荷見明子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ピエール・ルメートルは「その女アレックス」以来で
どんなスタイルの作家だったか忘れてしまっていたんだけど、まあ〜おもしろかった!
ラストは痛快すぎて、声を出して笑ってしまったほど。
ありゃ、こんなこと書いたら不謹慎で物騒な人間だと思われるかも?
何せ全編通して残虐で残酷。だけど根底にはユーモアが漂っている。
認知症を発症した63歳の女殺し屋という設定が
最初は無茶過ぎない?と思ったけど、
その心配はいらなかった。
前に読んだ本のテーマがバイアスだったのだけど、
今回もまさしくそれと同じ。
老人だから何もわかってない、何も出来やしないだろうという偏見を、鼻で笑うかのごとく危機をかいくぐっていく主人公が
同年代である自分には頼もしく思えた。
最近ほんとにいろんな場面で衰えを感じ、
自分に自信をなくしていたところなので。。
そしてこの作品には
もう1人の隠れた主人公がいる。
このお方にも拍手。
老いることが何?
深刻にならないで
今自分が出来ることをやろうよと言われてるようで
ちょっと勇気をもらえた。
-
Posted by ブクログ
伝説の女性殺し屋が歳を取ったら…
このキャラクターの設定がとても面白い。
そして主人公、マティルドは容赦ない。
マティルドのカオスな心模様に次々と巻き込まれていく人々…
初めて書いた犯罪小説で、既にこんな才能を秘めていたとは、やっぱりルメートルだ。
チラッとSPY×FAMILYを連想しながら楽しめた。
人が歳をとるという現実をこれでもかと書き綴っているけれど、63歳じゃまだここまでヨボヨボにはならないかなぁ。
現実にはプラス10歳くらいのイメージ。
この作品はデビュー前に初めて書いたものだというから、当時のルメートルはまだ若くて、60代がとんでもなく老いぼれて見えてたのかも知れない。 -
Posted by ブクログ
日本の刑事小説やアクション小説は、ハードボイルドからバイオレンスにいつしか変ってきたようにうっすら思っている。ハードボイルドの流れは断ち切れてしまい、小説が劇画的傾向を強めているような小説読者としての危機感を感じている。
海外小説はどうなのか。世界にも、日本と同様の傾向はもともとなかったわけではない。むしろ銃器を合法化している国や兵隊上がりの作家などは、装弾した銃を身に着けて歩く文化が当たり前のことのようで、それらを非合法に用いる主人公像だって特に珍しいことではなかったように思う。それでも劇画化したように、空白の多いページ、行替えの多いパラグラフが近年目立ってきて、とても読みやすいアクション劇画小説のような傾向にすら翻訳小説界も変容し始めていることを感じざるを得ない。
本書は、そうした行替えを多用する散文詩的傾向の強い小説である。最近、北欧小説の若手作家たちの間で、この傾向が強まったように思える。アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリの『熊と踊れ』はそうした、いわゆる読みやすくテンポの良いリズムに終始していた。
ドン・ウィンズロウの『野蛮な奴ら』などにも見られるこのスピーディでテンポの良い、まさしく音楽的なとでも言いたくなるほどに早読みしやすい小説は、その行間の多さゆえに、実は行間で語るべき主題の質がより問われる高難度作品であるように思う。
本書は、そうした高難度な技術に挑んでいるネオ・ミステリの流れなのかな、と第一に感じた。ザックという若手の刑事の個性に焦点を当て、この刑事の未熟で不完全な部分を前面に出しつつ捜査面での刑事的執念や野生的な勘については一目置いている。刑事としての劇画のようなラディカルさ、斬新さを表に出しながら、今までにない若手刑事としての才能により事件を断ち割ってみせてゆく。その視点、断面、切り口とそれらの語り口、すべてにおいて器用な文体による魔法を見せてゆく。
何度の高い表現される内容については、粗削りだが硬派なテーマを固めてきたという印象も強い。国際的背景まで含めた移民問題については深い。今まさにTVニュースを席巻しているクルド族問題や、東ヨーロッパのグルジア、ラトビア、リトアニアのソ連時代からの迫害の歴史と、彼らが移民として脱出した先(ここではまさにスウェーデン国内)での差別とヘイト犯罪、人身売買組織、麻薬組織などなど、日本ではあまりお目にかからない規模や浸透度での硬派でリアルタイムな社会問題の数々。若い刑事ザックが目の前にして、今まさに戦わねばならない犯罪の暗黒性は本シリーズの今後も焦点となってゆくだろう。
ザックを固めるチームの個性も強く、それぞれに出自や障害、民族的理由等々により差別に曝される側に属する捜査官たち、そうでない捜査官たち、ザックの隣人、友人、過去の関係者たち、そしてザックの過去そのもの。どれをとっても、これからザックが挑もうとするヘラクレスの12の難業の残り11に向けて予め決められた駒の配置であるように思える。そう、本シリーズは12作を予定して書き始められた新シリーズである。
バイオレンス度が強いのと、ザックの無鉄砲ぶりなどに非現実的肌触りを覚えはするものの、浮上してくるスウェーデンと国際情勢へのアンテナを高く張り巡らせた貪欲な作家たちの姿勢に注目してみたい新シリーズの、これは狼煙のように目立って見える第一作である。 -
Posted by ブクログ
日本の刑事小説やアクション小説は、ハードボイルドからバイオレンスにいつしか変ってきたようにうっすら思っている。ハードボイルドの流れは断ち切れてしまい、小説が劇画的傾向を強めているような小説読者としての危機感を感じている。
海外小説はどうなのか。世界にも、日本と同様の傾向はもともとなかったわけではない。むしろ銃器を合法化している国や兵隊上がりの作家などは、装弾した銃を身に着けて歩く文化が当たり前のことのようで、それらを非合法に用いる主人公像だって特に珍しいことではなかったように思う。それでも劇画化したように、空白の多いページ、行替えの多いパラグラフが近年目立ってきて、とても読みやすいアクション劇画小説のような傾向にすら翻訳小説界も変容し始めていることを感じざるを得ない。
本書は、そうした行替えを多用する散文詩的傾向の強い小説である。最近、北欧小説の若手作家たちの間で、この傾向が強まったように思える。アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリの『熊と踊れ』はそうした、いわゆる読みやすくテンポの良いリズムに終始していた。
ドン・ウィンズロウの『野蛮な奴ら』などにも見られるこのスピーディでテンポの良い、まさしく音楽的なとでも言いたくなるほどに早読みしやすい小説は、その行間の多さゆえに、実は行間で語るべき主題の質がより問われる高難度作品であるように思う。
本書は、そうした高難度な技術に挑んでいるネオ・ミステリの流れなのかな、と第一に感じた。ザックという若手の刑事の個性に焦点を当て、この刑事の未熟で不完全な部分を前面に出しつつ捜査面での刑事的執念や野生的な勘については一目置いている。刑事としての劇画のようなラディカルさ、斬新さを表に出しながら、今までにない若手刑事としての才能により事件を断ち割ってみせてゆく。その視点、断面、切り口とそれらの語り口、すべてにおいて器用な文体による魔法を見せてゆく。
何度の高い表現される内容については、粗削りだが硬派なテーマを固めてきたという印象も強い。国際的背景まで含めた移民問題については深い。今まさにTVニュースを席巻しているクルド族問題や、東ヨーロッパのグルジア、ラトビア、リトアニアのソ連時代からの迫害の歴史と、彼らが移民として脱出した先(ここではまさにスウェーデン国内)での差別とヘイト犯罪、人身売買組織、麻薬組織などなど、日本ではあまりお目にかからない規模や浸透度での硬派でリアルタイムな社会問題の数々。若い刑事ザックが目の前にして、今まさに戦わねばならない犯罪の暗黒性は本シリーズの今後も焦点となってゆくだろう。
ザックを固めるチームの個性も強く、それぞれに出自や障害、民族的理由等々により差別に曝される側に属する捜査官たち、そうでない捜査官たち、ザックの隣人、友人、過去の関係者たち、そしてザックの過去そのもの。どれをとっても、これからザックが挑もうとするヘラクレスの12の難業の残り11に向けて予め決められた駒の配置であるように思える。そう、本シリーズは12作を予定して書き始められた新シリーズである。
バイオレンス度が強いのと、ザックの無鉄砲ぶりなどに非現実的肌触りを覚えはするものの、浮上してくるスウェーデンと国際情勢へのアンテナを高く張り巡らせた貪欲な作家たちの姿勢に注目してみたい新シリーズの、これは狼煙のように目立って見える第一作である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本書がピエール・ルメートルの最後のミステリーという売り文句で世に放たれていたのは知っていた。
だが、その後ルメートルの新作らしき本も見かけることがあり、どういうことだ?と思っていた。
なるほど「ミステリー」は最後ということらしい。
他に取り組んでいるという″歴史小説″の方を読んだことないので何とも言えないのだが、別にこれも「誰か分からない犯人が事件を起こして警察なり探偵なりが手掛かりを追い犯人を突き止める」といういわゆる王道なミステリーというわけではなく、ノワールとかサスペンスといった着想や展開の妙で魅せる類の作品。
わざわざ最後とか言う必要あるのかな。
着想はユニーク。
老齢を迎えた主人公というのは近年ちらほら見かけるような気がするけど、認知症の兆候ので始めた凄腕の殺し屋(女性)というのは、エッジ効かせてきたなと。
展開も面白い。
仕事の出来栄えをめぐる悶着や明後日の方向に突き進み完遂してしまう姿。
はちゃめちゃなんだけど、何故かドタバタ感はそうでもない。
ただ、本人も認めるようにとにかく登場人物達(犬含む)に容赦がない。
そこまで紡いできた物語に未練もなく、すぱっと引導を渡す。
現実世界ですら容赦ないのに、ましてや犯罪小説の中にしてなぜ手加減する必要がある?というのが本人の論のようだが、なんて言うかそこは意味とか、去ってなお残される物語性っていうのが欲しいところ。
決して容赦ない現実をトレースしたいだけで読んでいるわけではないので。
初めて書いた作品をわずかに手直ししてピリオドとしたそうだが、これでいいのかな。
ある意味″歴史小説″の方ではどんなテイストになっているのか読んでみたくなった。
-
Posted by ブクログ
続いてもワタクシの第二の故郷おフランスから
フランスが産んだ鬼才ピエール・ルメートルの最後のミステリーと銘打たれた『邪悪なる大蛇』です
「最後の」って言っていますが、実はルメートルが最初に書いたクライムノベルということです
晩年歴史小説に軸足を移したルメートルがファンからもうクライムノベルは書かないの?ってしつこく言われて、そういえばタンスの中にひとつ仕舞ってあったなと思い出し、ちょっと直して出版したという代物
まぁ言わゆるタンス預金ですな(違うわ!)
物語を一言で言い表すなら、(解説にあった通り)「残酷な喜劇」ということになるんでしょうな
初期の認知症を患った凄腕の殺し屋のおばあちゃんが主人公
認知症と凄腕という相容れない状態が混乱を加速させる中、物語は進みます
途中、まだらな記憶の中に巻き込まれた関係ない人たちも殺しまくります
ダメなのよー
「残酷」だめなのよ基本
そこを上回ってくれるぐらいの驚きのストーリーを展開してくれればそっちが勝つんだけど
「残酷」の時点で「喜劇」成立しないのよ
何がおもろいねんって思っちゃうのね
分かりますよ
仕立てとしてはね
そこにおかしみを見出すっていう作りはね
でもダメ「残酷」だけが残っちゃうの
悲しすぎて思わず笑っちゃうって感情は理解できるんだけど苦手なんよね
ならクライムノベルなんて読まなきゃいいんだけどね
悪に憧れる気持ちもちょっとあるのよ -
Posted by ブクログ
せっかくレビュー見てくれたのにごめんなさいねー
一度、このレビューを閉じて本の表紙を見てください
……
……
……
……、見てくれました?
どーもm(_ _)m
バアさんがいましたよね
彼女の名はマティルド、63歳
それなりの歳ですからシワは仕方ないです
体重もかつての倍になってしまったそうです
それでも若かりし頃の美貌は凄かったそうです
美貌と冷酷で知られるレジスタンスの闘士だったそうです
そんな彼女の殺しの腕前は今も昔も変わらず健在です
マティルド、63歳は今も凄腕の殺し屋なのです
しかも、ただの殺し屋ではないのです
凄腕の…、じゃなかった!
いや、凄腕は凄腕なんだけど…
凄腕の殺し屋でも敵わないものが彼女に迫っているのです
それは、認知症!
マティルド、63歳は凄腕で認知症の殺し屋なのです
ちぃーとボケ始めてる殺し屋なんてめちゃくちゃこぇーよ!
だって、ターゲットを殺すときにマグナム弾をぶちこんじゃうんだよ!
あそこに!
股間に!
あぁー、こぇーこぇー!
マティルド、こぇーこぇー!
どこかの奥様よりこぇーこぇー!
( ゚∀゚)・∵. グハッ!! -
Posted by ブクログ
戦慄の四重殺人。さらにそれに続く事件の残忍な手口に、百戦錬磨の特捜班の面々も言葉を失う。売春をめぐる犯罪組織の抗争か、人種差別主義者の暴走か、あるいは単独のシリアルキラーが跋扈しているのか?浮上しては消える手がかりと容疑者。事件を追うザックたちの焦燥は日ごとに深まるが…若き刑事の苦悩と成長を通し移民、差別、薬物などスウェーデン社会の闇を雄大なスケールで描きだす新シリーズ、ここに開幕!
荒っぽい展開にちょっとげんなり。共著者の一人、モンス・カッレントフトの作品は「冬の生贄」と「天使の死んだ夏」を読んだことがある。あちらは女性刑事ものだったと思うが、作風が変わったのかな?