小笠原泰のレビュー一覧
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現状の社会保障制度は、経済成長の神風待望論に依存するだけで、現実を直視していない。
超高齢化社会の進展により、今の社会保障制度は破綻する。
現実を直視し、小手先の立て直しではない、中長期的な改革が必要である。
高度経済成長期の原動力は、人口増加や都市への人口流入、円高基調などの条件が整っていたが、その後、前提が変わってしまった。
その中で、持続的経済成長を夢見ているだけ。
社会保障制度の問題の解は、この国の成り立ちの根本にまで踏み込み、国家観の大きな転換を踏まえたドラスティックなグランドデザインの見直しを行う必要がある。
現行の年金制度をいったん精算し・新たなナショナルミニマム国家を目指 -
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前半2章は、人口動態的に縮小均衡が不可避なのにシルバー・ポピュリズムにおもねく政治と、応分負担を考えずに「くれくれ・金持ちが払えばいいじゃん」的な国民により、この国の没落は確定事項であるという論。とことんデータで理詰めに駄目出しがされる。第3章は欧州各国・米国・中韓の観察。著者はマッキンゼー→VW→かーギルというキャリアの中でこれらの国で実際に居住していた経験があり説得力あり。第4〜6章は処方箋。縮小均衡いいじゃんか、という個人レベルの気持ち論だけでなく、税制・社会制度の提言も。特に、年金制度の再設計に関しては、明確かつわかりやすい。介護・医療費の受益分を社会保障口座で管理しておき、死亡時に資
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グローバル化が、インターネットに媒介されるように、国境に代表される様々な境界線を、ヒト、モノ、カネが超える《脱国境化》の現象と、それによって更に際立つ民族、共同体、伝統などが見直される《地域性の再評価》の現象が同時に起こるものだとするならば、前者のみに力点を置くような対応の仕方では不十分である。後者への対応を、ナショナリズムや排外主義に陥らないようにハンドリングすることを同時に行わなければならないはずだ。
最近になって、「グローカル(glocal)」なる言葉が一般化したように、不十分ながら、ようやく後者へのクローズアップがなされるようになってはきている。ただし、まだ「グローバル化に対応でき -
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ネタバレ強烈な本です。
年金問題を取り上げた記事はよく見かけますが、この本では、超高齢化・人口減少社会となる日本がどのような姿になるかを予想します。節目でいうと、団塊の世代が後期高齢者になる2030年、団塊ジュニアが後期高齢者になる2050年(老齢者割合のピーク)、人口構成が安定する2080年。
1.年金 受給年齢を75歳に引き上げても現在ある積立金は2030年、早ければ2020年代後半には枯渇する。
2.介護保険 現状でも半額は国と地方公共団体が負担しているが老齢者の絶対数の増加により現在の公的部門の負担額は7.9兆円から19兆円まで増加。
3.生活保護 このあと、資産形成できずに -
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題名からは軽い読み物という印象を受けるかも知れないが、実は本格的な日本文化論だ。これまでの日本論の成果を受け継ぎながらも新しい切り口で日本語や日本人を論じていてとても面白かった。
欧米人にとって個人は、自立的でその主体性はいわば絶対視される。IとYouは相互排他的に独立している。日本人にとっては、個人に優先する「場」が存在し、「場」が個人を超えた優越性や自発性をもつことがある。
以上は、よくいわれることだが、著者はこの違いを日本語と欧米語の構造の違いにも触れながら、説得力をもって明らかにする。また、このような自我構造の違いを、どちらが優れていてどちらが劣っているという見方をせず、文化の違い -
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日本人、日本社会の特性を紹介し、新しい時代にふさわしい「日本人3.0」になるための心構えを説いた一冊。
このような日本人論・日本社会論というのは、いろいろな著者が独自の考察をされているので、興味深いのですが、本書も刺激的な内容でした。
タイトルである「日本人3.0」について、冒頭でこのように述べています。
○「日本人3.0になる」とは、今後も続く変化の激しい不確実な環境に適応して、個人の多様性と個性を前提に、自らの進むレールを敷いて、自己投資を通して自分を成長させ、変化の荒波を泳ぎ切ること
○その結果として、「今後の激しい変化を生き抜けること」と「社会の進歩のエンジンになること」が、「日本人 -
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十数年前、日本人論に関する書籍をいろいろと読み漁っていた時期に手にした本書を、2020年の新型コロナ禍の混迷期においてあえて再読してみた。
世界規模で生じたパンデミックにより、国内においても「新しい生活様式」や「New Normal」が謳われる中、改めて日本人としてこれからの社会を生きていくためにはどうすれば良いのかを自粛期間中に再考したかったからである。
また、郵政民営化に代表される構造改革や規制緩和が実施され、グローバリゼーションが声高に叫ばれた小泉内閣後期に書かれた本書を、2010年代から各国で台頭したナショナリズムを経た2020年現在にて検証してみたいという想いもあった。
筆者の小 -
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ネタバレ著者の「なんとなく、日本人」が非常に面白かったので、その流れで読んでみました。
意外にも今の政治・経済状況を批判してラディカルな解決策を提示する本でびっくり。体裁(1ページあたりの文字数や太字の活用等)を見ても、たくさんの人に読んでもらおうとして書いた本なのでしょう。
今の高齢者福祉重視の「シルバー民主主義」では、高齢者に現役・将来世代が食いつぶされてしまうと警鐘を鳴らし、じゃあどうすればいいのか?を具体的な策で述べたものです。
いくつかあんま納得できないもの(例えば、公職定年の引き下げは、天下りや傀儡政治を生むだけではという気がします)もありますが、どれもがロジカルに導かれていて納得感はあ -
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社会保障制度の将来の危機を予測し警鐘を鳴らしている。将来を予想することは難しいが、人口動態からの予測は確実におこる未来で、真剣に耳を傾ける必要があると考えている。この本では、最初に人口減少と高齢化比率の高まりで日本のGDPは縮小する方向にあり、持続的な経済成長はないと断じている。一方で、現在の年金などの社会保障の維持には持続的経済成長が必要で、根本的に思想を変える必要があると説いている。現在のアベノミクスでも、経済成長が先で抜本的な改革は後回しにするという歴代の政権と方向性は同じと言え、将来に禍根を残す可能性が高まったと感じる。
団塊ジュニア世代が後期高齢期(75歳以上)を迎える2050年の姿 -
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長期的に見て、国内の労働者は、付加価値を生み出せる一握りの労働者と超単純作業を行う労働者に二分される可能性がある
我が国のGDPの長期的な縮小傾向は避けられない
2050年に4割減小し、一人あたり実質GDPは2割減少
為政者のみならず、我々国民が「最善を期待するのではなく、最悪を想定する」姿勢を持つ
ハイパーインフレ(45−49年で物価が98倍)
2050年 団塊ジュニアの4−7割が基礎的支出を賄えないレベルの貧困状態
積立金の枯渇 厚生年金2020年代後半 国民年金で2030年
このままでは社会保障のみならず、日本社会の機能不全が近い
今我々国民に求められるのは、現実可能のほとんどない「持続 -
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「日本的なるもの」は、「西欧的なるもの」のごとき「リンゴの芯」ではなく、「ぶどうの房の一粒一粒」にあるのであり、一粒一粒をとっていってもリンゴの芯のようなものは出てこない。また、房についた粒をひとつひとつ見ても「日本的なるもの」の総体は、わからない。26
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卑近な例で申し上げれば、ルパン三世が日本人そのものであって、日本的と位置づけられる石川五右衛門と銭形警部は、日本通といわれる欧米人が好む幻想でしかない。ルパン三世のもつ持続性と変容性という相矛盾する性向の結合は、いか