森元斎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ちょい軽めのバイブスで語られるアナキズム・アベンジャーズ(わたしはクロポトキン、ルクリュ推し)
世界がまたも軍事による緊張状態にある中、いまこそ読むべきタイミングだと思って手に取りました。プルードン、バクーニン、クロポトキン、ルクリュ、マフノ。これら19世紀から20世紀のアナキストたちがいかにして権威に反抗し、自律した社会をめざしたかを紹介した本です。聖人、暴れん坊、変わり者など各々のキャラクターも色とりどり、推し活できそうなほど役者が揃っています。
『アナキズム入門』というタイトルや、ちくま新書のレーベルイメージから感じるようなお硬さはまったくありません。とてもくだけた文体で読みやすかったです。どれくらいくだけているかというと〝なんか、ムカつく〟が平気で出てくるくらいカジュアル。いい意味でとても軽々しいです。ノリで歌の歌詞を文中にぶっこんだり(ディアンジェロ、Suchmos、ゆらゆら帝国など)、時に博多弁まじりだったりとおふざけもしばしば。
クセ強な文体ですが、わたしは好感が持てました。著者は文章からも権威的な堅苦しさを抜きさることで、文体も含めてまるごとアナキストであろうとしているかのように感じたからです。語りかけるようであり、かつ詩的なバイブスを感じます。
しかし、だからこそこの手の文体は怖いとも思います。初心者に寄りそうような親しみやすさの裏側で、危険な魅力に満ちているので、プロパガンダ的にコロッと影響されてしまいかねないのです。実際にこの本は、読者との距離をガンガンに詰めてこようとする著者のエネルギーを感じます。こちらのガードが追いつかず、心の芯を右ストレートで打ち抜かれてしまいかねない。もしわたしが10〜20代でこの本を読んだら、1Rノックアウトで著者に心酔しただろうな、とすら思いました。
著者が繰り出すキラーフレーズもたくさん。
〝当たり前のことを、制度でできなくさせて、考えないで済むようにしむけ、しかし金だけは吸いつくし、国家だけが肥える〟
〝本当はみんなアナキスト〟
〝私たちは虫である、動物である、人間である、自然である。ただ生きている。生そのもののあり方、それがアナルコ・コミュニズム〟
etc、etc…
著者が放つ軽妙で快活なエネルギーは、やばいです。人たらしなんだろうなあ。究極の助け合いを目指すアナキストたるもの、人たらしでないやっていけないかもなあ、なんて思いました。
自然であることこそ、アナキズムだという考えにはうなずくものがありました。アナキズムは自然、そういう意味ではナチュラリズムとも結びつきます。国というシステムは、地球が用意したものではありません。人間が作り上げた概念です。地に足をつける。自分が触れているこの大地は「国土」ではない、本来はただただ大いなる自然である大地だった。国があることが当たり前すぎて、国がない生活というものを具体的に思い浮かべることが、今のわたしにとっては難しいですが、動物の社会や未開地域の人々の社会が想像のヒントになりえます。
人類史上はじめての革命であるフランス革命、そしてロシア革命へと続く権威をひっくり返した革命の歴史を知ることができましたし、文化人類学や地理学とも密接な関係にあるアナキズムのその根本的な考えも学べて、いい読書になりました。見返りをもとめないまま与える〝互酬性のない贈与の関係〟、わたしもチャレンジしていきたいと思います。まずは第一歩、飲食店のトイレでペーパーが切れそうになったら積極的に新しいペーパーを用意しよう、とか(笑)。資本主義のせいでケチがうまれ、助け合うことができなくなるから、お金も心もケチになってしまわないように、とか。
武装、戦闘による革命をわたしは望みません。なんの因果か、SNSのタイムラインで流れてきた、いとうせいこうが先日ライブで放ったこの言葉を最後に。
「戦争反対!革命上等!非暴力上等!」 -
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白いじゃん!
所謂僕らが想像する『暴力』とは分けて考えておいた方が良いけど,思想として,ワクワクするじゃないか!Rockだねぇ!
そして,所謂正統派のcommunismって,Anarchismとすごく近いところにいるんだなぁって言うかそうだと思ってたの,Anarchismだったんじゃん?と.
ソ連や中国の「共産党」という名のクソみたいな紛い物の悪魔にとんでもないクソイメージを世界中にばら撒かれて,アメリカはじめ資本主義のクソ野郎共に拡大再生産され続けた結果,今や見る影もない,死に体の,いや,お前はすでに死んでいる状態のcommunismは,地べたのAnarchismに変装して生き続けているってことなのかねぇ?
誰かに手を差し伸べること,差し伸べざるを得ない心,それこそが社会の「基本」であるって考えたら,もっと人は繋がれるし,闘えるんじゃないかと,そんな清々しいまでの青臭い情熱が蘇ったりして,久しぶりにスカッとした気分で眠れるわ! -
Posted by ブクログ
ネタバレ大変おもしろく読んだ。
端的に言って「否定すべき暴力と、肯定せざるを得ない暴力がある」というのが本書の主張である。
その通りだ。その通りであるのだが、ここには重要な前置きが必要である。それは主にヒエラルキーの話だ。ヒエラルキーの上からの暴力と、下からの暴力では、その意味合いはまったく異なる。
また、「国家対国家」というレイヤーにこの暴力論を当てはめるのも大変危険である。それはともすれば、軍拡競争につながるからだ。
著者の専門はアナキズム。そう言われれば、本書における暴力の目線がわかるだろう。権力への抵抗である。非暴力を貫いた先に民衆の破滅があるのなら、一時的に、限定的にでも暴力を扱う、あるいはちらつかせる必要に迫られる。それは本書で紹介されるアパルトヘイト撤廃への道のりの例が大変わかりやすい。
当初、マンデラたちは非暴力で訴えるが、どれだけ言っても抵抗しても何も変わらない。しかしその間も、人種差別という暴力がやむことはないのだ。ヒエラルキー上位からの暴力が常態化している。それを当たり前のことと強制される。ならばどうするか、非暴力を貫いて殺されるのか。そんなことはできない、びびらせてやるしかない。
翻って、現代日本で行われるデモは、権力者たちをびびらせられているのだろうか?と著者は疑問を抱く。実際、びびらせられてなんていないだろう。もちろん無意味とは言わないが、実効的とも言えない。
私たち民衆は、個人としては人に優しく非暴力的である方がよい、と個人的には思う。
しかし、ヒエラルキーとその上位者たちによる暴力(法律、警察、税金)を考えた時、優しく非暴力の態度だけでは足りない場合があるだろう。それは言ってしまえば「聞き分けのいい、都合のいい弱者」になりかねない。
難しい。
暴力の必要性はおおいに納得できたが、これにかこつけて、日本も核爆弾持つしかない、なんて意見を助長されたとしたら困る。当然本書の著者がそんなことを微塵も考えていないのはわかるが、「かこつける人たち」はきっといる。そこに対しては、毅然とした態度で向き合うしかない。難しい問題に対し、単純な解法を当てはめてはいけない。難しい問題を難しいままに扱うこと、個別の問題を個別のままに扱うこと、そういった面倒なやり方をするしかない。そこを横着してしまうと、悲惨な目に遭う。かといって放置しても、ヒエラルキー上位からの暴力は止まない。
本書の内容とはズレるが、権力者あるいはヒエラルキー上位の視点に立つなら、「ヒエラルキー下位のものたちに、暴力を受けていると認識させない」ことが重要になるだろう。当たり前なんだよと認識させる。それどころか、「私たちに非があるから」「弱肉強食だから」「効率的だから」、仕方ないよねと被差別者/社会的弱者たちが自発的に思ってしまうような社会構造を作ってしまえばいいのだ。
それが、今の日本である程度成功してしまっていることは、いうまでもない。 -
Posted by ブクログ
アナキズムの入門書としてまとまっていると思いました。
やっぱりグレーバーの影響力って大きいですね。亡くなったのがとても残念。
まずは誰のために「働いている」のかってところを再考すべきだと思うのですが、皆さんあんまり疑問を持っておられないようで・・ 資本主義は生き残りのためにますます一極集中に邁進し、人々に負債を押しつけて搾取を続けていくのでしょう。子ども食堂のような相互扶助のシステムを評価しているようなふりをしながら、それらがコミュニティーセンターとして機能するようになれば潰しにかかるかもしれません。いかにして地方に分散した拠点を作るか、ですかね。 -
Posted by ブクログ
暴力反対!
非暴力以外は認めない!と短絡的に考えてしまう方は、プーチンのウクライナ侵攻を止めるために、国家と国民を差し出せば良いと考えているのだろうか?
暴力とは何か?
一般論として、いまは腕力により他者に害をなすことだけが暴力だと考えている人は少ないと思う。
でも、短絡的に暴力は良くないと考える人は多いような気がする。
プーチンの侵攻に対して闘う武力の行使は、暴力なのか?
イスラエルのガザ侵攻は、暴力なのか?
国による国民財産の強制的な剥奪(税ともいう)はどうか?など、現実問題として人類の歴史の中で綿々と続く暴力について、歴史、過去の議論を踏まえ考察する。
暴力反対と安易に考える人は、暴力とは何かをまず考えるべきだと思う。