ピーター トライアスのレビュー一覧
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敵がナチスなら軍国日本はまだましってことか、とくに皇国の正義のためにつくそうとする誠の目からすると、USJの体制がいかに抑圧的かはところどころに垣間見えるだけである。
誠の同級生で優等生のお嬢様、しかしものすごく腕のいいパイロット橘範子が「ですわ」で喋り、誠と警備会社の厳しい訓練を耐え抜く烈女パイロット千衛子(苗字はないみたい)は男っぱくまくし立て、前作で登場した天才的女性パイロット久地樂(くじら)の息子・同名の久地樂は母と同様、のらくらと関西弁。見事にアニメ風の登場人物であるし、翻訳もその辺はあざとく訳している。ドイツからの交換留学生で誠が思いを寄せるグリゼルダがこの体制に疑問を差し挟ませる重要な役柄となるが、本作では皇国のため、ナチスのバイオメカをやっつけろという話で押していく。
誠ら士官候補生は、ドイツから亡命したギュンター博士の指導の下、バイオメカに互する性能を持ったリバイアサン級メカの実験に参画するが、そこにナチスの攻撃が……という展開。続編の予告あり。前作同様、新ハヤカワSFシリーズ1巻本と、文庫上下との同時発売。 -
Posted by ブクログ
『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』の続編。続編といっても直接話が繋がるというのではなく、同じ世界設定のもとでの、数年後の別の話である。それにしてもこのあまりにキッチュなタイトル。
第二次世界大戦で日独が勝った世界、アメリカは東側がナチスに支配され、西側が大日本帝国の領地となっており、日本合衆国(USJ)と呼ばれている。日本とナチスは一応は同盟国ながら、いまや世界を二分する敵対勢力であり、一触即発の様相を帯びている。さらにUSJではアメリカ人レジスタンスがナチスと手を組みつつテロ活動をしている。世界の主たる兵器はメカ。二足歩行の巨大ロボットである。そんな1994年。
一人称で語られる主人公、不二本誠は軍人の両親を戦争で亡くし、養父母のもとでつらい生活を送ってきたが、メカ・パイロットとなることを夢見ている。でも学校の成績は悪く、すんなりと士官学校に行けそうもない。そこで実技でなんとか状況打開しようとするが……。
天皇陛下のもと皇国が正義、ナチスが敵という世界観のもと、メカ・パイロットを目指す主人公の物語は巨大ロボット・アニメみたいなストーリーだ。ゲーム好きのだらしない高校生が皇国兵士として成長していく物語は、抑圧的な体制に疑問も抱かずに兵士として階級を上がっていくハインラインの『宇宙の戦士』を思い出す。
士官学校に入学できなかった誠は民間のメカ警備会社に就職し、そこで厳しい訓練に耐えて、メカ・パイロットとなり、警備の仕事で、テロリストに力を貸すナチスのバイオメカとの戦闘に巻き込まれる。USJがバイオメカと事を構えるのはこれがはじめてで、その圧倒的な力に皇国メカはやられてしまうのだが、誠は警備会社の多足メカでもって将校を助けつつ、何とか生き延び、その功績でバークリー陸軍士官学校でメカパイロットをめざす道が開けるというところまでが上巻。
バイオメカはメカの表皮に高い再生力を持った生体素材を用いたメカで、外皮は生物なので見た目は怪獣のようになるわけで、絵としてはカバーのようである。つまり、まるで『パシフィック・リム』。 -
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陸軍検閲局大尉・石村紅功,通称ベンと特高課員・槻野昭子(作者的にはこっちが主人公らしい)は憲兵に追われる身となる。非合法ゲーム『USA』を制作し、アメリカ人レジスタンスの手助けをしているらしい六浦賀将軍の首級を挙げてこの窮地を脱することを目指す。向かう先はレジスタンスと激しい戦闘がなされ壊滅状態にあるサンディエゴ。
片腕マシンガンガール、命がけのゲーム対戦、巨大ロボ「メカ」戦、キッチュな展開が実に大まじめに進むところがすごい。
大日本帝国治下のアメリカはディストピアには違いなく、ところどころで滅びてしまったアメリカの「自由」の理念が語られるが、そのアメリカも日系人を強制収容所で人権蹂躙したことはプロローグで触れられているほか、理念と現実の解離はしっかり見定められている。他方、大日本帝国の掲げた理想にも言及され、USJの世界とUSAの世界は徹底して相対化されたある種の公平さに作者のアメリカのアジア人という位置をみる。
作者もディックと自己の資質の違いに言及しているようだが、確とした価値観がいまだあるなかで現実の崩壊を描いたディックに対して、もはや1つの世界ではなくなってしまった現代におけるディック的世界を楽しむのもよかろう。 -
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第二次世界大戦で日独が勝った世界。ディックの『高い城の男』の設定を頂いて、新たな物語を紡ぐ。作者は日本文化びいきの韓国系アメリカ人。ティエリャスと読みたくなる名前だが、本人がトライアスといっているようだ。
アメリカは東側がドイツに支配され、西側が大日本帝国の領地となっている。それは『高い城の男』と同様だが、本書ではこれがユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパンと呼ばれている。略してUSJ、ええと大阪にそのようなものがなかったっけか。
日本がアメリカに勝つためには戦前の天皇制にかこつけた無責任体制がどうにか変わっていなければ無理じゃないかと思うのだが、この世界の日本はむやみと戦端を拡大せず、まずはドイツとともにソ連を攻略し、それから開戦。原子魚雷を3発お見舞いしてアメリカを降伏させるのが1948年。大日本帝国軍による日系人収容所開放から話が始まる。
主人公の石村紅功は日本軍の検閲官。ベニコという名は女の子の名をそのまま付けられてしまった。愛称ベン。物語の主たる時代は1988年。戦後、40年である。
大日本帝国が残ったわけだから、当然軍事国家であり、ベトナムで戦争したり、アフガニスタンでナチスと衝突したりしている。アメリカが戦争で勝ったなら、きっともっと平和な世界となっていたことだろう、あれ? という皮肉が効いている。テクノロジーは相当に進んでおり、スマホならぬ多機能の「電卓」が情報端末で、「機界」に接続して使用する。さらには軍の巨大ロボット兵器である「メカ」が登場するあたりが、帯に書いてある『高い城の男』+『パシフィック・リム』の謂いである。怪獣は出てこないようだが。
ベンはこちらの言葉でいえば優秀なハッカーだが、軍人としては勤務態度が悪く、昇進も遅れている。かつての上司である六浦賀将軍が姿を消し、大戦でアメリカが勝ったという設定の非合法ゲーム『USA』を作ったらしいということで、特高の槻野昭子が捜査に現れる。昭子は天皇に忠誠を誓ったファナティックな捜査官でその捜査といったらダーティハリーか、昨今のすぐに黒人を撃ち殺す警官の如し。これも皮肉が効いているとみるべきか。
現人神を頂点とした日本の支配を賛美しているわけではないが、さりとて、アメリカの支配する別の現実も賞賛できない書きっぷりがディックとの時代の違いを感じさせる。USJは悪夢的な世界だが、それはこちらの現実と同じくらいに悪夢的なのだ。
ハヤカワSFシリーズで出ると思っていたら、文庫が出ていたので買ってしまったが、なんと同時発売。
特高だけでなく憲兵が現れるわ、アメリカ人テロ組織ジョージ・ワシントン団が登場するわ、話がどういう方向に進むのかまるでわからない。 -
Posted by ブクログ
"本の帯にもあるように、話の流れはフィリップ・K・ディックさんの「高い城の男」を思い出さずにはいられない。どちらも、第二次世界大戦で枢軸国(日独伊)が勝った世界に住む人の物語だ。どちらも、あまり自由はなく統制された社会を描いている。その世界の中で、高い城の男では、もしも連合国が勝ったであればという内容の発禁本が登場する。
本作品では、USJという日本がアメリカを統治した国が舞台で、USAというゲームが登場する。もしも、アメリカ合衆国が戦争に勝っていたらというゲームが。
本書のユニークなところは、USJでは巨大なロボットが戦う道具として存在しており、その戦闘シーンも見せ場のひとつになっている。
上巻は退屈したが、下巻は楽しめた。"