吉實恵のレビュー一覧

  • 夏空白花

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    ネタバレ

    戦後間もなく、疲弊した日本の若者たちのために高校野球を復活させようと奔走した、朝日新聞記者の物語です。
    正直最初はこの作品中の多くの人々と同じく、「なんでこの大変な時期に野球なんぞ…」と私も思ってしまいました。
    食糧難で生きるだけでも必死なのに、球投げて打って遊んでるんじゃない!と、当時の母親の気持ちになってしまった。
    でもそんな批判を受けつつも必死で走り続けた神住の努力と、戦後1年で復活した球児たちの誇り高い美しさには涙が止まりませんでした。
    どんな状況でも夢や希望は何ものにも代え難い宝なのでした。

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    2019年06月11日
  • 夏空白花

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    初めて読む作家さん。
    以前、某公共放送の歴史番組で、終戦わずか一年後に開かれた高校野球(当時は中等学校)の大会について視聴して驚いたことがあったが、この作品はその史実をさらに深掘りしてあって興味深く読んだ。
    主人公が夏の甲子園大会の主催者である朝日新聞の記者でありかつて甲子園でプレーした球児であるものの甲子園で苦い思いを残したままというキャラクターならではの視点、そしてGHQ側、つまりアメリカ側から見る日本の「野球」とアメリカの「ベースボール」との違い、更には戦時中難しい立場で生きてきた日系人、更には当時すでに甲子園があこがれであり目標でもあった球児たちや球児たちを取り巻く大人たち、それぞれの

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    2019年05月02日
  • 夏空白花

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    やっぱり日本は野球とともに近代化してきたんだね。そして戦後復興も野球とともにってわけだ。甲子園大会(戦後の最初は西宮だったけど)が、球児の夢であることは疑いようがない。勝利至上主義をはじめとして歪なところもあるけど(特に近年は商業主義が行き過ぎてると思う)。戦後最初の大会で挨拶に立ったGHQの「最善を尽くせ、そして一流であれ!」は最高だ。スポーツはこうありたい。

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    2019年04月04日
  • 夏空白花

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    現代の高校球児、その時代は中等学校の球児だった朝日新聞の記者が、終戦直後に高校野球を再開させようと奮闘する。

    史実にもとずくフィクションは大好物です。
    初めは読みにくく、気づけば流し読みとなっていて、もしかして合わないかも?と残念に思っていましたが、ジョーの秘密に到り、ビビビと来てしまい、改めて初めから読み直しました。

    高校野球再開に奔走する神住の熱意が今ひとつつかみにくい感じでしたが、この時代にあれだけの行動力は熱意なくてはできないことかと、後に読み込みきれていなかったことに反省しました。

    高校野球、六大学野球、プロ野球の当時の立ち位置が、今とは少し違うようでとても興味深かったです。

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    2019年04月03日
  • 夏空白花

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    終戦後の生きていくのも大変な中果たして高校野球開催は時期尚早では?
    感動的な話だけで終わらせないのはさすが須賀さん
    混乱の日本の様子がよく分かる。

    実名も出ているが
    どこまで真実でどこから小説なのか?
    興味はつきない。

    そう言えば、父はプロ野球も高校野球も好きだったな
    父の世代は今よりずっと野球に熱中していた
    その意味が少し分かった気がする。

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    2019年03月04日
  • 夏空白花

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    ネタバレ

    著者作品は3作目。
     ドイツが好きで、ヨーロッパの近現代史が得意分野と思っていたが、高校野球を題材にしたものもあるのも知っていた。その著者が、2018年夏、高校野球100回大会の節目に世に送り出したのが本書。

     大戦後1年で復活を果たした高校野球。その史実を基に、その復活までの尽力を、朝日新聞社運動部の一記者神住を軸に描く。
     舞台は、1945年夏の大阪、物語はあの玉音放送から始まる。それまでの正義、価値観がひっくり返り、食うや食わずの焼け野原の中、敗戦翌日からストーリーは動き出す。
     物質的な困難は容易に想像つくが、GHQの存在、文部省との綱引きなど、周辺には多くの障害があったことを、ひと

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    2019年02月09日
  • 夏空白花

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    終戦直後、高校野球の復活を目指して全国を回る記者。彼はかつて投手として活躍していたが、苦渋を味わって野球から遠ざかった身だった。
    そんな彼が、戦争の傷跡が深く残る世間に野球を復活させようと駆けまわる。彼を動かすものはなにか…そして、大会の再興を阻むものはなにか。
    真摯にその時代を描き、野球にまつわる人々の思いを様々な側面から描いた物語。

    この作者さんは、戦争ものも残酷さ含めて難なく描き、さわやかな青春小説も軽く描いてしまう幅広く豊かな作風を持たれています。

    そんな手練れの作者さんが、いたってストレートに(フィクションとはいえリアルに)高校野球大会の復活までを市井の人々の視線で真正面から描い

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    2018年12月20日
  • 夏空白花

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    高校野球、ファンではないけれど他にない魔法がかかっているのは私もわかる。

    その高校野球と、戦争が重なりあい、ドラマが生まれる。

    登場人物それぞれの背負うものと、それらが噛み合う運命と。

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    2018年12月19日
  • 夏空白花

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    今年の夏、100回を迎えた全国高校野球選手権大会、そのタイミングで書かれた高校野球復活の物語。敗戦後の日本で、甲子園大会を復活させて、未来の若者に元気と希望をって思いで東走西奔する新聞記者の神住。しかし、GHQや野球道具不足など幾多のハードルが待ち構えていて、学生野球に対する野球道のような考え方の危うさもあって、考えさせられる部分もあります。それにしても、彼の奥さんはよくできた男気のある女房だなあ(笑)

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    2018年09月19日
  • 夏空白花

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    昭和20年8月15日。
    終戦の日から、中等学校優勝野球大会(いわゆる甲子園)の
    復活に奔走する大阪朝日新聞 元運動部社員神住の物語。

    中盤以降まで淡々と話は進んでいく。
    が後半俄然面白くなるよん。

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    2018年09月14日
  • 夏空白花

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    立て続けに須賀さんの作品を読みましたが、どれも当時の様子が目に浮かぶようです
    筆力もですが、事実調査や情報収集が見事だと感じます

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    2025年09月01日
  • 風待ちのひと

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    ネタバレ

    アラフォーの男女の恋愛が、ゆっくり進んでゆくストーリーですが、ところどころ違和感が⋯

    喜美子が全体的に39歳とは思えぬ所作や話し方だったのが気になって気になって⋯苦労の多さを鑑みても老けすぎてて60歳くらいの描写に感じられてしまった。10年以上前の作品とはいえ⋯

    また、主人公の妻が分かりやすい悪役すぎて、ちょっと男性視点だけのご都合主義に見えました。

    まあ最後までスルスル読みやすかったのは良かったかな。

    3.4

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    2025年08月31日
  • 風待ちのひと

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    主人公よりも10年も長く生きてしまったせいか、ものすごく俯瞰的に読んでしまう物語だった。どの人にも肩入れはできず、とはいえ全く理解できないというわけでもない。リアルだと言えばそうだし、その割に夏の美鷲の風景は夢みたいだった。エピローグの幸せそうな皆の様子がとても良かった。

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    2025年07月04日
  • 風待ちのひと

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    お久し振りにこの作者さん、デビュー作に行ってみる。

    仕事にも家庭にも疲れた哲司が、亡くなった母が最後に住んでいた港町の家を訪ねたところから始まる物語。
    そこで偶然知り合った喜美子に母の遺品整理を手伝ってもらうことになったが、喜美子にも息子と夫を相次いで亡くしていた過去があり…といった展開。
    悪くない話なのだが、何故だかあまり響かずで、実際にあったらいいよねえというか、もはやこういう話はお腹いっぱいって感じ?
    病んでいる割には偉そうかつ頑なな哲司にも、自分を守るためとは言いながら自らをオバチャン呼ばわりする喜美子にも、あまり魅力を感じず。
    哲司の奥さんもどうだかとは思うのだが、なんか男だけに都

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    2025年06月07日
  • 風待ちのひと

    購入済み

    マインドコントロール

    スリーラー小説だと思ったが、どうして、どうして、男と女の心の中、頭の中、最後は主人公ふたりの思った通りになりました。でも、私の
    気持ちが行ったり来たり、して、疲れました。

    #じれったい #癒やされる #共感する

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    2024年10月04日
  • 風待ちのひと

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    "道を踏みはずしたよ"
    "踏みはずしたんじゃないよ。風待ち中"

    心の風邪をひいて休職中のエリート会社員と過去に家族を相次いでを亡くした傷を抱える女性。共に39歳の2人が海辺の町で偶然出会って再生していくお話し。

    優しい大人の恋ではあるんだけど、それも不倫では…とも思ってしまった。
    2人の葛藤や、撤退はしないといいつつ中々前に進むことができなくてウジウジとする心の動きがとてもリアルに伝わってきて、この作家さんは心の機微を描くのがやはり上手だなと思う。

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    2024年02月16日
  • 風待ちのひと

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    鬱で生きる気力のない哲司に否応なく関わってくる喜美子。いつも明るい喜美子も悲しみを抱えています。

    読んでいて平穏な日常の幸せを感じました。
    哲司と喜美子の他愛ない会話ややり取りに和む。
    伊吹さんの作品に共通して感じる“優しさ”、“安らぎ”みたいなものを、デビュー作からも感じました。
    読めて嬉しい。
    良い読後感でした。

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    2022年12月29日
  • 夏空白花

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    敗戦直後。
    「高校野球大会」を再開させるために奔走する
    男の物語

    政府やGHQの横やりの中
    国に希望を取り戻すにはコレ!と思いつめた
    主人公の思いが熱い

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    2022年03月15日
  • 夏空白花

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    主人公の朝日新聞記者の人物に違和感を感じてしまったことと、野球や甲子園に一つも興味がないことから、少し読みにくさを感じてしまったが、ところどころに現れる鋭い指摘は現代にも通じるようで、面白かった。

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    2021年11月18日
  • 夏空白花

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    須賀しのぶさんの敗戦直後から1年後、1946年8月15日の高校野球大会開催までの朝日新聞社運動部員の話。「道」を追い求める野球と才能を生かすベースボールの違いを日米の違いとして抽出する捉え方は須賀さんらしい視点であるように思えた。しかし「また桜の国で」などヨーロッパもののスケール大きな緊張感にあふれる物語に比べると「小さな国」の話だなと思ってしまう。それにしても1964年までの19年間であれだけの復興とその後の経済的発展の基盤を成し遂げた大正・昭和世代のエネルギーには驚嘆するばかりだ。その後の経済成長がさまざまな取り返しのつかない自然破壊を起こし、その陰に多くの棄民を生んだとしても、彼らの力は

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    2021年08月01日