ルーシャス・シェパードのレビュー一覧

  • タボリンの鱗 竜のグリオールシリーズ短篇集

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    竜のグリオールシリーズ2作目。今回は中編が2つ。怖ろしいけれど魅力的なグリオール。眠っていても、否、死んでいても周囲の人はグリオールに魅きつけられ、利用される。特にスカルという話では、アメリカ人の主人公がテマラグアを訪れての物語なので、現実世界とグリオールの世界が交わった気がする。今までは、中世の竜物語の延長で読んでいたので、不思議な気がした。

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    2020年05月22日
  • 竜のグリオールに絵を描いた男

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    特徴的なファンタジー作品を読むたびに、人間の想像力の面白さを感じるのですが、この『竜のグリオールに絵を描いた男』もそれを感じました。表題作もそうなのですが、「始祖の石」という短編の発想は特にすごい。竜と魔法の世界で、法廷ものの話が展開されるなんて思ってもみなかった(笑)
    そして、この作品集に共通する空気感も、またすごいのです。

    魔法の力によって数千年もの間、その場を動けなくなった竜のグリオール。やがて竜の身体は草木に覆われ、その身体には村ができるまでになります。しかしグリオールは死んだわけでなく、そのあまりにも巨大な力は、たとえ動けなくても、人々の思考に影響を与えることができるそうで……

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    2020年04月16日
  • 竜のグリオールに絵を描いた男

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    本の出版が最近なので、新しい作家かと思ったらデビューは1984年だった。日本で紹介された頃が、ちょうど私がSFをあまり読んでいなかった頃なので、初めて読んだ。竜が存在した世界。竜退治の魔法使いの力が及ばず、グリオールを殺すことが出来ず麻痺させるにとどめた世界。横たわったグリオールの上に植物が生え、危険な生物が棲みつき、それでもグリオールは数千年の間、意識を持って生き続けてきた。その邪悪な意思は、付近に住む人たちの心に影響を与える。この世界での4つの物語が収められている。表題作の絵を描くという発想もすごいけれど「鱗狩人の美しい娘」に出てくる竜の内部の描写が素晴らしい。神秘的で幻想的。蠱惑的。そし

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    2019年07月14日
  • 美しき血 竜のグリオールシリーズ

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    ネタバレ

    文庫オビにデカデカと書かれている「巨竜美血麻薬」というキャッチフレーズが、パワーワードに過ぎる(笑)
    ルーシャス・シェパードの「竜のグリオール」シリーズ、唯一の長編にして最後の作品。このシリーズは、グリオールの邪悪な思念に振り回される人々の不安や不幸を描くことを主題としてきましたが、この作品は他の作品と一味違います。それは、グリオールの思念よりも人間の欲望の方が強い、結局「一番怖いのは人間の心」ということを、まざまざと見せつけていることです。

    巨竜グリオールの血を人体に直接投与することで、至上の幸福感に包まれることを知ったロザッハーが、それを売って儲ける、という展開。いつもはここで主人公がグ

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    2024年12月01日
  • 美しき血 竜のグリオールシリーズ

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    ほとんど死んでいる巨竜グリオールの血液から麻薬を作った男、ロザッハー。彼は麻薬王として巨万の富を築くのだがー。
    ロザッハーは悪人で幸福ではなかったが、長命であり晩年は平和だ。グリオールの恩寵をプラス方向に受けた人間だと思う。
    彼は記憶が数年おきに飛ぶ。これは記憶喪失中はオートで動いてて、必要な時だけグリオールが起こしているんだろうか。むしろ逆なのかも。

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    2023年12月17日
  • 竜のグリオールに絵を描いた男

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    ファンタジー。中・短編集。
    『ジャガー・ハンター』を読んだ時の印象と同じく、文学的。
    文学的な内面描写とファンタジーとの相性が良いかは疑問だが、特徴的な作風であることは確か。
    冒険小説的な要素の多い「鱗狩人の美しき娘」と、サスペンス調の「始祖の石」が好き。他2作も十分満足の出来。
    この作品に限らず、竹書房文庫の本は装丁がとても良い。
    美しいイラスト。肌触りも好み。

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    2023年01月05日
  • 竜のグリオールに絵を描いた男

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    全長2キロにも及ぶ封印されし巨大竜グリオールは、千年もの時を経て丘や町と化していたが、いまだに人々の精神に影響を与え支配し操縦していた…そんな舞台設定がまず魅力的。以下の4短篇集。

    「竜のグリオールに絵を描いた男」4…綺麗に着地する酒場の小咄。
    「鱗狩人の美しき娘」5…竜の内部に囚われた美人の役目とは?長篇並みの密度と満足感。
    「始祖の石」4…法廷モノ。
    「嘘つきの館」4…グリオールの子供を産む竜女と脳筋男。

    ジャンルを縦横無尽に駆け回る自由闊達な飛翔力から『ハイペリオン』を思い出した。

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    2019年04月07日
  • 竜のグリオールに絵を描いた男

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    どの話も常に淡々とかつどんよりしたテンションで、結局全部グリオールのせいだよね!になってしまうが確かにここまで大きな存在が常に傍らにあるなら自然とそういう思考になってしまうだろうな…と思った。あと結構すぐセックスするか一歩手前の展開になるのはお国柄なのだろうか…。

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    2024年04月27日
  • タボリンの鱗 竜のグリオールシリーズ短篇集

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    ファンタジー。SF。中編2作。
    表題作はタイムスリップ冒険譚。
    「スカル」は…何だろう?これも一人の男の冒険譚に思える。政治的な要素もあり。
    前作では完全に背景となっていたグリオールが躍動しているが、それでも主役には据えられていないのが面白い。
    あくまで主役は人間であり、心情の描写がメイン。著者の作風か。
    もう1作、シリーズ作品があるらしいので、翻訳されることに期待。

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    2023年01月24日
  • タボリンの鱗 竜のグリオールシリーズ短篇集

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    ネタバレ

    どうやら続編を先に読んでしまったらしい。グリオールと呼ばれる竜の鱗に触れてタイムスリップをしてしまう話と、死んだはずの巨竜の生まれ変わりが出てくる話。前半は面白かったけれど、後半はどうにも自分には合わなかった。最近の外国の作品はセックスと密接な関係でもあるんだろうか。

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    2022年08月21日
  • 竜のグリオールに絵を描いた男

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    ネタバレ

    連作短篇集。動かぬ巨竜グリオールの上に暮らす人々が、数奇な運命に翻弄される。表紙に惹かれ、のどかな異世界ファンタジーを期待して読み始めたら、どんどん雲行きが怪しくなり……。巨竜の異様に不気味な存在感と、妙に生々しい人間側の傲慢さや身勝手さをたっぷり突きつけられる。性的・法的な禁忌も絡み合い、一つのジャンルに収まりにくいダークファンタジーで、かなり読む人を選びそうです。

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    2020年12月19日
  • タボリンの鱗 竜のグリオールシリーズ短篇集

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    ネタバレ

    前作同様、ねっとりとした筆致で描かれる圧倒的な世界観。今作を鴨がSFとして評価するのはこれも前作同様、「世界の変容」を描いているからです。鴨的に、SFとは物の考え方や世界の見え方を根底から揺さぶる、「変容」を描く文学だと思っています。それが科学的な変容でも、社会的な変容でも、一個人の価値観の変容でも、揺さぶる幅が大きければSFたりうる、と定義しています。そういう視点において、グリオールの思念が世界に影響を与えるこの作品は、まさにSFです。

    前作との大きな違いは、前作では物語の世界観を形成するバックグラウンドの立ち位置にあったグリオールが、今作では思いっきり「主要キャラ」として生き生きと動き回

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    2020年10月12日
  • 竜のグリオールに絵を描いた男

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    ネタバレ

    凡作。読める文章ではあるが、面白くない。

    タイトルからすごくワクワクしたのに、期待外れだ!
    と星1をつけないだけマシだと思っていただきたい。

    純文学という装いで提示されたら、別の評価をする。
    『エンタメ』として提示されたら、精々が凡作。と言うよりほかはない。
    具体的に評価できないポイントは『キャラクター』と『筋立て』の2点。

    ・キャラクターの描写が、ワークショップで習った技法なりに頑張ってるんであろうけど、血肉の通った人として読み取れない。外見以外の表現が、常に第三者視点であり、キャラがでてこない。
    ・キャラクターの内面の変化や人格が、訳文で読む限りにおいて、『作者が神の/現代人的な視点

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    2020年08月14日
  • 竜のグリオールに絵を描いた男

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    ネタバレ

    表紙とタイトルで珍しく海外ファンタジーに手を出してみたけど、翻訳モノってセンスのズレが言語のせいなのか訳者のせいなのか解らなくてなんとも…
    稀代の魔法使いと相討ちになり、生命を維持する以外の活動を停止している巨大な竜。殆ど大地と一体化しているその身体の周辺には街が出来…と云う設定勝ちなところはある。
    或いはこの物語そのものがグリオールによって書かされている可能性だって見えてくる。解説にあるように、暗喩としては社会体制であるとかを踏まえて書かれているんだろうけれど、そういった状況が果たして良くないものばかりを生み出すと決まっているかと云われるとなんとも云えないわけで。

    しかし現代ファンタジー、

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    2019年03月25日
  • 竜のグリオールに絵を描いた男

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    ルーシャス・シェパードの書いた、巨大な竜であるグリオールを中心に動く世界に生きる人間たちの物語を、全7作品中4作品集めた短編集。
    後半になるほど面白くなっていく、スルメ作品だなっていうのが素直な感想。故に後半2作は本当に面白かったし、文章の書かれ方も大分変っていたように思う。冒険譚のようなものではないけど、ファンタジーの世界で生きる、巨大な竜に突き動かされる世界で生きる、人間味があったり、とてつもない存在だったり、闇が深かったり、キャラクターたちが繰り出すそれぞれの物語はとても魅力的だった。
    自分自身もグリオールに、この本を読むことを強制されているのかもしれない。

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    2019年02月21日