井上宮のレビュー一覧
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不条理なんてものじゃない、まさに’奇’としか言い表せない怪奇小説。
素手で神経を引っ張られるかのような読み心地。
本作に登場する「漠市」という街は幻だとか人里離れた山奥だとかではなく普通に電車で行けて一応普通に人々も暮らしている街。
だからなのか、全くもって理解し難く得体の知れない怪異が巻き起こるにも関わらずどことなく既視感や身近さすら感じる街。
正直、この本を読み始めてからずっと頭が痛い。
家に持ち帰ってはいけなかったのかも。
どうでもいいがサブタイトルが『ギャグマンガ日和』のブルルさんみたいでちょっと笑ってしまう。
〈ぞぞのむこ〉 すべてのはじまり。呆気に取られているうちにあれ -
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ネタバレ郊外の町、虹田町(こうでんちょう)には蛇に似た固有種イビを乾燥させて軒先に吊るし、厄除けにする奇妙な習俗があった。家族で転居してきた小5の佳夏がある禁忌に触れたことで幼い妹の陽菜にイビの化物イビラが憑依してしまう。妹の顔に現れたイビラの醜悪な貌は佳夏以外の大人には見えず、陽菜の異常な食欲や奇妙な行動も理解してもらえない。誤解や噂話から学校でもいじめの標的となる佳夏だが、不登校気味の同級生理來と1つ年上の美少女エリィという味方を得て、妹を助けようと奔走する。イビラの本体とは、佳夏に聞こえる陽菜や無数の子供たちの声の意味とは、そして年に一度のイビおくり祭りの意図とは……。
物語は佳夏をはじめ -
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■「ぞぞのむこ」
部下の矢崎とともに偶然漠市に迷い込んだ会社員・島本。翌日から幸運が続き、元カノののぞみが突然現れる。しかし彼女は無表情で言葉もなく、異様な静けさを帯びて…。「漠市」の呪縛に巻き込まれていく恐怖作。 
■「じょっぷに」
漠市の文具店でハサミを万引きしようとした女子大生。罪悪感を抱いたまま帰宅すると、なぜか異様な切断音が脳内に響き続け、「返せない」ハサミに取り憑かれてしまう。繊細な狂気と理不尽な怪異が交錯する一篇。 
■「だあめんかべる」
介護施設に勤める男性が、漠市出身の同僚が行う奇怪な介護法を不審に思い調査を始める。そこで知った、漠市流・老人ケアの禁断の手法とは -
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単行本として2018年に刊行されたホラー短編集。2016年の表題作で「小説宝石新人賞」を受賞したデビュー作品集らしい。
この文庫を近所の書店で見て、「五感に刺さりまくる不条理ホラー!」と書かれた帯に惹かれて何となく買った。ホラーが不条理だというのは、良いことである。しかし買ったものの、「新人」の作品らしいし、どうせたいしたことないだろうなあ、と思い直して読むのを後回しにしていたのだが、読んでみたら、意外と「掘り出し物」だった。
文体は良くはないが、まあ、不可ではない。まれに、異なるテクスチュアを混合したようなテクニカルな書き方をしている箇所があったが、これはわかりにくくて良くなかった。
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ネタバレ痛い痛い、気味悪い、でもクセになるホラー短編集。
忌み恐れられている漠市に関わってしまったばかりに、とんでもなく不条理な事態に陥ってしまった普通の人々の絶叫体験。
ぞぞ、アタサワ、トーロプ…漠市が秘める不可思議なワードや漠市という怪しげな世界の構築についもっと知りたいという欲がムクムク。危ない危ないw
どの話も強烈にパンチを食らったようなインパクトだが、「だあめんかべる」と「ざむざのいえ」はその形容し難いこれ以上ない程のおぞましさに絶句、そして喝采。
漠市のナビゲーターとも言える矢崎くんの消息が知りたい。
5歳の息子が工作でハサミを使ってる時に思わず「じょっぷにじょっぷに」と呟いたら、息子も -
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禍々しくも不可思議な、奇妙な町・漠市。
部下の矢崎と漠市に入り込んでしまった翌日から、島本には次々と幸運が舞い込んできた。そんなある日、会社から帰宅すると自宅の前に元カノが座り込んでいて……。(表題作)
漠市に関わってしまった人々に起こる不条理ホラー短編集。
周辺住人から忌避される奇妙な町・漠市。漠市の怪異にまつわるホラー短編集です。不条理ホラーと銘打っているだけあって、大半の人がさしたる理由も過失もなく怪異の世界にのみこまれていくのが恐ろしい。
ふとしたきっかけで漠市と関わってしまう→忠告を受けるがきかない、改善できない→破滅、というような、ある程度のパターンはありますが、グロテスクな話