中北浩爾のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
中北浩爾『自民党 「一強」の実像」』(中公新書、2017年4月)税別880円
一橋大学大学院社会学研究科教授の中北浩爾(1968-)による55年体制以降の自民党論。
【構成】
第1章 派閥 弱体化する「党中党」
1 衰退への道のり
2 派閥とは何だったのか
3 失われた機能
4 残存する役割と上意下達機関化
第2章 総裁選挙とポスト配分 総裁権力の増大
1 脱派閥かする総裁選出プロセス
2 揺らぐ人事慣行
3 ポストはどう配分されるのか
4 強まる総裁の権力
第3章 政策決定プロセス 事前審査制と官邸主導
1 事前審査制とは何か
2 小泉政権という危機
3 安倍政権の -
Posted by ブクログ
某情報番組で、自公政権を例に「連立政権の強み」が紹介されていたのをきっかけに、この本を手に取った。番組では自公政権だけでなく、一般的な連立政権の仕組みやそれとの相違点にも触れられており、その点が興味を引いた。 本書で特に印象的だったのは、自公連立が単に政策を妥協してまとめているのではなく、むしろ両党の政策距離をうまく活かしているという視点だ。相違をあえて残すことで、有権者に幅広い選択肢を提示できることが、長期的に政権を安定させる理由の一つになっているという分析は新鮮だった。 選挙協力に関しては、他の書籍でも触れられている内容と重なる部分が多い。しかし、自民党が農村部・地方都市に、公明党が都
-
Posted by ブクログ
一貫して「革命」を目指しつつも大きく変化した日本共産党の100年の歴史を追い、国際比較と現状分析を交え、同党の全貌を描く。
日本共産党の歴史が詳細かつ実証的に分析されており、日本共産党を理解するに当たって必読の書だといえる。
日本共産党が時代ごとに大きく方針等を変えてきたということ、特に1955年以降、民族民主革命論に基づく平和革命路線と自主独立路線などを内容とする宮本路線が定着したということがよく理解できた。
一部で言われているいまだに武力革命を目指しているとか、天皇制や自衛隊を完全否定しているというような日本共産党批判が的を射ていないということもよくわかった。
一方で、いつの時代も、民主集 -
Posted by ブクログ
昨年結党から100年を迎えた日本共産党100年の歴史。日本共産党に関しては立花隆『日本共産党の研究』(1978)が有名、かつ面白いことは言うまでもない。しかし、本書も負けず劣らず読み応えがあって面白かった。何よりも1980年代以降の分析が加わっている(アフガン侵攻、天安門事件、ソ連崩壊など)ので国際情勢が大きく変化していった1980年代以降、日本共産党が変わった部分、変わらない部分、両方含めてそのスタンスがよくわかる。
著者は1968年生まれなので、自分より7つ年下だが大学に入った頃にキャンパスには「民青」の方たちが大勢いたのを目の当たりにしているなどという経験は共有している。本書には書かれ -
Posted by ブクログ
自民党の歴史と勢力図を理解するための「派閥」、近年の総裁および幹事長ポストの権力増大を理解するための「総選挙とポスト配分」、支持の源泉がどこにあるかを見るための「友好団体」「地方組織と個人後援会」といった具合に、複眼的に自民党の正体に迫ろうとしている。〈現在の自民党は、政治改革への対応を経て、民主党に対抗するなかで形作られてきたといってよい〉という結論にいたる道筋は、本書のなかでおおむね裏打ちされていると思う。野党勢力が民主党政権「失敗」の痛手から立ち直りきらず、低い投票率が続いているなか、相対的に多い固定票を持つうえに公明党と選挙協力ができる自民党が有利に国政選挙を戦っているという分析も、う
-
Posted by ブクログ
本書の著者は『自民党政治の変容』(NHKブックス)や『自民党』(中公新書)で、1970年代以降、幾度も危機がありながらその都度蘇り、大半の期間で政権政党の座を維持している自民党の「強さ」の構造的要因を実証的に明らかにしたが、本書では前著の課題として残されていた「公明党との連立の持続性」の原因を追求している。
明らかになったのは、小選挙区比例代表並立制に適応的な「高度」で相補的な選挙協力と、連立政権の緊密な意思決定システムである。自公政権分析の前提として、過去の連立政権(非自民八派政権、自社さ政権、自自公政権、民国社政権)の意思決定機構の変容を明らかにしているが、1990年代以降の政権がほ -
Posted by ブクログ
平成31年現在、一強状態にあるとされる自民党について、党の文書や機関紙・一般紙の記述や数量的なデータ、そして関係者へのインタビューなどを駆使し、派閥、総裁選挙とポスト配分、政策決定プロセス、国政選挙、友好団体、地方組織と個人後援会、理念といった多様な視覚から、包括的に分析、その実像に迫ろうと試みている。
本書では、1980年代半ばを55年体制下の自民党の完成期と位置づけ、それとの対比で現在の自民党を捉えており、衆議院での小選挙区比例代表並立制の導入をはじめとした1990年代の一連の政治改革及び民主党の台頭を要因として、自民党は組織や理念の点で大きな変貌を遂げたと分析している。自民党の強みであっ