【感想・ネタバレ】夏目漱石 中のレビュー

あらすじ

漱石を敬愛することだれよりも厚かった愛弟子が師の「動的な生活を動的に把握」しようとこころざして書きあげた初の本格評伝。作品はもとより各種の資料を駆使して漱石の出自から死までを細緻にあとづけ、のちの漱石研究にはかり知れぬ影響をあたえた。「系図」から「死」まで全部で七十三章から成る。 (解説 平岡敏夫)

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Posted by ブクログ

漱石が神経衰弱になったときの家族は悲惨であったろう。このように漱石が荒れ狂うのは、漱石の生まれてから幼少期までの原体験がそうさせるのではないだろうか。

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2012年06月05日

Posted by ブクログ

愛弟子による評伝、中巻です。

熊本の第五高等学校で教鞭をとっていた漱石は、二年間の英国留学の辞令が出て、ロンドンへ。そして『文学論』の執筆、一度目の神経衰弱、帰国(出発直前に子規の訃報)、二度目の神経衰弱、『吾輩は猫である』の誕生、『倫敦塔』、『幻影の盾』、『薤露行』など短篇の執筆、『坊ちゃん』、『草枕』、『二百十日』の執筆、朝日新聞へ入社、そこで『虞美人草』を執筆、という流れです。

私生活では、妻鏡子が一度流産するも、2年後には長女筆子が誕生し、ロンドンへ発った1年後に次女恒子が誕生、帰国後には三女の栄子が生まれています。

いやはや、漱石が一番大変な思いをした時期だったのではないでしょうか。なかなか自分の思うように動けず、世間、周囲、仕事などへの不満がつのり、イライラピリピリすることが多くなっています。

でも褒められるとやはりうれしいらしく、山県五十雄への手紙では、〈小生の文章を二、三行でも読んでくれる人があればありがたく思います。面白いという人があれば嬉しいと思います。敬服するなどという人がもしあれば非常な愉快を覚えます。この愉快はマニラの富にあたったより、大学者だといわれるより、教授や博士になったより遥かに愉快です〉なんて、すごくうれしそう。

これまで、夏目漱石というと、あの有名な写真が思い浮かび、気難しそうにいつも思い悩んでいるようなイメージでしたが、本書を読んでみると、愉快と不愉快を行ったり来たりしている、とても人間的な漱石さんが立ち現れました。著者が漱石と散歩したときの思い出も、この本ならではのエピソードです。

中巻では、小宮氏が漱石の弟子として直接見聞きしたことが多く語られます。また同時に、これは上巻からずっとそうですが、日記や書簡など多くの資料をもとに書かれており、よくここまで資料を集めて調べてくれたと関心するばかりです。おかげで、ロンドン留学以降の経緯は、まさしく〈漱石が漱石になるための、必要な過程だった〉ことがよくわかりました。

では、いよいよ下巻へまいります。

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2023年07月29日

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