不条理なんてものじゃない、まさに’奇’としか言い表せない怪奇小説。
素手で神経を引っ張られるかのような読み心地。
本作に登場する「漠市」という街は幻だとか人里離れた山奥だとかではなく普通に電車で行けて一応普通に人々も暮らしている街。
だからなのか、全くもって理解し難く得体の知れない怪異が巻き起こ
...続きを読むるにも関わらずどことなく既視感や身近さすら感じる街。
正直、この本を読み始めてからずっと頭が痛い。
家に持ち帰ってはいけなかったのかも。
どうでもいいがサブタイトルが『ギャグマンガ日和』のブルルさんみたいでちょっと笑ってしまう。
〈ぞぞのむこ〉 すべてのはじまり。呆気に取られているうちにあれよと島本さんはドツボにハマっていく。妙に官能的。
〈じょっぷに〉 暴力性と加虐性に溢れた一作。個人的にはあまり好きではなく、「じょぷじょぷ」という擬音にもそこまで惹かれず。なんだけど、p81の文具店に入った瞬間の空気の切り替わりだとかp104「ハサミ」の怖さはえげつない。
〈だあめんかべる〉 タイトル的には一番わかりやすくリアル。老人ホーム職員の描写がじつに真に迫っている。本作中で最も力を吸い取られた結末。呆然。
〈くれのに〉 確かに解説の「民話的」(p349)という表現がピッタシ。因果応報、的な。
〈ざむざのいえ〉 いやー気持ち悪い。けど『かまいたちの夜2』で似たような話を読んだ事あるな…。
〈ナメルギー反応〉 短編に不可思議とグロテスクがギュッと濃縮された話。悲惨なんだけど唐突さにちょっと面食らうかも。
色々思う事はありつつも夢中になってしまった。
もの凄く印象に残る一冊。
1刷
2021.12.24