スウィフトのレビュー一覧
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ジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』は、一見すると奇想天外な冒険譚に過ぎない。しかし本書の真価は、啓蒙主義が称揚する「理性」の限界を、その内側から暴き出した点にある。本書は旅行記の形式を借りた哲学的寓話であり、同時に、近代的主体の解体の書でもある。
著者は「異世界」との邂逅を通じて、人間理性の相対性を暴露していく。これは単なる風刺ではない。むしろ、フーコーが『狂気の歴史』で描き出した「理性による狂気の排除」の過程を、逆説的に照射する試みとして読むことができる。
本書の批判的構造は、以下の三層において展開される:
1.スケールの相対化による理性批判
・小人国における「巨人の理性」の無力
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Posted by ブクログ
アニメPSYCHO-PASSで、槙島聖護の台詞に引用されていたので、興味を持ち、読んでみた。また、絵本のガリヴァー旅行記とどのように違うのかも気になり、この本を手に取ってみた。
最初、とても分厚かったので、萎えたが、折角だから読んでみようと思い、挑戦した。文体がダラダラといちいち長い印象を受けたが、言いたいこと(皮肉など)ははっきりと述べるところが面白かった。また、ガリヴァー旅行記といえば、小人の国という印象だったが、それは第1篇だけで、その後に、小人の国とは反対の、巨人の国や、「『天空の城ラピュタ』は、ここから来ているのか」という発見があったラピュータや、PSYCHO-PASSで出てきたバル -
Posted by ブクログ
小さい頃に読んだ絵本だが、覚えているのは小人に縛られて解放された後に、嵐の中で難破しそうな船を助けて感謝されるというもの。大きくなったらガリバーみたいになりたいと思っていたが、原作を読むと結末は全く異なる。ガリバーは小人の国だけでなく、巨人の国、科学者(宇宙人?)の国、馬の国にも流れ着いていて、その国の王や神官、政治家のような人たちと交わす会話には、人間の国に対する鋭い批判や自己嫌悪に満ちている。別の国の彼らから見て、人間はなぜ戦争を起こし、飽食と飢餓、嫉妬、差別、詐欺、殺人、浮気、子殺しなどを行うのかという指摘に答えに窮するところは、単なる絵本の原作にとどまらない書と感じた。
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Posted by ブクログ
17世紀英国、ジョナサン・スウィフトによる風刺小説。小人の国と巨人の国の話のみ、童話として知られている話だが、読んでみるとなかなか、時代を下っていても人間という現象の中に普遍的に潜む業のようなものが、子気味よく描かれていて、考えさせられもし、なかなか楽しかった。
ガリバーのバイタリティーに驚かされるが、英国紳士という背景から、道徳的に筋の通った現実主義者で、力のある立場でも、弱い立場でも信条は変わらない。風刺小説でありながらも、これだけ読まれ続けるのは、そのいやらしさがナマナマしくもあるけれど、想像力豊かに彩のある表現の衣をまとっているから、物語然としながらもちくりと刺さる、空想だと断じきれ