スティーヴン・ミルハウザーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ描写力がすごい。キャッチャー・イン・ザ・ライみたいな多くの人がぶち当たるある時期の感情のもつれとかとは違ってターニングポイントにすらならずに忘れ去られた子供時代をよくあそこまで表現できるなと思った。
----ここからネタバレ----
エドウィンが撃つフリして目を開けたことによって安堵するよりも伝記を書くためのプロットを完成させることを厭わなかったジェフかなりやばい
あと表向きには多くの人が忘れ去ってしまった子供時代の感性を忘れることなく保ち続けたエドウィンの人生と作品話なんだろうけど、ジェフがそこから外れることを許さなかったという感じがするんだよなぁ
ローズ・ドーンやアーノルドからの影響 -
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Posted by ブクログ
ある天才少年が、夭折した親友の少年の伝記を書いた、という体裁。更には、その著者たる少年もどうやら行方不明になっているらしき導入部分があるんだけど、そこを二重にしている意義はちょっと不明(自分的に、最後までそこが気になったんだから仕方ない)。それはともかく、書かれているのはほんの10歳ちょいまでの短い一生なんだけど、内容はとても濃密。ちょっと気難しそうで、何を考えているのかも分かりづらいマルハウスくんだけど、そのせいで素っ頓狂な行動に出てしまう場面も多く、結構にシリアスな人生ながら、思わず微笑ましくなる部分もちらほら。マルハウスくんを悩ませる脇キャラも個性的で、読んでて飽きさせられない。評判通り
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Posted by ブクログ
仕掛けが面白い。主人公つづった、親友にまつわる伝記がそのまま小説になっている。欧米の小説を読んでいて思うのは、「なぜこの語り手がこの話をするのか」の地固めが周到だ、ということ。マーガレット・アトウッドもそうだけど、大方の日本の作家のように「なんとなく一人称にしたかった」的な、ジャンルに寄っかかった書き方をしないところが、自立してていいなぁ、と思う。
ストーリーは、ダークサイド・スタンドバイミー、といった印象。
あるいは、月が月になろうとして、相手を自分の手で太陽にしてしまうような話。
神官が神官になろうとして、相手を自分の手で神にしてしまう、と言った方が近いのかな。
とにかく、そんな話。
わざ -
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Posted by ブクログ
ネタバレ初めは読みづらかったけど、後半になるにつれ止まらなくなった。
自分の子どもの頃の、湿った手のひらに匂い玉がくっつくことや額に張り付く髪の毛や、セーターが首にチクチク当たることや鼻水が出てくるのにティッシュもハンカチも持ってないと気付いたときのことや、そういった些細な、ネガティヴな記憶が蘇った。
終始熱に浮かされてるような感じ。訳者あとがきにもあるように、「天才作家」と呼びながらも実はこれっぽっちもそんな事思ってない主人公の自我が滲み出る仕組みになっている。
渦中ののシーンは、冗談で終わらせようとしてたのはエドウィンの方で、それを許さず天才作家の人生を完成させたかったのはジェフリーなのかなとか -
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Posted by ブクログ
#河出文庫 #ミルハウザー 著 「 #エドウィンマルハウス 」
ジェフリー著 の伝記「エドウィンマルハウス」を まるごと入れてしまう入れ子構造。「復刻版によせて」や「初版へのまえがき」も入れた遊び心のある構成
芸術家の人生が終わらなければ、芸術に結びつく 中間点や始点が定まらず、伝記作家は伝記が書けない一方で、芸術家を見出す伝記作家がいないと、芸術家が誕生しないという、芸術家と伝記作家の表裏一体性は なるほどと思う
著者は、子供の執着心に芸術性の萌芽を見出している
「何かに執着できる能力を天才と呼ぶ〜誰もかっては天才だった」
ジェフリー著の伝記は、予定調和的に出来事をプロットしていく狂 -
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Posted by ブクログ
11歳で夭折した天才作家エドウィン・マルハウス。
その伝記を親友であるジェフリーが記した。
という設定の物語。
主人公が少年で、わたしが女性であるからエドウィンやジェフリーの気持ちがよくわからないのかもしれない。
エドウィンが魅力を感じた物事に、記憶に残る少女だったわたしは特に興味も無かったように思う。
ジェフリーはエドウィンを天才と言うが、エドウィンが感性豊かな少年だとは思うものの、だから天才というのとも違うように思う。
こういうところがわたしの平凡さなのかもしれない。
エドウィンが気に入った子の影響を受けすぎるところも自分に重ねられない。
好きになったローズやアーノルドに影響されるエ