三谷博のレビュー一覧
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今年は維新ものを多く読んだので、その総まとめとして手に取った一冊。
著者の意図である維新に対する通説とは異なる見方はしっかりと提示できており、その裏付けも膨大な資料から極めて丁寧に行われている。歴史を学問することを見事に体現されている一冊である。
各章の冒頭で示される図表が秀逸で、特に幕末期の論点の変遷や勢力図の移り変わり(258ページ)について、分かりやすくまとめられており、これまでの理解を一層深めるきっかけとなった。
個別にも多くの示唆を得たものの、やはり、公議概念に関する各々の記述が、突出して整理されている。「広く会議を興し、万機公論に決すべし」という文書が示されるまでの様々な知的葛 -
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幕末から明治維新、近代の政治・経済の土台を築き上げた一連の奔流を、当時の社会身分制度や権力の在り方を紐解き、国内外の誰が何を考え行動したかを辿ることで分かりやすく説明している。
昔学校で学んだものの、十分に意味や背景を理解しないまま置いてあった単語に沢山出会えた。当時の時代背景や社会制度などを踏まえて読み進めることで、ただ聞き覚えのあるだけだった単語が、より解像度を増して再認識できるようになった。
特に鎖国・開国が、長年にわたる様々な人間の思惑により微妙に意味ややり方を変えながら一進一退を繰り返す、ある種のグラデーションがある時期だったということが興味深く目に映った。
同時に、内憂外患(島国根 -
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米国人研究者によるユニークな江戸時代の政治力学に関する論考。精読したわけではないがたいへんおもしろかった。跡継ぎ不在で領主がなくなると、本来は領地没収となるのだが、そこを領地では「生きているかのように」演技し、それを見届ける徳川の大目付としても事情をわかっていてなおその演技におつきあいすることで、互いに秩序を守る=「表」を維持することに協力する姿が描かれる。そこらへん、事前に徳川とは「内証」の交渉をしておくわけだ。ほんとうにあったことは「表」の記録だけではわからない。江戸時代は体面を維持することがなにより重要だったため、この「表」と「内証」の政治が広く行われたが、近代において立憲制と個人の権利
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本書を紐解いたのは「図書8月号」の三谷博さんの寄稿文を読んだためだ。そこでは、「廃藩置県」という、武士階級を廃絶させて7割近くの武士を解雇した大変革に対して、何故武士の側から大きな抵抗が生まれなかったのか、を分析していた。
これは実は、「弥生時代の倭国大乱が大戦争を経ずして話し合いで統一された」という私の問題意識と同一のものであり、俄然興味を持った。著者はたくさんの著書を物にしているが、1番関係性があると思われる本書を採った。ところがいざ読み始めると、想像以上に緻密で総合的、そして独創的な維新史論だった。此処で展開するのは、荷が重いかもしれない。勉強のため、出来るだけ(私流に)まとめようと思 -
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明治維新を、志士たちの活躍という側面もさることながらとくに「維新前の国際関係」に紐づけて論じる。
最近では、「鎖国は従来思われていたほど閉鎖的ではなく、実は幕府は国際情勢を深く理解していた」という学説が主流だが、著者はさらに一歩進んで「やはり閉鎖的で情報不足だった」という立場。それは、要すれば「列強の脅威はありつつも、こちらから仕掛けなければ大丈夫」という(どこかで聞いたような)安全保障観だった。それを決定づけたのがロシア艦船との緊張が走ったゴロヴーニン事件。これを平和裏に解決したことで、公儀(当時「幕府」という言葉はない)は「外国政府は日本に野心なし」と判断。「外国船打払い令」は一見好戦的