吉實恵のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ戦争による高校野球の中止。終戦後に再開させたくてもなかなか目処が立たないなかなんとしてもという決意のもと動き出す神住。野球に対する強い想いと元球児としての願い。GHQの壁。困難なことがたくさんある中で日本の復興のひとつのシンボルとして野球を、それも高校野球の復活。アメリカ側とのやりとりで見えてくる日本のこれまでとこれから。野球とベースボールの違い。戦争の悲惨さと立ち直ることの難しさ、全てを受け入れて進むこと。その大変さ、苦悩、悲しみがある。だけど野球に願いを乗せて、球児に未来を見て、そしてタイトルの意味がわかるラストにある希望。とても素晴らしい物語。
-
Posted by ブクログ
ネタバレペコちゃん
福井喜美子。不二家のペコちゃんに似た腕利きの元理容師。夏の間、ミワという店で手伝いをしている。三十九歳。六年前に旦那が亡くなった。
須賀哲司
和歌山県から東京までトラックで鮮魚を運ぶ仕事を始めて五年目。三十九歳。美鷲水産。大学卒業後に入った銀行は相次ぐ合併で、気が付けば吸収された側の窓際にいた。
実塩
哲司の母。三重県の私立の女子校で教頭を務めていた。定年後も請われてその学園の運営に携わっていたが、六年前に完全にリタイアし、岬の家と呼ばれる、美鷲に家を建てた暮らしていた。持病が悪化して倒れ、五ヶ月の闘病の末に病院で亡くなった。
理香
哲司の妻。大学の同級生。外資系の証券会社に -
Posted by ブクログ
須賀しのぶさんの著書はやはりいい。
『また、桜の国で』『革命前夜』『神の棘』『紺碧の果てを見よ』と読んで来たが、どれもハズレはない。
前半は物足りなさがあったが、物語が動き出す後半は引き込まれて一気に読んだ。
1945年、敗戦翌日から、戦争で中止となっていた高校野球大会を復活させるために奔走する人々を描いた小説。
GHQや文科省と駆け引きしながら、あきらめず、出会いから人脈を広げ、敗戦の翌年には開催した。そこまでの道のり。そこに絡んでくる人々。野球ファンではなくても、楽しめると思います。
野球好きには尚更楽しめるのではないでしょうか。
それにしても、やはり巨人は好きになれない。沢村栄治に対 -
Posted by ブクログ
1945年8月、敗戦直後から、失われた高校野球大会を復活させるために元高校球児の新聞記者が奔走するお話。
甲子園への思い、野球への思い、GHQの日本野球への反感、ベースボールとの違い‥。
今の高校野球にも通じる問題を考えながら、野球が好きな子たちが思いっきり野球ができることがどんなに幸せかをかみしめずにはいられませんでした。
「空襲を知らせるサイレンに怯えることなく、誰も彼も夢中で、白いボールの行方を追う。一喜一憂する。見事なプレーに惜しみない賞賛を送り、まずいプレーにさ野次を飛ばす。かつては球場で当たり前のように見られた光景だった。」
どう -
Posted by ブクログ
あなたは、『たしかに自分は今、何もかも保留、宙ぶらりん、先送り中だった』という今を生きていませんか?
この世を生きていく中には、楽しいこと、やりたいことがある一方で、嫌なこと、やりたくないこともたくさんあると思います。これは誰だって同じです。前者だけしかないという方がいたらそれはとても幸せで前向きな人生なのだと思います。誰にだって多かれ少なかれ、またその時々の状況によって嫌なこと、やりたくないことというものはあるはずです。そして、当然の感情として、そんなことごとを後回しにしたい、そんなことがあること自体を考えないでいたい、そんな風に考えると思います。
しかし、残念ながら人の人生が有限である -
Posted by ブクログ
最近、青春小説ばっかり読んでいたので、久々に大人のお話。
心のバランスを崩し休職中のエリートサラリーマン哲司が紀伊半島の港街、美鷲を訪れる。そこで出会った喜美子。明るい振る舞いの裏には悲しい過去があり。
最初はこの喜美子の田舎のオバちゃん然とした感じがイヤだったけど、読み進めていくうちにそれが彼女の自信のなさやあきらめてきたものからくるものだとわかってくる。本当は誰よりも純粋でまっすぐで。だから哲司もそんな彼女に癒され、徐々に自分を取り戻していくんだね。大人の夏休み。
「風待ち」という言葉がいいね。「道を踏み外したのではなく、風待ち中。いい風が吹くまで港で待機しているだけ」
惹かれあう二人だけ -
Posted by ブクログ
心が風邪を引いてしまったら、どうする?
そんなことで寝込んでなどいられないと、自身を叱咤激励するか、それとも、癒されるまで、ゆっくり過ごすか。
心が風邪を引いてしまったら、無理をしちゃいけない。周りの速度が速いから、取り残されてしまうのではないかと心配になるかもしれないけれど、焦らなくていい。
「風待ち中。いい風が吹くまで待機しているだけ」
いい風が吹いてきたら、帆を上げて漕ぎ出せばいい。
でも、それは一人じゃ無理。傍にいてくれる誰かが必要。支え、励ます、時にはユーモアをもって。その中で、もしかしたら、風邪が治りきっていなかった自身も癒されていく。
読後感がとてもあたたか -
Posted by ブクログ
面白かった。
日本の夏といえば、甲子園。
終戦直後の日本で、高校野球復活のために奮闘した新聞記者の姿を描いた小説。
タイトルは「なつぞらはっか」と読む。
夏空に白球が飛んでいく様を喩えたのか、と思ったら違う。夏空の下、グラウンドを走り回る白いユニホーム姿の選手のを譬えたのだという。
敗戦の1年後に、焼け野原の中で、主要な球場を接収された中で、高校野球の全国大会が開催されたなんて、よく考えれば奇跡だ。そんな奇跡が目の前で繰り広げられれば、選手たちはまさしく希望の真っ白な花のように、観客の目には映っただろう。
なぜ、日本において、こんなに野球が他のスポーツに比べて特別扱いされているのか?ま