小宮豊隆のレビュー一覧
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愛弟子による評伝、中巻です。
熊本の第五高等学校で教鞭をとっていた漱石は、二年間の英国留学の辞令が出て、ロンドンへ。そして『文学論』の執筆、一度目の神経衰弱、帰国(出発直前に子規の訃報)、二度目の神経衰弱、『吾輩は猫である』の誕生、『倫敦塔』、『幻影の盾』、『薤露行』など短篇の執筆、『坊ちゃん』、『草枕』、『二百十日』の執筆、朝日新聞へ入社、そこで『虞美人草』を執筆、という流れです。
私生活では、妻鏡子が一度流産するも、2年後には長女筆子が誕生し、ロンドンへ発った1年後に次女恒子が誕生、帰国後には三女の栄子が生まれています。
いやはや、漱石が一番大変な思いをした時期だったのではないでしょ -
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漱石に接した人間は多く回想の文章を書いているが、本書は一番弟子とも言うべき小宮豊隆の師漱石をはじめ、寅彦、三重吉、松根東洋城、安倍能成、森田草平等についての回想の文章を収めたもの。
本書を始め弟子たちの文章からは、いろいろ忙しいにもかかわらず面倒見の良い漱石と、それに甘える弟子たちとの子弟関係が良く分かるが、それにしてもこれだけ弟子たちから慕われた漱石の偉大さと言うものを改めて感じた。
もっとも印象に残ったのは、巻頭の「休息している漱石」の中の文章で、「今から考えると、私たちはどうしてあんなに先生の邪魔計りしていたのかと慚愧に堪えない。」との弁。おっしゃる通りとは思いつつ、それだけの時 -
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漱石の門下生であり研究者でもある小宮豊隆氏による評伝、下巻です。
上巻の感想に書いたように、本作は漱石の作品よりも生活に的を絞って書かれているとのことでしたが、下巻はほとんど作品の解説と言ってもいいくらい、漱石の生活を背景にして、『坑夫』、『三四郎』、『それから』、『門』、『彼岸過迄』、『行人』、『こころ』、『硝子戸の中』、『道草』、『明暗』といった作品それぞれについてたっぷり語られています。
これらの執筆の合間に、漱石は、満韓旅行へ出かけ、『朝日新聞』の文芸欄をめぐる問題や胃潰瘍に悩まされ、修善寺で危篤状態に陥ったのち、則天去私の心境に至り、そしてついに死を迎えます。
小宮氏もそこに -
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〈漱石を敬愛すること誰よりも厚かった愛弟子〉による評伝です。
執筆に際し〈冷静な客観的な態度〉を心がけたと「第一版序」に述べられていますが、読んでみると漱石への尊敬の眼差しがそこかしこに感じられます。でもだからこそ弟子になったわけで、その敬愛の念を排除できなくて当然。愛弟子の目から見た夏目漱石という人に興味があるので、私はそこはほほえましく受けとめて読んでいます。
岩波書店から刊行された『漱石全集』の全巻解説を小宮氏が書いたことにより、そちらとの重複を避けるため、本評伝では漱石の作品よりも生活に的を絞って書かれたとのこと。とはいえその生活における出来事や心情などが、漱石の多くの著作の中で記