井上宮のレビュー一覧
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虹田町は蛇に似た固有種「イビ」を軒先に吊るしたりという奇妙な風習がある町。そこに越してきた小学五年生の佳夏は、山で子供の骨を発見してしまう。そして彼女のもとに訪れたなにものかは、妹の陽菜に取り憑いた。徐々に変貌していく妹、しかしそれに気づかない大人たち。じわじわと恐怖が高まっていくホラーです。
子供たちが主役のジュブナイルだけれど、恐怖感は圧巻。得体の知れない「イビ」も、町に秘められたおぞましい過去も、妹を徐々に乗っ取っていく異形の存在も気持ち悪くて恐ろしいですが。一番恐ろしいのはやはり、佳夏が追い込まれていく境遇です。「しんじない、だれもしんじない」の繰り返しで、読む方の精神状態もどんどん追い込まれていきます。こういうのを子供の頃に読むとトラウマになりそうだなあ。
佳夏に味方してくれる存在もあって戦いに挑むことになる終盤はわくわくとはらはらどきどきの連続。だけどこれはハッピーエンドになるのかバッドエンドになるのか、ぎりぎりまで予測ができませんでした。ああもう心臓に悪い。 -
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不条理なんてものじゃない、まさに’奇’としか言い表せない怪奇小説。
素手で神経を引っ張られるかのような読み心地。
本作に登場する「漠市」という街は幻だとか人里離れた山奥だとかではなく普通に電車で行けて一応普通に人々も暮らしている街。
だからなのか、全くもって理解し難く得体の知れない怪異が巻き起こるにも関わらずどことなく既視感や身近さすら感じる街。
正直、この本を読み始めてからずっと頭が痛い。
家に持ち帰ってはいけなかったのかも。
どうでもいいがサブタイトルが『ギャグマンガ日和』のブルルさんみたいでちょっと笑ってしまう。
〈ぞぞのむこ〉 すべてのはじまり。呆気に取られているうちにあれよと島本さんはドツボにハマっていく。妙に官能的。
〈じょっぷに〉 暴力性と加虐性に溢れた一作。個人的にはあまり好きではなく、「じょぷじょぷ」という擬音にもそこまで惹かれず。なんだけど、p81の文具店に入った瞬間の空気の切り替わりだとかp104「ハサミ」の怖さはえげつない。
〈だあめんかべる〉 タイトル的には一番わかりやすくリアル。老人ホーム職員の描写がじつに真に迫っている。本作中で最も力を吸い取られた結末。呆然。
〈くれのに〉 確かに解説の「民話的」(p349)という表現がピッタシ。因果応報、的な。
〈ざむざのいえ〉 いやー気持ち悪い。けど『かまいたちの夜2』で似たような話を読んだ事あるな…。
〈ナメルギー反応〉 短編に不可思議とグロテスクがギュッと濃縮された話。悲惨なんだけど唐突さにちょっと面食らうかも。
色々思う事はありつつも夢中になってしまった。
もの凄く印象に残る一冊。
1刷
2021.12.24 -
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私はきっと、人間の力では決して抗えないことを叩きつけられるような、暴力的な恐怖(怪異)を定期的に摂取しなければいけないという病気持ちなんだと思う。(我ながら生粋のドMだな…)
発作的に飛び込んだ書店にて購入。
表紙イラストの目を引く不気味さと、分かりやすく尚且つその意味を知りたくなるタイトルに惹かれた。
その判断、正解。
読み進めていくにしたがって、"不気味さ"が情報という肉を纏い、脚がが竦み身の毛がよだつほどの"怪異"へと変貌する。
フーダニットとホワイダニットの混合ホラー。
かのじょは"誰だ"?
かのじょは"何"だ?
知らないことを恐れるのは人間の本能である。
知ったうえで忌避するのは畏れであり、古来より人はそれを神として祀り、閉じ込めてきた。
本作を読んで去来した感情はまさに、畏怖。
しかし同時に井上宮さんの天才的発想に心から感動した。
全ての伏線を見事に繋げ、生み出された新解釈。
疑問符に提示された答えは私にとってもはや水源。
その理論でいくと神話や怪談に幾重にも考察の余地が生まれるじゃないですか。
井上宮さん天才か?たーのしー!
新説での考察語りとか切実にしたい…!
本作を生物ホラーと分類するなら、安生正さんの【レッドリスト】、超常的怪異と分類するなら、澤村伊智さんの【ぼぎわん(小説版)】がそれぞれ近いので、おかわりを求める人には是非一読をオススメしたい。 -
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ネタバレ呪われた街・漠市に関連する呪いの事件短編集。
「ぞぞのむこ」:謎の女が家の前に居て介助して家に泊めた次の日から公私とも絶好調になる島本。しかし前日後輩社員の矢崎と漠市を訪れており、奇妙な女の子に触れていた。家に入れたのはぞぞで島本が追い出すと公私が絶不調になり島本も崩壊。家がぞぞだらけになる描写が気持ち悪。
「じょっぷに」:万引き癖のある蕗子が漠市の文房具屋でハサミを万引き、それを目撃した大学の同級生矢崎に返した方がいいと言われたが逃げてしまう。捨てても戻ってくるハサミ。じょっぷにじょっぷにという効果音と共に友達や親を切り刻む蕗子。ぎゃーー
「だあめんかべる」:会社を退職し老人ホームに勤める田村は金髪でギャル風メイクの彩野と対立している。彩野はスーパー介護士として暴れる老人たちを手懐けている。その真相を知りたい田村は謎の緑の玉を彩野が使っていることに気づく。緑の玉トーロプとは…謎のトーロプが老人たちを癒し、欲望で変身した時の気持ち悪さ。うげーうげー
「ざむざのいえ」:かえしてかえしてかえしてと貴子の娘の亜美が言う。とにかく気持ち悪いし虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫。描写が気持ち悪すぎ。 -
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小学生の子どもが、田舎町の古い習わしに抗う話。
序盤不可思議な現象、不可解な習わしだと思っていたものが、後半どういう理由で生まれたものなのか開示された時、点と点が繋がった感覚でとてもスッキリした。同時に、そのおぞましさにゾッとした。
子どもがひたすら酷い目に遭う(肉体的にも精神的にも)上に大人が大体どうしようもないので読んでいて大変ストレスだったが、とにかくストーリーと心理描写が良いので、結末まで見届けたくて久しぶりに夢中で読んでしまった。
大人のどうしようもなさに関しては「ザ・悪役」「基本まともだけどたまに無自覚・無理解が透けて見える」「関係性的な距離が遠いゆえの無責任さ」等々、とにかくバラエティに富んでいて、そこがリアルで読みごたえがあった。
ラストは光が見えるビターエンドという感じで、寂しさを感じつつも余韻が残って好き。 -
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ネタバレ郊外の町、虹田町(こうでんちょう)には蛇に似た固有種イビを乾燥させて軒先に吊るし、厄除けにする奇妙な習俗があった。家族で転居してきた小5の佳夏がある禁忌に触れたことで幼い妹の陽菜にイビの化物イビラが憑依してしまう。妹の顔に現れたイビラの醜悪な貌は佳夏以外の大人には見えず、陽菜の異常な食欲や奇妙な行動も理解してもらえない。誤解や噂話から学校でもいじめの標的となる佳夏だが、不登校気味の同級生理來と1つ年上の美少女エリィという味方を得て、妹を助けようと奔走する。イビラの本体とは、佳夏に聞こえる陽菜や無数の子供たちの声の意味とは、そして年に一度のイビおくり祭りの意図とは……。
物語は佳夏をはじめ子供の視点から描かれている。イビラには親や大人たちに裏切られ、虐げられ、大人側の勝手な事情で捨てられ、命を奪われた子供たちの絶望と怨念、飢餓感が宿っており、妹を救おうとする佳夏も“信じてもらえない”絶望をいやというほど味わうことになる。さらには理來やエリィ、佳夏へのいじめの中心であった柊子もまた親や大人たちへの絶望と不信を抱えている。アイデンティティを確立しつつある年齢ながら、社会からはまだ子供と扱われる時期に、親に信じてもらえない/信頼できないということがどれほど苛酷なことか。そんな絶望的な状況を打破したのが◯◯◯◯だった―というのは甘々な幻想かもしれないが、作者の込めた一縷の希望とも思える。
文庫解説ではスティーブン・キング作品を引き合いに出していたが、イビラの憑依によるグロテスクな変容といった一部描写を除けば、町の因習、惨たらしい過去、大人の無理解、虐めなどなど、自分はむしろジョン・ソールの“因習・怨念・いじめ”がセットの初期田舎ホラーの雰囲気を感じた。結末は対照的だけれども。 -
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■「ぞぞのむこ」
部下の矢崎とともに偶然漠市に迷い込んだ会社員・島本。翌日から幸運が続き、元カノののぞみが突然現れる。しかし彼女は無表情で言葉もなく、異様な静けさを帯びて…。「漠市」の呪縛に巻き込まれていく恐怖作。 
■「じょっぷに」
漠市の文具店でハサミを万引きしようとした女子大生。罪悪感を抱いたまま帰宅すると、なぜか異様な切断音が脳内に響き続け、「返せない」ハサミに取り憑かれてしまう。繊細な狂気と理不尽な怪異が交錯する一篇。 
■「だあめんかべる」
介護施設に勤める男性が、漠市出身の同僚が行う奇怪な介護法を不審に思い調査を始める。そこで知った、漠市流・老人ケアの禁断の手法とは…。生理的気持ち悪さと不条理が極まった異色作。  
■「くれのに」
漠市にある祠に賽銭を奉納した青年。すると心の中に浮かんだ「〇〇してくれ」という願いがすべて叶えられてしまう。しかし、その代償として「呪いの後始末」を迫られていく。欲望と恐怖が紙一重の短篇。 
■「ざむざのいえ(ざむざの家)」
漠市内の古びた屋敷に足を踏み入れた少女とその家族。少女が突然姿を消し、「邪悪な存在に取り替えられた」という噂が広まる。閉鎖空間に潜む異形の存在と不可逆な運命を描いた神隠し譚。 
■「ナメルギー反応」
(単行本には計6篇収録/ただし頻繁に言及されないため、周辺情報から推測される別篇)漠市に接触した者の身体と精神に現れる不可思議な“ナメルギー反応”を描く、タイトル通りの怪異現象短篇。
それぞれの話は、漠市という日常に潜む異界と、知らず触れてしまった人々が巻き込まれる不可解な怪異を描いています。共通登場人物・矢崎は警告者として登場するも、助けることはできず、物語はしばしば悲劇的な結末へ。全篇通して、不条理な恐怖と得体の知れない不気味さに満ちています。  -
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単行本として2018年に刊行されたホラー短編集。2016年の表題作で「小説宝石新人賞」を受賞したデビュー作品集らしい。
この文庫を近所の書店で見て、「五感に刺さりまくる不条理ホラー!」と書かれた帯に惹かれて何となく買った。ホラーが不条理だというのは、良いことである。しかし買ったものの、「新人」の作品らしいし、どうせたいしたことないだろうなあ、と思い直して読むのを後回しにしていたのだが、読んでみたら、意外と「掘り出し物」だった。
文体は良くはないが、まあ、不可ではない。まれに、異なるテクスチュアを混合したようなテクニカルな書き方をしている箇所があったが、これはわかりにくくて良くなかった。
内容は、けっこうグロテスクである。デヴィッド・リンチやクローネンバーグ、あるいはスプラッタ・ホラーを思わせるようなグロい場面描写を作者は好んでいるようだ。キングの小説やさんざんホラー映画を見て慣れきった私にはさほどショッキングではないが、何故かそういうものに惹かれてしまう人間性の闇の部分を惹き付けるものがある。
グロテスクな場面描写は、しかし、作者の力量不足をわずかながら感じてしまった。映像的な描写といえば大家スティーヴン・キングの圧倒的筆致に及ぶべくもないし、日本の作家でも貴志祐介さんの着実な筆致に比べると見劣りする。それでも、グロテスクさはじゅうぶんに伝わってくるから、ハナシそのものは「世にも奇妙な物語」程度のものであっても、ずーんと突き抜けるパワーがある。
特に2つめの「じょっぷに」はひどいスプラッタぶりで、私には刺激的だった。何故人間はこういうものに惹かれるのだろうなあ。それは生理的な反応のアイロニカルな現象なのだろうけれども。
そんな感じで、個人的趣味として私にとっては思いがけず良い作品集だった。
著者は「新人」だから若者かなと思ったが、1961年生まれだから私より8歳も上の女性だ。受賞時のプロフィールには「主婦」と書かれてあって、30年間、発表の当てもなく書きためた原稿がクローゼットにため込まれていたらしい。 -
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ネタバレ痛い痛い、気味悪い、でもクセになるホラー短編集。
忌み恐れられている漠市に関わってしまったばかりに、とんでもなく不条理な事態に陥ってしまった普通の人々の絶叫体験。
ぞぞ、アタサワ、トーロプ…漠市が秘める不可思議なワードや漠市という怪しげな世界の構築についもっと知りたいという欲がムクムク。危ない危ないw
どの話も強烈にパンチを食らったようなインパクトだが、「だあめんかべる」と「ざむざのいえ」はその形容し難いこれ以上ない程のおぞましさに絶句、そして喝采。
漠市のナビゲーターとも言える矢崎くんの消息が知りたい。
5歳の息子が工作でハサミを使ってる時に思わず「じょっぷにじょっぷに」と呟いたら、息子もハサミを動かしながら笑顔で呟きだした…「じょっぷにじょっぷに…」。伝染ってしまったw -
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「小説宝石」掲載の2篇と書き下ろし4篇
2016年第10回小説宝石新人賞を 「ぞぞのむこ」で受賞
「ぞぞのむこ」
漠市という街に 偶然と降り立ってしまった所から 不可思議な状況が続く会社員。
“ぞぞ”というネーミングのストレートさと、むこという立ち位置の恐ろしさ。
「じょっぷに」
同じく漠市に 関わるお話。
そこの街でお買い物をしては、いけない。万引きなんてもっといけない。
異世界的な街の存在を異界とせず、関わりたくない街とするところは、現実的で面白い。
「だあめんかべる」
漠市と異形と介護
「くれのに」
漠市と異形と就活
「ざむざのいえ」
漠市とマヨイガとイジメかな
「ナメルギー反応」
漠市とふわふわの異形とアレルギー
漠市の異質な部分をそんな処と受け入れるところが面白いですねー
最初のぞぞのむこで かなり昔の世にも奇妙な物語の イマキヨさんを 何となくだけど思い出したなー