佐藤弘夫のレビュー一覧

  • 鎌倉仏教
    善行を積む、ということがイコール「寺への土地の寄進」を意味した平安末期において、「財を積むという努力する必要なし、他力でよい」と訴えたことが貧しい人々にどれほどインパクトがあったか、同時に、律令制が崩壊、公権力による鎮護国家仏教の庇護が縮小し、寺が自ら荘園を経営せざるを得なくなっていた時代に「寄進無...続きを読む
  • 日蓮「立正安国論」全訳注
    解説がなくても、現代語訳だけで十分理解可能だが、冒頭の全体的な解説や各節につけられた解説のおかげで、歴史的な背景も理解しつつ読み進めることができた。日蓮はとにかく浄土宗を諸悪の根元と考えており、本書を読むと、その勢いのすさまじさを実感できる。
  • 神国日本
    紙では絶版なのがあまりに残念。

    手垢のまみれた「神国日本」という概念を、文献を元に考察を加え、議論の土台を与えることに成功している。

    神国ならびにその一部である天皇について「右」も「左」も無知な人も必読の文献。

    ・P33.天皇号の採用は今日では、天武・持統朝説が定説。
    ・P44.の伊勢の神様の...続きを読む
  • 神国日本
    [ 内容 ]
    日本は神国である。
    ―誰もが耳にしたことのあるこの言説。
    しかし、われわれは、「神国日本」がいったい何を意味するのか、本当に知っているのだろうか?
    その展開を実証的にたどってみると意外な事実が見えてくる。
    たとえば、「ナショナリズム」を高揚させるイデオロギーと思われがちなこの思想も、中...続きを読む
  • 日本人と神
    期待以上に面白かった。論拠や展開が厳密に言えば曖昧なところもあった気がしたが、読み物としてはかなり楽しめる。ときどき心に刺さるような文章もあって、なかなか貴重な読書体験だった。
  • 春の消息
    柳さんと佐藤さんが東北の霊場を巡りながら対談していく様を、訪れた場所の写真や紹介文を交えながら載せています。
    近代以前は、生きている人たちと死者、そしてあらゆるカミが共存していた。でも、近代以降は生と死の間に明確な境界が引かれ、死は、生活の中で可能な限り触れたくないと思われるものに変容していった。
    ...続きを読む
  • 鎌倉仏教
    これまでの仏教研究の成果を踏まえて、著者が独自の解釈を加えて鎌倉仏教の祖師たちについて考察している。この本を読むと、鎌倉時代を民衆と友に生きた法然や、親鸞、日蓮のことを生き生きとしたイメージがわいてくる。

    宗教のクオリティは、その宗教を信奉する人の生き方によって変わる。
    自分がどう生きて行きたいの...続きを読む
  • 鎌倉仏教
    仏教が民衆支配の強力なイデオロギー装置として機能していた中世にあって、法然、日蓮の思想とそれを引き継ぐ弟子たちに権力に対峙できる信仰を見出すことができることを論証した本。好著。室町時代に至る記述も分かりやすい。

    ・〈選択〉主義を捨てて伝統仏教との融和を目指すという方向は,日蓮や道元の教団でも全く同...続きを読む
  • 神国日本
    2006年五月に起こった森喜朗首相(当時)の「神の国」発言は多くの批判を受け、今でも嘲笑の対象となっている。しかし日本の「神国思想」の歴史的、現代的実像を正しく把握している人間がどこまでいるのだろうか。
    「神の国」発言には天皇を存在を基盤とした選民思想(「天皇」と「ナショナリズム」)が垣間見えた。...続きを読む
  • 日本人と神
    古代から近代にいたるまでの、日本における宗教的世界観の変遷過程をえがき、それぞれの時代の特徴について考察をおこなっている本です。

    著者はまず、仏教と神道が入り混じっている日本の宗教のありかたを、「神仏習合」という概念でとらえることへの疑義を提出しています。「神仏習合」という概念は、仏教と神道をそれ...続きを読む
  • 鎌倉仏教
    1994年に刊行された、著者の鎌倉仏教にかんする解説書の文庫版です。

    いわゆる鎌倉新仏教による専修の主張は、民衆にとって荘園支配を支える仏神的なイデオロギーを否定する意義をもっていたと著者は論じています。こうした見方は、田川建三のイエス論を連想させる内容ですが、こうした視点からの研究は、いまではや...続きを読む
  • 神国日本
     日本のナショナリズムに関する議論をする上で、一つの大きな視座となる内容。

    この本の目的はあくまで「神国」というものの意味とその変遷を解き明かすことなのだが、内容はそれだけにとどまらない。必然的に天皇観や神道、日本における社会背景等の変遷にも時代ごとに言及しており、「神国」という一つの視点から体系...続きを読む
  • 神国日本
    しばし議論を巻き起こす「日本=神国」という理念。しかし我々はそもそもこの「神国」というものを正しく認識していると言い切れるだろうか。「神国」思想の変遷を当時の日本の社会構造、歴史、また当時の仏教などの関わりを踏まえた観点からたどったのが本書である。
    若干、同じフレーズが多く構造がくどい気がしないでも...続きを読む