自由奔放に書き連ね、でも作者自身はそれを全く自覚していない、そんな感じ。読み手側からしたら、好き嫌いが明確に分かれるんだろうな、と思う。
僕は気にならなかったのだけれど、レズビアンが結構な頻度で登場するし、時にストレートな性表現がでてくるので、そういうのが苦手は人にはちょっと辛いかも。 -
Posted by ブクログ
一番ここに似合う人、あなたを選んでくれたものに続いて。こんなに1人の人の著書を読むのは久々。人があえて文字にしたり口にしたりしないような人間のどろっとした事や世界の一部を冷静かつプッと笑っちゃうような表現でひとつの作品にしちゃうのがこの人のすごいところ。動物の鳴き声が「たすけて」に聴こえてもその動物にとっては全く違う意味かもしれないし、とか。しょーーもないんだけど確かに真理だと思わせられる面白い表現がいっぱい。端的に書こうと思えば全然書けそうなことを良い意味でダラダラ書いてて、でもそのどうでもよさに登場人物たちの生活を感じる。短編もドキュメンタリーも面白かったけど長編は読み終わってこのミランダジュライワールドの人達とお別れするのが寂しくなった。