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Posted by ブクログ
不条理なんてものじゃない、まさに’奇’としか言い表せない怪奇小説。
素手で神経を引っ張られるかのような読み心地。
本作に登場する「漠市」という街は幻だとか人里離れた山奥だとかではなく普通に電車で行けて一応普通に人々も暮らしている街。
だからなのか、全くもって理解し難く得体の知れない怪異が巻き起こるにも関わらずどことなく既視感や身近さすら感じる街。
正直、この本を読み始めてからずっと頭が痛い。
家に持ち帰ってはいけなかったのかも。
どうでもいいがサブタイトルが『ギャグマンガ日和』のブルルさんみたいでちょっと笑ってしまう。
〈ぞぞのむこ〉 すべてのはじまり。呆気に取られているうちにあれよと島本さんはドツボにハマっていく。妙に官能的。
〈じょっぷに〉 暴力性と加虐性に溢れた一作。個人的にはあまり好きではなく、「じょぷじょぷ」という擬音にもそこまで惹かれず。なんだけど、p81の文具店に入った瞬間の空気の切り替わりだとかp104「ハサミ」の怖さはえげつない。
〈だあめんかべる〉 タイトル的には一番わかりやすくリアル。老人ホーム職員の描写がじつに真に迫っている。本作中で最も力を吸い取られた結末。呆然。
〈くれのに〉 確かに解説の「民話的」(p349)という表現がピッタシ。因果応報、的な。
〈ざむざのいえ〉 いやー気持ち悪い。けど『かまいたちの夜2』で似たような話を読んだ事あるな…。
〈ナメルギー反応〉 短編に不可思議とグロテスクがギュッと濃縮された話。悲惨なんだけど唐突さにちょっと面食らうかも。
色々思う事はありつつも夢中になってしまった。
もの凄く印象に残る一冊。
1刷
2021.12.24
Posted by ブクログ
■「ぞぞのむこ」
部下の矢崎とともに偶然漠市に迷い込んだ会社員・島本。翌日から幸運が続き、元カノののぞみが突然現れる。しかし彼女は無表情で言葉もなく、異様な静けさを帯びて…。「漠市」の呪縛に巻き込まれていく恐怖作。 
■「じょっぷに」
漠市の文具店でハサミを万引きしようとした女子大生。罪悪感を抱いたまま帰宅すると、なぜか異様な切断音が脳内に響き続け、「返せない」ハサミに取り憑かれてしまう。繊細な狂気と理不尽な怪異が交錯する一篇。 
■「だあめんかべる」
介護施設に勤める男性が、漠市出身の同僚が行う奇怪な介護法を不審に思い調査を始める。そこで知った、漠市流・老人ケアの禁断の手法とは…。生理的気持ち悪さと不条理が極まった異色作。  
■「くれのに」
漠市にある祠に賽銭を奉納した青年。すると心の中に浮かんだ「〇〇してくれ」という願いがすべて叶えられてしまう。しかし、その代償として「呪いの後始末」を迫られていく。欲望と恐怖が紙一重の短篇。 
■「ざむざのいえ(ざむざの家)」
漠市内の古びた屋敷に足を踏み入れた少女とその家族。少女が突然姿を消し、「邪悪な存在に取り替えられた」という噂が広まる。閉鎖空間に潜む異形の存在と不可逆な運命を描いた神隠し譚。 
■「ナメルギー反応」
(単行本には計6篇収録/ただし頻繁に言及されないため、周辺情報から推測される別篇)漠市に接触した者の身体と精神に現れる不可思議な“ナメルギー反応”を描く、タイトル通りの怪異現象短篇。
それぞれの話は、漠市という日常に潜む異界と、知らず触れてしまった人々が巻き込まれる不可解な怪異を描いています。共通登場人物・矢崎は警告者として登場するも、助けることはできず、物語はしばしば悲劇的な結末へ。全篇通して、不条理な恐怖と得体の知れない不気味さに満ちています。 
Posted by ブクログ
単行本として2018年に刊行されたホラー短編集。2016年の表題作で「小説宝石新人賞」を受賞したデビュー作品集らしい。
この文庫を近所の書店で見て、「五感に刺さりまくる不条理ホラー!」と書かれた帯に惹かれて何となく買った。ホラーが不条理だというのは、良いことである。しかし買ったものの、「新人」の作品らしいし、どうせたいしたことないだろうなあ、と思い直して読むのを後回しにしていたのだが、読んでみたら、意外と「掘り出し物」だった。
文体は良くはないが、まあ、不可ではない。まれに、異なるテクスチュアを混合したようなテクニカルな書き方をしている箇所があったが、これはわかりにくくて良くなかった。
内容は、けっこうグロテスクである。デヴィッド・リンチやクローネンバーグ、あるいはスプラッタ・ホラーを思わせるようなグロい場面描写を作者は好んでいるようだ。キングの小説やさんざんホラー映画を見て慣れきった私にはさほどショッキングではないが、何故かそういうものに惹かれてしまう人間性の闇の部分を惹き付けるものがある。
グロテスクな場面描写は、しかし、作者の力量不足をわずかながら感じてしまった。映像的な描写といえば大家スティーヴン・キングの圧倒的筆致に及ぶべくもないし、日本の作家でも貴志祐介さんの着実な筆致に比べると見劣りする。それでも、グロテスクさはじゅうぶんに伝わってくるから、ハナシそのものは「世にも奇妙な物語」程度のものであっても、ずーんと突き抜けるパワーがある。
特に2つめの「じょっぷに」はひどいスプラッタぶりで、私には刺激的だった。何故人間はこういうものに惹かれるのだろうなあ。それは生理的な反応のアイロニカルな現象なのだろうけれども。
そんな感じで、個人的趣味として私にとっては思いがけず良い作品集だった。
著者は「新人」だから若者かなと思ったが、1961年生まれだから私より8歳も上の女性だ。受賞時のプロフィールには「主婦」と書かれてあって、30年間、発表の当てもなく書きためた原稿がクローゼットにため込まれていたらしい。
Posted by ブクログ
「小説宝石」掲載の2篇と書き下ろし4篇
2016年第10回小説宝石新人賞を 「ぞぞのむこ」で受賞
「ぞぞのむこ」
漠市という街に 偶然と降り立ってしまった所から 不可思議な状況が続く会社員。
“ぞぞ”というネーミングのストレートさと、むこという立ち位置の恐ろしさ。
「じょっぷに」
同じく漠市に 関わるお話。
そこの街でお買い物をしては、いけない。万引きなんてもっといけない。
異世界的な街の存在を異界とせず、関わりたくない街とするところは、現実的で面白い。
「だあめんかべる」
漠市と異形と介護
「くれのに」
漠市と異形と就活
「ざむざのいえ」
漠市とマヨイガとイジメかな
「ナメルギー反応」
漠市とふわふわの異形とアレルギー
漠市の異質な部分をそんな処と受け入れるところが面白いですねー
最初のぞぞのむこで かなり昔の世にも奇妙な物語の イマキヨさんを 何となくだけど思い出したなー
Posted by ブクログ
禍々しくも不可思議な、奇妙な町・漠市。
部下の矢崎と漠市に入り込んでしまった翌日から、島本には次々と幸運が舞い込んできた。そんなある日、会社から帰宅すると自宅の前に元カノが座り込んでいて……。(表題作)
漠市に関わってしまった人々に起こる不条理ホラー短編集。
周辺住人から忌避される奇妙な町・漠市。漠市の怪異にまつわるホラー短編集です。不条理ホラーと銘打っているだけあって、大半の人がさしたる理由も過失もなく怪異の世界にのみこまれていくのが恐ろしい。
ふとしたきっかけで漠市と関わってしまう→忠告を受けるがきかない、改善できない→破滅、というような、ある程度のパターンはありますが、グロテスクな話や生理的嫌悪感を誘うような気持ちの悪い話など、バラエティも豊富です。
表題作「ぞぞのむこ」もそうですが、その他の収録作品も「じょっぷに」「だあめんかべる」など、タイトルを見ただけでは意味の通らない言葉の羅列のようになっているのがまた不安を煽ります。意味が分かったら分かったでまた不気味で気持ちが悪いのですが。
ホラー小説で忌避される町や村というと、人里離れた場所にあったりするのが定石ですが、この漠市は電車やバス、徒歩でもすぐに立ち入れる場所にあり、不気味さを知りつつも対策を立て普通に住んでいる住民もいるというのが目新しくて面白いです。
起こるのは得体のしれないおぞましい怪異なのですが、どこか日常と極めて近い所にある恐怖という感じで、そこもまたぞわぞわします。
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