真野俊樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2013年8月10日発刊の書。
帯に【1年間あたり400万円・・・払いますか? それとも死にますか?】とキャッチがつけられているんだけども、そんな煽りをするような本ではない。
僕たち日本人が当たり前のように接している医療制度「国民皆保険」について他国の制度との比較や、存在背景などを経済学的な視点も交えわかりやすく解説してある。
国民皆保険の是非を是非を結論するのではなくて、むしろ、そういった制度がある上で、どのように医療や命を考えていくか示唆に富んだ内容になっている。
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【内容(「BOOK」データベースより抜粋)】
高齢者の増加と高額医療の出現によって&q -
Posted by ブクログ
医療の制度と経済を考える上で、基本となる高水準の新書
本書の特筆すべき点は、本書が今なお全国民向けの医療保険制度を持ち得ないアメリカ国民に向けにアメリカの医療制度とは異なる経過を辿り、日本の風土の中で構築された日本の医療保険制度を、アメリカ人の政治学者であり日本を対象に研究生活を行ってきたキャンベルと、日本人であり日本の医師資格を持ち医療政策、医療経済を研究してきた池上の共同の研究成果の日本語版である点にある。
前述の基本的な性格を持つ本書は、日本人同士であれば既知として省略されるであろう部分、政策形成過程における日本的決着の曖昧さを含む部分等に対しても論理的な論述の努力がされている。 -
Posted by ブクログ
市場の失敗の例
公共財(フリーライドの誘惑)、費用逓減産業(ガス、電気など)、不完全競争(企業が価格支配力を持つ)、外部性(騒音、混雑、公害など)、情報の非対称性と不確実性、分配の問題(公平性と効率性のトレードオフ)、価値財(日本の公的医療保障など)。
市場は生産市場、労働市場、資本市場に分けられる。
医療は市場の失敗と政府の失敗が存在する。
良いものが高いわけではない=価格による調整機能がない。参入の制限。
医師による誘発需要=過剰診療など不要な需要が作られる可能性。
医療では日本の給付水準が高いとは言えない。ヨーロッパの窓口負担は低い。イギリスはホスピスなど末期医療は無料が当然、ドイ -
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マルサスの「人口論」で予想された危機が、農業技術などのイノベーションにより回避されたことをモデルに、医療における高齢化や医療費増大といった危機を、イノベーションによって乗り越える、というのが本書の趣旨である。
要は質・コスト・アクセスすべてを現行制度のもとで維持することは不可能なので、どれを重視していくか、そのために患者や医療者サイドでどんな行動ができるか、ということを論じている。小手先の政策や技術でとりあえず延命するのではなく、判断材料を提示、もしくは各々が調べた上で、国民全体として医療に何を求めるか?について合意形成をしていく必要性を感じた。
Mayo Clinicには学生の頃に研修に -
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医療サービスの良し悪しであるが、日本人は国内の医療機関で受診する実感、マスコミなどが流す情報でしか、その満足度を判定するしか方法がない。
この本は、よく言われている日本人ほど自国の医療に不信感を持っている国民はいないという不幸な現実をなんとかしようと書かれたものである。
で、日本と海外との医療の比較をより客観的に示すために、具体的に6つの柱を立て、それぞれに3項目の指標を定め、計18項目の指標で比較を試みた。
①医療のレベル、②医療の身近さ、③薬への依存度、④医療費、⑤病院、⑥高齢化対策
医療制度というものは、国々によってありようも様々である。
「高自己負担・高医療型」(アメリカなど)
「低自 -
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まず最初に現在の政策課題を最初に挙げる。それから医療政策に関する学問の概説、諸外国との比較、医療政策に関係するプレイヤーとそのスタンス、それぞれの対立の内容と展開する。そして最後に、冒頭で提言された課題についての筆者の考え方が述べられている。
新書であるが、構成が非常にしっかりしている。諸外国との比較では、社会保障の背景知識が不足しているため、やや難解な印象を持った。それでも読むことで考えの幅を広げてくれる良著だと思う。
例えば、筆者の考えによると、後期高齢者医療制度は、分離独立方式であるため、地域では介護保険制度との統合を行いやすく、転職者が多い時代には適しているようだ。私は報道などで持 -
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著者は、医師であり、かつ経済学博士の学位を持っている。経済学をはじめ、いくつかの学問をベースに日本の医療政策入門としての整理を行い、日本の医療政策を分析し、提言をまとめている。本書の構成としては、日本の医療の歴史、医療政策を支える学問、諸外国のスタンスを概観した後、日本の医療政策のプレーヤーとそのスタンス、プレーヤーの対立点とその本質について論じ、最後にまとめと提言を行っている。
公衆衛生モデルと治療モデルの対比、自由主義モデルと社会民主主義モデルの対比、キュアモデル、ケアモデル、産業モデルの対比など、モデルを使った説明を多用しており、医療政策を考えるうえでの羅針盤となりうる内容になっている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本書では、我が国の医療政策や問題について、諸外国の医療制度の紹介も踏まえながら分析し、今後の方向性が提言されている。
本書を通して理解できたことは、日本の医療分野には多くのプレーヤーが存在し、各々の主張が異なるため、医療政策が混迷を深めているということである。ここで言うプレーヤーとは、医師であり患者であり、保険者である国である。財源を重要視し医療費の削減に踏み込むのか、医療費が増大してでも医療の高度化を進めるのか、あるいは医療をビジネスとして産業化していくのか、プレーヤーによってそのスタンスは異なる。その結果が、例えば混合診療の解禁問題に揺れている現実へ繋がっているのだという印象を受けた。
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