佐藤弘夫のレビュー一覧

  • 鎌倉仏教

    匿名

    購入済み

    法然や親鸞、日蓮がメインで解説されてはいますが思想はそこそこにどちらかといえば彼らが新たな、そして革新的な思想を説いた時代背景とそれらの思想が民衆の間に広まった後にどのような意義を持ったか、を中心に記されています。思想を深く知りたいなら他の本でもいいかなと思いましたが、思想は時代背景と無縁では無いので、そういった面を知るにはうってつけかと思います。これを読んだ上で歎異抄を読んだらより深く理解できるかな。

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    2024年08月17日
  • 鎌倉仏教

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    善行を積む、ということがイコール「寺への土地の寄進」を意味した平安末期において、「財を積むという努力する必要なし、他力でよい」と訴えたことが貧しい人々にどれほどインパクトがあったか、同時に、律令制が崩壊、公権力による鎮護国家仏教の庇護が縮小し、寺が自ら荘園を経営せざるを得なくなっていた時代に「寄進無用」の考え方がどれほどの危険思想であったか、といったことがビビッドに伝わる。興味深い。

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    2019年01月05日
  • 日蓮「立正安国論」全訳注

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    解説がなくても、現代語訳だけで十分理解可能だが、冒頭の全体的な解説や各節につけられた解説のおかげで、歴史的な背景も理解しつつ読み進めることができた。日蓮はとにかく浄土宗を諸悪の根元と考えており、本書を読むと、その勢いのすさまじさを実感できる。

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    2016年02月12日
  • 神国日本

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    紙では絶版なのがあまりに残念。

    手垢のまみれた「神国日本」という概念を、文献を元に考察を加え、議論の土台を与えることに成功している。

    神国ならびにその一部である天皇について「右」も「左」も無知な人も必読の文献。

    ・P33.天皇号の採用は今日では、天武・持統朝説が定説。
    ・P44.の伊勢の神様の昇天と日蓮の神天上の法門の類似性。
    ・P084.アマテラスオオノカミを頂点とする強固で固定的な上下の序列が古代的な神々の世界であるとすれば、中性的なそれは横一線にしのぎを削る有力神が、仏教的な世界観に組み入れられ、その理念を紐帯としてゆるやかに結び会わされたものだった。P096.本地垂迹
    ・P095

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    2015年02月04日
  • 神国日本

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    [ 内容 ]
    日本は神国である。
    ―誰もが耳にしたことのあるこの言説。
    しかし、われわれは、「神国日本」がいったい何を意味するのか、本当に知っているのだろうか?
    その展開を実証的にたどってみると意外な事実が見えてくる。
    たとえば、「ナショナリズム」を高揚させるイデオロギーと思われがちなこの思想も、中世においては、必ずしも、他国に対する日本の優越を説くものではなかったのだ。
    その他、天皇・仏教的世界観など、さまざまな観点より、古代から中世、そして近世・近代に至る神国言説を読み解く。
    一千年の精神史。

    [ 目次 ]
    序章 神国思想・再考への道
    第1章 変動する神々の世界
    第2章 神と仏との交渉

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    2014年10月30日
  • 神国日本

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    小泉八雲が、いかに日本社会、日本文化、日本の歴史・伝統について深く研究したかを知ることができた。そして日本人である自分がちゃんと日本のことを理解できていないことを改めて自覚した。この本の内容は、日本人自身の日本論にも多くの点で引用されていることに気づいた。
    小泉八雲という人に改めて興味を持った。

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    2025年11月29日
  • 日本人と神

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    古代から近代にかけて、日本人がカミを捉えてきたか。
    宗教感は過去から変わらないものと無意識に捉えがちだが、古くから信じられていると思っている感覚も時代と共に変容を続けている。
    現代という時代に、改めてカミを考える必要性も感じた。

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    2024年12月14日
  • 日本人と神

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    期待以上に面白かった。論拠や展開が厳密に言えば曖昧なところもあった気がしたが、読み物としてはかなり楽しめる。ときどき心に刺さるような文章もあって、なかなか貴重な読書体験だった。

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    2022年06月14日
  • 春の消息

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    柳さんと佐藤さんが東北の霊場を巡りながら対談していく様を、訪れた場所の写真や紹介文を交えながら載せています。
    近代以前は、生きている人たちと死者、そしてあらゆるカミが共存していた。でも、近代以降は生と死の間に明確な境界が引かれ、死は、生活の中で可能な限り触れたくないと思われるものに変容していった。
    私たちが日常生きていく中で、引き受けずに済むならば直面したくないと思いがちな、死。でも、それは生の中に連続して置かれたものなのだと実感した。
    村上春樹とか、平野啓一郎の本の中でも同じようなことが書かれていたのを思い出した。

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    2018年01月03日
  • 鎌倉仏教

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    これまでの仏教研究の成果を踏まえて、著者が独自の解釈を加えて鎌倉仏教の祖師たちについて考察している。この本を読むと、鎌倉時代を民衆と友に生きた法然や、親鸞、日蓮のことを生き生きとしたイメージがわいてくる。

    宗教のクオリティは、その宗教を信奉する人の生き方によって変わる。
    自分がどう生きて行きたいのか真剣に考えるきっかけになる一書。

    「祖師の思想はいかに立派なものであっても、それ自体では何の意味もない。それは名も無き人々に受容され彼らの心に希望の灯をともして、はじめて宗教としての生命が吹き込まれる(P.18)」

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    2016年01月15日
  • 鎌倉仏教

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    仏教が民衆支配の強力なイデオロギー装置として機能していた中世にあって、法然、日蓮の思想とそれを引き継ぐ弟子たちに権力に対峙できる信仰を見出すことができることを論証した本。好著。室町時代に至る記述も分かりやすい。

    ・〈選択〉主義を捨てて伝統仏教との融和を目指すという方向は,日蓮や道元の教団でも全く同様であった。(真宗も)
    ・しかしその代償として、それらの宗派においては祖師にみられた理想主義や現実批判の精神が、しだいに色あせていったことも否定はできない。
    ・中性の農民には(江戸時代と違って)領主を選ぶ自由、移動の自由が保証されていた。
    ・その行動を客観的な立場からながめたとき、これらの在俗信徒こ

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    2015年09月14日
  • 神国日本

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    2006年五月に起こった森喜朗首相(当時)の「神の国」発言は多くの批判を受け、今でも嘲笑の対象となっている。しかし日本の「神国思想」の歴史的、現代的実像を正しく把握している人間がどこまでいるのだろうか。
    「神の国」発言には天皇を存在を基盤とした選民思想(「天皇」と「ナショナリズム」)が垣間見えた。しかしこの著書に沿って、日本の神国思想を歴史的実証的に見ていくと、国内外の多彩な思想との影響において様々な変遷をしてきたことが分かる。特に中世の特色として「現実世界に化現した神・仏・聖人への信仰を通じて、私たちはだれもが最終的には彼岸の理想世界に到達することができる」という「ナショナリズム」を越えた

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    2009年10月04日
  • 日蓮「立正安国論」全訳注

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    ネタバレ

    p26著者は「日蓮は最高位の国王は亀山天皇であるが、その下で実質的権力を握る地位(治天)が院=天皇の父から北條得宗に移行したと考えていた」「その転機は彼の誕生の前年の承久の乱である」天台宗が仏説の究極とした法華経は現実変革の志向が強い。国王=天皇と国主=執権との二重権力状態。第1段原文「国主国宰之徳政」あとの「国」はクニ構えに「民」となっているという。前は朝廷、後は関東幕府を指すか/四大教祖のうち日蓮だけが東国出身、武家政権への説得に「邪教で勝利祈願したから承久の乱で朝廷側は敗北した」とする/本書上書8年後、蒙古の国書が届き、朝廷は侮蔑的返答を作成したが、幕府は「黙殺」と決め、十七歳北条時宗を

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    2025年04月19日
  • 日本人と神

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    古代から近代にいたるまでの、日本における宗教的世界観の変遷過程をえがき、それぞれの時代の特徴について考察をおこなっている本です。

    著者はまず、仏教と神道が入り混じっている日本の宗教のありかたを、「神仏習合」という概念でとらえることへの疑義を提出しています。「神仏習合」という概念は、仏教と神道をそれぞれ独立した宗教と規定したうえで、その二つが混淆している状態を表わすものですが、著者は日本の宗教的世界観を「基本ソフト」とし、その上で仏教や神道という「応用ソフト」が成り立っているというモデルによって、日本人の信仰のありかたを解き明かそうとしています。

    著者自身も「あとがき」で、「タイトルから推測

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    2022年04月27日
  • 鎌倉仏教

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    1994年に刊行された、著者の鎌倉仏教にかんする解説書の文庫版です。

    いわゆる鎌倉新仏教による専修の主張は、民衆にとって荘園支配を支える仏神的なイデオロギーを否定する意義をもっていたと著者は論じています。こうした見方は、田川建三のイエス論を連想させる内容ですが、こうした視点からの研究は、いまではやや古びてしまったような印象もあります。

    著者自身もこのことは認識しており、文庫化にさいして付け加えられた補論のなかで、黒田俊雄や平雅行らの研究成果について触れられています。著者は、鎌倉仏教に「民衆性」といった要素を認める見かたがしりぞけられたのではなく、「鎌倉新仏教」の切り開いた新たな思想的地平に

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    2022年10月16日
  • 神国日本

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     日本のナショナリズムに関する議論をする上で、一つの大きな視座となる内容。

    この本の目的はあくまで「神国」というものの意味とその変遷を解き明かすことなのだが、内容はそれだけにとどまらない。必然的に天皇観や神道、日本における社会背景等の変遷にも時代ごとに言及しており、「神国」という一つの視点から体系的に“狭義”の日本史を纏めあげている。
     タイトルは一見物騒であるが、特に戦前日本中を跋扈した「神国」やそれを巡る思想の数々について極めて客観的に著者は記述している。正しい歴史認識を持つためにも、左な人こそ読むべきなものではないだろうか。

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    2011年03月25日
  • 神国日本

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    しばし議論を巻き起こす「日本=神国」という理念。しかし我々はそもそもこの「神国」というものを正しく認識していると言い切れるだろうか。「神国」思想の変遷を当時の日本の社会構造、歴史、また当時の仏教などの関わりを踏まえた観点からたどったのが本書である。
    若干、同じフレーズが多く構造がくどい気がしないでもないけれど一冊でとても濃い内容ではないだろうか。
    我々には近代で劇的な変化を遂げたものであっても、それが昔からそうであったかのように錯覚し、そのまま肯定するか否定するかの態度をとってしまう癖の様ながあるが、それはこの神国思想に限らず非常に残念なことであると思った。この本が広く読まれることを願う。

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    2010年10月16日