吉實恵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この作者、前に読んだ「夏の祈りは」が良かったので、再び高校野球モノを読んでみる。
昭和20年8月の終戦直後から"夏の甲子園"の再開に向けて尽力した人々の物語を、史実をベースにしながら、大阪朝日新聞の記者を主人公に仕立てて描く。
『立ちふさがったのは、思惑を抱えた文部省の横やり、そしてGHQの強固な拒絶だった』と裏表紙にあり、それに対してあらゆる手段を講じて粘り強く手を尽くす話を期待していたが、話としては平板でいささか肩透かし。
甲子園で挫折を味わい今は記者として確たる思いも持たずに記事を埋めている主人公の動きを通じて、敗戦で衣食住が足らない中で野球をやることの意味、アマチ -
Posted by ブクログ
今の世の中の空気感で、自分の心も疲れている実感があり、少しほっこり楽な気持ちになれそうな本を読みたくなり、手に取った。
心に傷を持った、39歳の哲司とキンコ(喜美子)が、夏のひとときに出会い惹かれていく。
正直、第一印象は、哲司は少し偉そうで、キンコは元気と下品を取り違えてるオバチャンみたいで、微妙に感じたのだけど、
一見、全く交わることがなさそうな二人が、いつの間にか、距離が近づいていくと、交わす言葉に、優しさや、哀しみを隠した明るさや、温度みたいなものが感じられるようになる。すると、不思議。二人ともが魅力的に思えてきて。こう言う二人が、これからの人生を支えあっていけたらいいな、と思う気持 -
Posted by ブクログ
なんでも「道」にしてしまう日本人。そして戦争直後とくればそれは「野球道」としか言えないようなものである事は想像しやすい。そんな中でも子供たちは野球を求めて居ると確信する大人達。そして一方では大人から復興の象徴として搾取されていると感じる大人達。単なる復興物語ではない重さのある本で、読んでいると確かに今の高校野球に通じる窮屈な「野球道」に通じる物が有るような気がします。
基本的には日本国内の障害や、GHQの拒絶を乗り越えての感動物語であって然るべきですが、感動の部分以上に物語に葛藤が感じられます。
敵役の人々のいう事も一理あるので、一方的に応援できない心情が出来てしまいます。これは物語の欠点では