森村進のレビュー一覧
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今こそ再評価のとき
読むことなしに不当なレッテルを貼られ、非難される思想家のランキングを作るとしたら、その首位は間違いなく、19世紀英国のハーバート・スペンサーだろう。
スペンサーは動物だけでなく人間についても「適者生存」という言葉を使ったために、弱肉強食を提唱する保守的な「社会的ダーウィニズム」の代表者としてしばしば批判される。しかし本書に収められたスペンサーの文章を読めばわかるように、そのような批判は「とんでもない言いがかり」(科学ジャーナリスト、マット・リドレー)である。
スペンサーの言う、人間社会における「適者」とは、軍事力や政治権力、物理的実力を持つ強者のことではなく、他者との -
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基本手筋集・定跡集っぽいけどえらい。森村先生がまいた種は5〜10年後ぐらいに豊かに実るであろう。もう素地はあるわけだし。
Haybron先生あたりの立場(快楽説)への言及がなかったのがちょっと残念。あとカーネマン以外の心理学者への言及がない。
人名索引にでてくるのは、アリストテレス、エピクロス、エルスター、大河内、カーネマン、カント、キルケゴール、グリフィン、スミス、セン、荘周、ソクラテス、トルストイ、ノージック、パーフィット、フェルドマン、フット、ブラッドリー、プラトン、プルースト、ベンサム、マッキー、ミル、ムア、ロールズ。高校生〜大学初年次ぐらいならこれで充分か。そのかわり思考 -
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(2024/06/09 4h)
うお〜〜〜哲学(倫理学) で思考しながら読むって想像以上に疲れる!!
ちくまプリマー新書は何冊か読んできましたが、本書は読むのに一番腰が重かったです!開いては閉じてを繰り返すこと1ヶ月。ようやく読み終えました。
わたしの集中力のなさ・思考力のなさが災いして、目が滑ってしまったり思考停止してしまう箇所も多くあり、そのことで内容が掴めず苦しんで読みました。
合間合間に小休止という雰囲気で、日常に即して考えやすい例が挟まるので、これはありがたかったですね。頭がパンクしそうなところに、助け舟のように内容を簡略化もしくは内容に補足して教えてくれるので、なるほどそう -
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法実証主義とは法と道徳の繋がりを否定する思想であり、自然法主義と対置される。
前者は西洋近代的思想であり、後者は西洋古代的思想である。
古代ローマ以来、西洋においては法と道徳が区別されず、法の中にプラスの要素が読み込まれる傾向にあった。
西洋における法は私法が中心であったのに対し、東洋における法は刑法が中心であった。
ケルゼンは法規範の根拠としてあらゆる規範の上位に根本規範があるとするが、内容が不明確であり、現在はあまり支持されていない。ケルゼンの純粋法学は独創的ではあるが、社会的現実や道徳的価値との齟齬がある。
ハートは法と道徳を峻別しつつ、法の解釈論において道徳を加味する立場であり、ソフト -
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幸福とは何か。その定義は難しい。幸福はひと時の感情でもあるし、ある程度の時間の積み重ねの中で生まれるものでもある。同じ経験をしてもそれに幸福を感じるかどうかは人によっても、時間によっても、また周囲の環境によっても変わってしまう。だから、科学的に幸福度を定量化することはかなり困難だ。
一方で幸福はしばしば比較される。誰より誰の方が幸福だとか不幸だとかいう表現は日常的に繰り返されている。でもそれが何を基準にしているのかと問われると主観であると答えるしかなくなる。
本書はこの問題に哲学的な思考をもって答えようとする。そしてそこには思考実験が提案されている。これは積極的仮説とでもいうべきもので現 -
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ジョン・スチュアート・ミルを始めとした思想家の先達たちの言説を引用しながら、表現の自由が民主国家と文化の進歩にとっていかに重要かを定義したのち、自由に対する制限の可能性を検討していく内容。
個々のトピックについて結論をだしていくというよりは、両論を併記させて論点を洗い出すスタイルのため、読み進めていくのは大変歯がゆく感じてしまう。しかし、この歯がゆさは、最終章の筆者の結論にある「言論の自由に制限があるのがなぜかについて、われわれは明確である必要がある」という記述でその目的を果たしているのではないだろうか。
ヘイトスピーチのように時代の変遷で変わっていく倫理観や、インターネット上での表現 -
Posted by ブクログ
日頃、幸福について考えることが多いので、題に興味を持ち、読んだ。
比較的最初の方で、自分は幸せを定義することについては興味がないことがわかってしまったが、せっかく途中まで読んだのだからと思い、読み続けた。途中、疲れている時に読んでいたからかもしれないが、言葉が頭をすり抜けてしまい、内容が頭に入ってこない状態が続き、苦痛に感じることもあったが、思考実験を多く用いていたことや、興味を持って読むことができた部分もあり(特に、最終章の幸福と時間についての記述は大変興味深かった)最後まで読めた。
本書を読んで、幸福を定義する様々な考えを知ることができた。また、幸福を正確に定義するのは難しいことなのだとわ