中北浩爾のレビュー一覧
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プロ野球とリトルリーグ
理論、事例検証、当時の報道や関係者インタビューをしっかり織り混ぜて作られた良書。国対関係者等普段表から見え辛い人々によくここまでインタビュー出来たなと筆者の機動力に感心。
本書出版後に筆者が出演したYouTube番組も読後ご覧になられると面白いです。
https://youtu.be/RM1JzLBICLU
タイトルは現与党と野党の力関係について上記番組での筆者の言。 -
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中北浩爾『自民党 「一強」の実像」』(中公新書、2017年4月)税別880円
一橋大学大学院社会学研究科教授の中北浩爾(1968-)による55年体制以降の自民党論。
【構成】
第1章 派閥 弱体化する「党中党」
1 衰退への道のり
2 派閥とは何だったのか
3 失われた機能
4 残存する役割と上意下達機関化
第2章 総裁選挙とポスト配分 総裁権力の増大
1 脱派閥かする総裁選出プロセス
2 揺らぐ人事慣行
3 ポストはどう配分されるのか
4 強まる総裁の権力
第3章 政策決定プロセス 事前審査制と官邸主導
1 事前審査制とは何か
2 小泉政権という危機
3 安倍政権の官邸主導
4 事前審査制の持続力
第4章 国政選挙 伏在する二重構造
1 減少しつつも優位にある固定票
2 公明党との選挙協力
3 公募による候補者選定
4 二重構造化する国会議員
第5章 友好団体 減少する票とカネ
1 団体における自民党の優位
2 加入率の低下と影響力の後退
3 データでみる友好団体の変化
4 経団連と献金システム
第6章 地方組織と個人後援会 強さの源泉の行方
1 強固な自民党の地域支配
2 地域回帰への道
3 末端組織としての個人後援会
4 変わる国会議員と地方議員の関係
終章 自民党の現在 変化する組織と理念
1993年の55年体制崩壊とともに、長らく衆議院議員選挙として定着していた中選挙区制から小選挙区制と比例代表制へと転換された。20世紀末の政治改革であった。
本書の導入は、55年体制下の自民党、とくに1970年代に全盛を極めた派閥政治の解体過程である。
総裁選への出馬ハードルの低下、政治資金規正法改正によりその求心力が低下し、特に当選回数を重ねた議員には派閥加入のメリットが低減したと分析する。
さらに、橋本内閣以来の首相・首相官邸権限の強化により、派閥の最大の強みであった閣僚はじめ各種ポストへの配分もままならなくなった。特に小泉政権以降、当選回数が少ない議員からも抜擢し、派閥所属のベテラン議員の人事が頭打ちになるケースが増えた。おそらくここまでは、従来の自民党分析・平成政局分析の中でも言及されてきた。
本書の政治学的分析は第3章以降が本題となってくる。
第3章は、首相権限の強化を国会提出法案の事前審査制を取り上げる。この点、竹中治堅『首相支配』でも簡単に触れているが、これを自民党の党運営の伝統と位置づけて一章を使って論じるところに本書のユニークさがある。本来自民党はボトムアップの政策立案を行ってきたと本社は前提する。自民党の伝統的な事前審査は、部会-政調審議会-総務会の各レベルで議論され、全会一致(総務会長に一任)されることで法案提出となる。これに風穴をあけた2例を比較し、首相(総裁)-党の間の力関係の変化を示すのが狙いである。具体的には、党内で強力な異論が噴出した小泉政権の郵政民営化法案、第二次安倍政権の農協改革法案が俎上になる。党の合意形成を無視し中央突破を図った小泉政権に比べ、安倍政権は族議員を取り込んだり、農協からの要求に譲歩を見せるなどして円滑に事を運んだ(この点、農協改革が微温的になったという批判もできると思うが、それは本書の議論とは直接関係ない)。
第4章以降は、ポスト55年体制下においても自民党が国政選挙での得票が続いていることについての分析である。公明党との選挙協力の深化、民主党への政権委譲後の新人候補増加など、目につきやすい点である。世襲議員と3バンを持たない非世襲議員との二極化はわかりやすいところ。一方、非世襲議員の立候補に際して、公募でのリクルートが活発化しているという指摘は面白い。政党のオープン化と清新さをPRすることで、選挙対策として活用できるという思惑。欲を言えば、選挙の鍵を握る無党派層から自民党への投票傾向にもう少し説明や分析がほしいところ。
第5章、第6章はいわゆる業界団体と地方の後援会組織と党中央との関わりの分析である。政治資金規正の強化により、企業からの献金は減少傾向ながらも経団連は21世紀に入ってなお自民党への献金を継続している。とはいえ、野党の集金力に比して、自民党の力は一段も二段も上であり、第4章の冒頭で言及されている「絶対的に減少しているが、相対的には固い票田」が自民党にはしっかり残っている。
地方組織との関係性への言及の中で、特に面白いと感じたのは、市町村議会・府県議会の議員と国会議員との力関係の変化である。つまり、中選挙区制時代は、同一選挙区に自民党候補者がいれば、候補者は自らの選挙応援をしてくれる地方議会議員との関係性を重要視せざるを得ない(そうしなければ、他の自民党候補にその地方議会議員がコントロールできる票をもっていかれる)。しかし、小選挙区制になれば、国会議員と地方議会議員の関係も一対一対応となり、殊更関係を強化しなくとも惰性となる。
総じて、中選挙区制時代(55年体制下)と小選挙区時代(55年体制以降)を、党内の派閥構造の変化、法案審議・閣僚&幹部人事、支持基盤に分けて明快に分析がされている。派閥構造の変化、首相権限の拡大などは、すでに小泉政権期に関する先行研究で示されていたところではあるが、安倍政権まで尺をのばしてみると余計にその変化が小泉政権の一過性のものでないことがわかる。1990年代の政治改革とその後の野党の不振が、自民党一強の現状をつくりだしたことが構造的に理解できる。
これで著者の守備範囲は
①占領期の中道政権樹立(『経済復興と戦後政治』)
②保守合同・左右社会党再統一による55年体制成立(『一九五五年体制の成立』)
③自社の55年体制の固定化(『日本労働政治の国際関係史』)
までの従来の研究に加え、
④55年体制崩壊期(『自民党政治の変容』)
⑤55年体制崩壊以降の自民党政権(本書)
も加わったことになる。
1980年代終わりから1998年の橋下政権までの期間については、 同じ著者の『自民党政治の変容』(NHKブックス、2014年5月)で政局も含めて記述されており、本書の前編にあたると言える。著者は後書きで佐藤・松崎『自民党政権』を55年体制自民党分析のスタンダードとしているが、著者の二書はあわせて平成自民党分析のスタンダードとなるのだろう。
ところで、著者とほぼ同門と言える政治史・政治学出身の北岡伸一(無論北岡氏の方が年長)が手がけた『自民党』は、一般向けながら55年体制下の自民党分析としてはそれなりに定評はあったと思うが、本文でも脚注でも、言及がない。アプローチも政権への評価も相当違うだろうが、同じ書名を使うからには、何かしらの対抗意識はあったのではと想像してしまう。 -
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平成の政治改革以降、2025年の参議院選挙までを振り返り、日本政治を多角的に検証。
日本でも台頭しつつある右派ポピュリズム政党の問題点の指摘など、今後の日本政治を展望するのに有益な内容だった。
一方、自民党に対抗する進歩的な勢力の結集を目指してきた「闘う政治学者」の山口二郎氏の論考にはやはり負け犬の遠吠え感が強く感じられた。令和8年2月の衆院選での高市自民圧勝・中道改革連合惨敗の結果を知った上で読むと、山口氏が提示した穏健派大連合の結成という今後のシナリオも大甘な見通しだったなと言わざるを得ない。では、破局シナリオ以外に、日本政治にどういう道があり得るのかという答えは見出だせないのだが。 -
Posted by ブクログ
カトリックと黒住教がごちゃ混ぜになった家で育ち、今も親や妹が信者である無宗教者として、たいへん興味深く読んだ。読者それぞれの関心によって読みどころがわかれる本だと思う。私は、「第3章 神社と日本会議」(pp191-234)が一番学ぶところがあった。トランスジェンダー当事者として、もう二度と神社の鳥居をくぐるまい、と決心した。といっても「(前略)しかし、神社界や日本会議が安倍政権でのように、再び存在感を高めることはできないだろう。(後略)」(p233)という蔵前さんの予想があたり、神社界が変わってくれたならば、私が地元の神社を清々しい気持ちで訪れることがあるかもしれない。そういう未来が来るように、今日も明日も生きるのだ。
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Posted by ブクログ
ネタバレ野党について視点を得られる本でした。特に1章、2章は、政権交代可能な政治システムを作ることにどのように失敗してきたかという議論が細かくなされていました。強固な自民党に反して、名前も方針も代表も、目まぐるしく変わりすぎて何なのか分からない、というのは割と有権者が信頼を持って票を投じることを妨げてしまっているのではと思いました。選びにくい政党、選ばれにくい政党、という印象がさらに強まってしまいますが、
イギリスの政党政治をモデルにしてきたということも知り、選挙制度が政党を選ぶ、という側面もあることも学びました。
衆議院の比例代表議席を削減する、という話は、よりイギリスの政治システムに近づける、という意味でもあるのかな。 -
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某情報番組で、自公政権を例に「連立政権の強み」が紹介されていたのをきっかけに、この本を手に取った。番組では自公政権だけでなく、一般的な連立政権の仕組みやそれとの相違点にも触れられており、その点が興味を引いた。 本書で特に印象的だったのは、自公連立が単に政策を妥協してまとめているのではなく、むしろ両党の政策距離をうまく活かしているという視点だ。相違をあえて残すことで、有権者に幅広い選択肢を提示できることが、長期的に政権を安定させる理由の一つになっているという分析は新鮮だった。 選挙協力に関しては、他の書籍でも触れられている内容と重なる部分が多い。しかし、自民党が農村部・地方都市に、公明党が都市部に強いといった異なる支持基盤を持ち、それが固定票の相互補完関係となっている点については、本書の論理的な説明を通じてあらためて納得させられた。 この本を通して、自公政権が今後どのように変化し、連立の在り方がどのように問われていくのかを引き続き注視していきたい。
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一貫して「革命」を目指しつつも大きく変化した日本共産党の100年の歴史を追い、国際比較と現状分析を交え、同党の全貌を描く。
日本共産党の歴史が詳細かつ実証的に分析されており、日本共産党を理解するに当たって必読の書だといえる。
日本共産党が時代ごとに大きく方針等を変えてきたということ、特に1955年以降、民族民主革命論に基づく平和革命路線と自主独立路線などを内容とする宮本路線が定着したということがよく理解できた。
一部で言われているいまだに武力革命を目指しているとか、天皇制や自衛隊を完全否定しているというような日本共産党批判が的を射ていないということもよくわかった。
一方で、いつの時代も、民主集中制により派閥(分派)の存在を許さないという方針は堅持されており、党内抗争、あるいは分立、粛清が常に起こっていたということも事実である。そこが日本共産党が人々になかなか受け入れられない最大のネックになっていると思う。
著者の師である塩川伸明氏が共産主義(社会主義)について、「『負けたのは特定の社会主義にすぎない』という人は、往々にして、『社会主義Aは失敗したが、社会主義Bはまだ試されていない』という風に考えがちである。だが、それは社会主義の歴史を踏まえない見方である。1950年代半ばのスターリン批判以降、さまざまな国でさまざまな仕方でスターリン型社会主義からの脱却の試みが30年以上もの間続いてきたことを思えば、問題は、『社会主義Aも、社会主義Bも、社会主義Cも、社会主義Dも、社会主義Eも……失敗した後に、なおかつ社会主義Xの可能性を言えるか』という風にたてられねばならない。そして、これだけ挫折の例が繰り返されれば、もはや望みは一般的にないだろうと考えるのが帰納論理である」、また、「『真の(社会主義)』という言葉を使うのは慎重であった方がいい」と書いて(言って)いたことが紹介されているが、心に留め置くべき言説だと思われる。
なお、日本共産党が部落解放同盟と敵対している背景など、もう少し詳しく知りたいと思う部分もあった。 -
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昨年結党から100年を迎えた日本共産党100年の歴史。日本共産党に関しては立花隆『日本共産党の研究』(1978)が有名、かつ面白いことは言うまでもない。しかし、本書も負けず劣らず読み応えがあって面白かった。何よりも1980年代以降の分析が加わっている(アフガン侵攻、天安門事件、ソ連崩壊など)ので国際情勢が大きく変化していった1980年代以降、日本共産党が変わった部分、変わらない部分、両方含めてそのスタンスがよくわかる。
著者は1968年生まれなので、自分より7つ年下だが大学に入った頃にキャンパスには「民青」の方たちが大勢いたのを目の当たりにしているなどという経験は共有している。本書には書かれていないが、ポスト志位の有力候補と言われる田村智子日本共産党中央委員会政策委員会責任者(政策委員長)は早稲田の後輩。いたいけな(?)彼女は学費スライド制導入反対運動を契機に民青の先輩に「勉強会」に誘われてその後日本共産党に入党したのだとか……。彼女が新入生のとき、私は4年生であったのと、早稲田では比較的セクトの影響力が弱かった政治経済学部との差があったのかなと思ったりもした(本書によると1980年代が民青の規模がもっとも大きかったとのこと)。
著者は最後の「日本共産党はどこに向かうのか」で、今後取り得る二つの選択肢について予想している(pp.401-2)。私も社会民主主義的な方向よりも障害が少ない「民主的社会主義」(共産主義の看板を下ろさずにさまざまな反資本主義、反新自由主義、脱原発、ジェンダー平等、エコロジー、草の根民主主義などニューレフト的な要素を取り込みながら進む方向)に行くとは思うが、そうするとますます現実の政権を担う党にはなりにくうなるのだろうと思う。
追記:2024/1/18、日本共産党の新委員長に田村智子氏が選出された。 -
Posted by ブクログ
自民党の歴史と勢力図を理解するための「派閥」、近年の総裁および幹事長ポストの権力増大を理解するための「総選挙とポスト配分」、支持の源泉がどこにあるかを見るための「友好団体」「地方組織と個人後援会」といった具合に、複眼的に自民党の正体に迫ろうとしている。〈現在の自民党は、政治改革への対応を経て、民主党に対抗するなかで形作られてきたといってよい〉という結論にいたる道筋は、本書のなかでおおむね裏打ちされていると思う。野党勢力が民主党政権「失敗」の痛手から立ち直りきらず、低い投票率が続いているなか、相対的に多い固定票を持つうえに公明党と選挙協力ができる自民党が有利に国政選挙を戦っているという分析も、うなずける。すごく面白いかというとそういう本ではないが、自民党の現在地点を理解するという意味で、非常によくまとまった一冊。
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Posted by ブクログ
本書の著者は『自民党政治の変容』(NHKブックス)や『自民党』(中公新書)で、1970年代以降、幾度も危機がありながらその都度蘇り、大半の期間で政権政党の座を維持している自民党の「強さ」の構造的要因を実証的に明らかにしたが、本書では前著の課題として残されていた「公明党との連立の持続性」の原因を追求している。
明らかになったのは、小選挙区比例代表並立制に適応的な「高度」で相補的な選挙協力と、連立政権の緊密な意思決定システムである。自公政権分析の前提として、過去の連立政権(非自民八派政権、自社さ政権、自自公政権、民国社政権)の意思決定機構の変容を明らかにしているが、1990年代以降の政権がほぼすべて連立政権であったにもかかわらず、これまで十分に分析が行われていなかっただけに、極めて貴重な成果と言える。
なお、現在の野党共闘の成立条件を探る問題意識を前提としているが、現行の選挙制度と旧民主党系の「固定票」の脆弱さ、日本共産党の綱領問題等から極めて悲観的な結論を導いており(選挙制度改革を優先するべきとの視点を提示するが、多数派の与党の同意を得られない以上不可能)、反自公政権サイドに根本的な戦略見直しを迫っていよう。