佐倉おりこのレビュー一覧
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ネタバレ子供の三角関係の葛藤を丁寧に描いてくれて、おじさんはずっと興奮してしまいます……(変質者)
いろいろとシリアスに引っ張って、けっきょく無難なところに落ち着いたと思いきや、そもそも「恋」とは、「好き」とは……という点を、メインの姉妹愛(家族愛)と結び付けて問い直す展開にはうなった。
排他性と恋愛の関係は難しいよなぁ。排他性は恋愛感情(関係)の必要条件なのか十分条件なのかいずれでもないのか。
杏ちゃん、三風ら主人公に都合の良い性格の造形をされているなぁと思ってしまうが、もう少し真剣に彼女のことを見つめていけば、固有の魅力として立ち上がっていく気はする。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ四ツ橋家のお屋敷の間取りが細かく説明され始めたときは、これから殺人事件が起きて館モノの本格ミステリが始まるのかと思った。
というのは冗談としても、いやはや、なかなかに重い話ですねぇほんとうに……
麗さんの事情が明らかになった上で、三風たちにしてきた所業を許せるのか、という点は当然に気になってしまうけれど、それよりも個人的には、麗の父(=三風たちの祖父)であるところの元社長があまりにも形骸的なイヤ〜な〈父〉、父権制の暴力性を象徴するかのような人物として(娘・麗の口から)語られていたことに引っかかる。
そういう諸悪の根源のような〈父〉を設定してしまうと、このシリーズの物語全体のトーンがなにかリアリティを欠いた薄いものになってしまいやしないか、という心配がある。あと単純に、大企業の社長とかそういう社会的にデカいスケールに拡大していくのが、あんまり好みではない、というのがある。
とはいえ、四ツ橋の豪邸で一夜お泊まりしてみての違和感・疎外感から、自分たち子どもだけで生活している〈四つ子ぐらし〉の意義を見出して、さらにはそれを、自分たちのまだ見ぬ母の生の確信へと繋いでいく手つきには感動してしまった。
要するに、良家で甘やかされて育った麗は今でもある意味で親=生家から自立できていない「子ども」であり、そんな麗を自立させるための姉・雅の出奔であり、その娘たちの四つ子ぐらしである……という関係。そうかぁ、本質的には、自立計画の対象は麗さんだったってことかぁ。
今回の下巻は、ほぼ四ツ橋家に行って帰るだけの、極めて動きの少ないプロットになっており、そのどっしりとした佇まいからも、ちゃんと親子や家族、きょうだいの物語をやるんだという覚悟と風格を感じた。
母・雅が生きているとして、なぜ出産直後に娘4人をバラバラに施設に預けたのか、そしてなぜ誰とも連絡をとっていないのか、の2点はしっかりと(ヘイトを生まないように)回収しなければならない。難しそう。
それから、麗にしろ雅にしろ、「母」だけが取り沙汰されていて、「父」の責任の話がほとんど出てこない点はずっと気になっているが、今回三風がひとりで父のことにも想いを馳せ始めていたのと、雅・麗の父のヤバさが言及されたのとで、ようやくそちらも描かれ始めたか、と安心はした。李央くんの「乳母」である雪村さんの存在には注目したい。
てか李央・トウキの双子兄弟関係も良さげですね。アイドルトウキの魅力について語り合う李央と二鳥のシーンよかった。
ラストの引きもいいですね。
そうそう、李央くんかトウキくんのどちらかが三風に好意を寄せてくれたら恋愛図式がまた一段と面白くなるよなぁと思っていたところだったので、2人ともがとは! それでこそ主人公や!! -
Posted by ブクログ
ネタバレ「四つ子」設定を生かした姉の尾行プロットが面白かった。途中から三手に分かれてそれぞれが一花と顔を間違えられて色々ある。
本巻の主題は一花の「ほんとうのわたし」を問うことだと考えると、その過程で四つ子であること(交換可能性)を利用しまくっているのはある意味皮肉でおもしろい。
最後の一花の本音の吐露には号泣した。
またその前の、大切な人の入院でナイーブになり、これから自分たち子どもだけで生きていけるだろうかと一花が悩むくだりは、あまりに切実で胸が痛んだ。これが「自立」を求めるネオリベラリズム社会の末路か……と。
もはや子どもを抑圧したり敵対したりする「大人」すらほとんどいなくなり、13歳の子どもが、まるで20歳の大人のように自らの将来を不安視して苦悩する、そのさまが児童文学でアクチュアリティをもって描かれる社会……
子どもが大人に隠れて自分たちだけで「自立」したいと願うのは良いし、児童文学はそうした子どもの願いを形にするツールのひとつであるべきだ。
でも、まだ義務教育も終わっていない年齢の子どもに「自立 “しなきゃいけない”」と悩ませて人生の行く末を不安がるさまを児童文学でこのようにあたかも一般的な子供の苦悩のように描くことが自然なものだとされるのは、違うだろ…… この作品が悪いのではなく、ここ二十年ほどで本当に社会の底が抜けているんだなぁと感じてしまい、たいへんつらく、これからを生きる子どもたちに申し訳ない。
なんでアラサーの自分らが抱くような切実な悩みを12歳が抱いてしまっているんだよ。
つまり、従来の児童文学ならば、いくら子どもが「自立」することを願ってそれを実現するさまを描いていても、あくまで大人は子どもを庇護する責任を放棄しておらず、だからこそ子どもから鬱陶しがられて反発される役回りに徹していた。そうすべきだ。子どもが大人の庇護を抑圧と見做して反抗するのはあるべき姿だろう。
でも、本作では親も親に代わる児童養護施設も「国」も大人は皆、はなから自分たちの庇護責任を放り出して、子どもに「自立」を押し付けているので、子どもは「自立しなきゃこのさき生きていけない」と悩むことになっている。
そうしたシチュエーションを前提にしているので、いくら四つ子姉妹の尊い姉妹百合の日常が繰り広げられて「私たち子どもだけで生活するのって、大変だけど、楽しい!」と前向きに幸福に描かれていても、それをそのまま良いものとして受け取ることに躊躇いが生じてしまう。
大人が子どもに全力で向き合って、ちゃんと嫌われることの大切さ。
関わりを絶って嫌われることすらせずに、子ども自身に将来の不安を抱かせてしまう大人や社会はクソだ。
子どもたちよどうか、ちゃんと自立できるだろうかとか、社会でやっていけるだろうかとか、そういうことで悩まないでほしい。親や教師や周りの大人たちほんとうぜぇ〜とか、そういうことで悩んでいてほしい(というのも嫌な押し付けだが……)。
子どもにとって「自立」は憧れや夢であっても重くのしかかる”現実”ではあってほしくない。
その意味では、終盤に再登場する自称母親は、明確な「悪役」であるだけまだマシかもしれない。いや、アイツもクソだが…… -
Posted by ブクログ
ネタバレ児童文学特有の、倫理観が激ヤバな大人や制度を背景として、それぞれ別々に育てられた四つ子が出会い、子どもだけで共同生活をはじめる話。
これまで家族を持てなかった子どもの「家族」や「姉妹」への憧れや執着が、この一巻では描かれる。
平たくいえば直球の姉妹百合モノ。本巻の時点では一花と二鳥のペア、三風と四月のペアが推されていた。
同い年なんだから姉とか妹とかにそんなにこだわらなくてもいいのに……とも思うけれど、それも、これまで与えられていなかった家族関係を取り戻そうと切実にやっているのだろう。
女児向けならではの、あまりにも理想化された美少年キャラとのヘテロ恋愛の萌芽要素は、ヘテロ成人男性からすると爆笑してしまった。キュンキュンもするけど。。
あまりにもヤバすぎるお母さん(?)の正体は、実の母も双子か四つ子かで、その姉妹(つまり主人公たちの叔母)ではないかと予想。
孤児の中学生たちを集めて子どもだけで共同生活させるのが国のプロジェクトとして進行してる設定じたいが大人からすれば仰天してしまうが、本来の読者たる子ども視点に立てば、子どもたちだけでの暮らしなんてワクワクするだろう。それを脅かす大人(家族)が現れるところからも、子どもvs大人、という児童文学の黄金の二項対立に則っているのがわかる。 -
Posted by ブクログ
娘(九)が自分で選んで読み始めたので追いかけて読んでみるシリーズ。
天涯孤独の身として別々に育ってきた女の子たちが、中学生になる春、実は自分たちは四つ子だったと知る。知るだけでなく、四人だけでの共同生活を送ることになる。色々あってとにかくそうなるところから物語は始まる。
四人はお互いにとって、今まで欲しくても叶わないと思っていた「家族」なのだが、これまで生きてきた環境も違うし知らないこともたくさんある。「普通の家族」がどんなものかもわからない。第一巻である本作では、特に四女の四月(シヅキ)ちゃんがなかなか心を開いてくれないということが最大の課題となる。
もちろん最後はハッピーエンド、口数が少なく人物像がよくわからなかった四月ちゃんも、最後には今後の活躍が楽しみになる意外な一面を見せてくれ、次回予告では早速本領発揮。四人がこれからどうやって、どんな「家族」になっていくのか、楽しく読んでいけそう(悪役となる大人たちはエゲツナイ悪かもしれないけど……)。