佐藤卓己のレビュー一覧

  • 言論統制 増補版 情報官・鈴木庫三と教育の国防国家

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    この本を読んでいる間に参議院の選挙がありました。選挙期間中、そして選挙結果に覚える心のざわめきと本書の描く昭和になる前後から日中戦争、太平洋戦争に突入までの社会の空気がなにかシンクロしているようで非常に強い読書体験になりました。トマ・ピケティ「21世紀の資本」を読んだ時、戦争が社会格差を解消するイベントである、という指摘に動揺したを覚えています。本書を読んで戦争だけでなく軍隊も階層格差を平準化を可能にする装置として存在していたのだと感じました。第一章の始めに記載された松本清張「紙の塵ー回想的自叙伝」の「ここにくれば、社会的な地位も、貧富も、年齢の差も全く帳消しである。みんなが同じレベルだ」とい

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    2025年07月27日
  • メディア論の名著30

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    メディア論の端緒に触発され手にとって見ると、比較的近代に発した学問領域とはいえ名著たる学識は本著で紹介されているものだけでもこれほどの広がりを見せているのだと興味を深めた。

    再読。

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    2023年09月10日
  • 流言のメディア史

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    久しぶりにメディア史関連の本を読んだ気がするが、随所で目からうろこが落ちる思いをし、非常に面白かった。「流言」という素材は、社会史やメディア史ではちょいちょい扱われているものであるが、そうした流言研究史をきちんと批判的に摂取し、新たな分析を加えている。

    構成は全9章プラス「はじめに」と「おわりにかえて」。1章から9章までそれぞれ具体的な「流言」が扱われている。簡単に紹介しておくと、第1章が有名な火星人襲来の話。第2章は、関東大震災時の流言。第3章が「キャッスル事件」、第4章が二・二六事件、第5章が「造言飛語」、第6章が従軍慰安婦問題などから「歴史のメディア化」が論じられ、第7章は(反体制では

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    2022年05月12日
  • メディア論の名著30

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    「現代メディア史」あたりから続けて「『キング』の時代」「天下無敵のメディア人間」と著者の本を楽しんできました。この新書は佐藤卓己がいかにしてメディア史研究の第一人者になったか?というそのパーソナルヒストリーでもあります。大澤真幸の「社会学史」の序文に「社会学の歴史はそれ自体が社会学になる。そこに社会学という学問の特徴があるわけです。」という記述がありますが、メディア論も同じようにメディア論の歴史がメディア論を形成していると思いました。なので佐藤卓己の個人の読書の歴史であると同時にメディアという概念がどんな本を書かせてきたか、というジャンルのヒストリーでもあります。ここに挙げられている本を全部読

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    2021年03月29日
  • メディア論の名著30

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    どれも読んでみたいと思わせる構成と文章である。
    既読はマクルーハンのみと言うお恥ずかしい状況だ。

    ・文化産業以上の『意識産業』
    ・偉大な内省的宗教はいずれもテクストをもっている。
    ・ホガート:労働者階級の実感的識別力
    ・『子どもはもういない』
    ・清水は流言蜚語を国家と国民の感情的結合、つまりナショナリズムの試金石とみていた。
    ・火星人襲来パニックは盛りすぎた逸話
    ・安定な社会は、メディアに映る暴力を安定化の資源として必要としている。
    ・その形式が語る内容を制約する
    ・帝国主義は支配という目的を持っていたが、グローバリズムは無目的
    ・平和な日常生活の中でニュースを期待する読者の欲望こそ倒錯的

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    2021年03月24日
  • メディア論の名著30

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    すこぶる面白かった。
    通例、このシリーズでは、1作品につき3〜4ページが割かれる配分なのだが、この本では10ページ程度割かれている。
    なので、他のシリーズ本よりも大分になっている。
    著者の佐藤卓己先生は、研究者としても教育者としても優れているのであろう。
    単なる読書案内ではなく、先生なりの名著の読解を示しておられ、その読解が深い。
    また、読書案内自身を楽しんでおられる事が垣間見られる。
    読んでいて、心地よい。
    佐藤卓己先生自身のご著書にも興味が湧いた。

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    2020年11月16日
  • 歴史学

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    メディア史の泰斗、佐藤氏が自身がいかにして歴史家になったかを振り返っている。
    教訓的なジャーナリズム史から実証的なマスコミュニケーション史、そして批判的歴史学のメディア史へ。未来への問いを含むメディア史は歴史学のフロンティアであり、そこに可能性を感じるとも。
    氏の研究遍歴が豊富なエピソードとともに語られている。大学でのゼミナールの大切さ、師を見つけること、そしてその読書量に追いつこうと努力すること。氏の基本姿勢が語られている。
    事実誤認を発見してくれた古川隆久氏や優れた自分史を書いた原武史氏への言及もあり、個人的に興味深い。

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    2017年10月11日
  • 歴史学

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    [ 内容 ]
    情報化、グローバル化が加速するメディア社会。
    公議輿論の足場として、歴史的教養の重要性はますます高まっている。
    しかし、こうした現実の課題に対して、「大きな物語」が失われたあと、これまでの歴史学は充分に応えてきただろうか。
    公共性の歴史学という視点から、理性的な討議を可能にする枠組みとして二一世紀歴史学を展望する。

    [ 目次 ]
    1 歴史学ゼミナールの誕生―歴史学はどのように生れたのか(教訓的歴史から歴史研究へ;大学の歴史学 ほか)
    2 接眼レンズを替えて見る―歴史学を学ぶ意味とは何か(社会史が輝いていた頃;世界システムとメディア史 ほか)
    3 歴史学の公共性―歴史学は社会の役

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    2010年06月07日
  • あいまいさに耐える ネガティブ・リテラシーのすすめ

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    ネタバレ

    2025.07.23-2025.10.04

    この本を読み切るのにかなり苦労した。というのも、「ネガティブ・ケイパビリティ」を連想するタイトルに惹かれ心理学的な内容かと思い購入したところ、しっかりとデモクラシーやメディア論から取り上げて考える内容となっており、理解が追いつかない部分が多かったのである。これは私の基礎的な知識が十分ではなかったためで、メディア論や政治学などの知識があればすんなり読めると思われる。

    そんな難しい本ではあったが、この夏東京国立近代美術館で見た『コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ』において、この本の内容を読んでいたからこそ、展示品の背景に躓くこと

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    2025年10月04日
  • あいまいさに耐える ネガティブ・リテラシーのすすめ

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    ネタバレ

    デモクラシーの訳として以前は様々なものがあり、尾崎行雄は輿論主義、という言葉を使った。
    輿論と世論は違うもの。今はセロンと書いて、ヨロンと読む。
    世論はファスト政治、メディアるげん、デモ、情動社会に結びつきやすい。
    輿論は公議輿論というように公的意見、世論はポピュリズム。
    ネガティブリテラシーとは、不用意に反応しない(書き込まない)忍耐力。曖昧な情報を安易な結論に結びつけず、そのまま留め置いて不確実性に耐える力。ネガティブケーパビリティ。

    メディアの予測は、予言の自己成就を狙ったものが多い。
    ニュースに何を求めるか。快楽原理による即時報酬と現実原理による遅延報酬。スポーツ、芸能、スキャンダル

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    2025年06月27日
  • あいまいさに耐える ネガティブ・リテラシーのすすめ

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    タイトルからネガティブ・ケイパビリティに関する内容を想像していたが、メディア情報を受け取る際にネガティブリテラシーを発揮すべきという内容だった。多くの頁は輿論と世論に関する議題に割かれている。

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    2025年04月26日
  • あいまいさに耐える ネガティブ・リテラシーのすすめ

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    時間をかけることの重要性を説いているが、メディアやその受け取り手にこの本は届くのであろうか。届かないのであれば意識作りだけでなく、合意形成の仕組み作りが大切となる。そのようなことを考えた

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    2024年10月03日
  • 言論統制 増補版 情報官・鈴木庫三と教育の国防国家

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    自分達はそんなことしないはずという認知バイアスのもとで仕立て上げられた人物像に、本人の言葉より迫るものであった。どこでも同じことが起きてきた歴史があり、今現在も起きていることを意識しなければならない。

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    2024年09月30日
  • あいまいさに耐える ネガティブ・リテラシーのすすめ

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    『輿論と世論』刊行後の新聞雑誌等へ掲載された論考をまとめたもの。テーマは引き続きメディア・社会を対象としたもの。「報道の自由度ランキング」や「デモ化する社会」を巡る論説には著者ならではの角度と距離感を感じる。SNSをはじめファスト化する社会環境に対しては「やり過ごす力」としてネガティブ・リテラシーを提唱している。

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    2024年08月31日
  • 流言のメディア史

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    メディア流言を単に批判するのではなく、ニュースはそもそも曖昧なものであり、その中で思考を停止せずに、最善の行動を考えることがメディア・リテラシーとして重要、という最後に示されている考えは、新鮮で興味深いものでした。

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    2024年03月10日
  • メディア論の名著30

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    メディア論について疎い私からすると、入門書にしてはやや難解に感じた。

    モッセの大衆の国民化やリップマンの世論など、知っているが読んでない本について、メディア論の観点から解説されており、新しい視点を得られた。

    特に、世論ー輿論の違いからの解説は、ハッとするものがあった。

    最後に読んだことのあるピエールバイヤールの読んでない本について堂々と語る方法が取り上げられており、再読したいと思っている。

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    2021年05月14日
  • 流言のメディア史

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    ネタバレ

    メディアはどうあるべきか、「何をどのように伝えたのか」から考える。

    フェイクニュースは、SNSが発展したから生まれたのではない。SNSがすべての悪の権化ではない。とかく新しいもの=悪者にしたがる自分を反省した。史料の引用も多く、簡単には読み進められなかったが、筆者の言わんとするところは明確に説明されている。

    新聞やラジオ・TVなどのマス・メディアが「正しい」と思うから、事実でないことが報道されているのに神経をとがらせてしまう。知識があれば、誤った情報に飛び付かない、それは間違いだ。皆が望むものを報道してしまうマス・メディアの一面という視点は、今まで自分の中になかったので、特に新聞に関して、

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    2021年05月05日
  • 流言のメディア史

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    最近の流言のメディアまで扱っているので参考になる。特にヒットラーをめぐる日本での関連性の事件についてはいままで扱っている本がなかったのでめずらしい。
     惜しむらくはメディア・リテラシーとの関連とフェイクニュース対策の欠点などももっと書いてほしかった。
     さらに戦中のマスコミのフェイクの問題をもっと詳細に書いてくれることでフェイクニュースの参考文献として役立ったと思われる。

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    2019年08月30日
  • 流言のメディア史

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    学者、ってカンジ。たまに哲学入ってる。私にはレベル高すぎだが、ところどころ心に響いた。最後、ヒトラー神話はメディア流言(この言葉は正しくないと著者は言ってる)とは外れてないか?と思いつつ読んでいたら、突然、キレイに締めくくられた。我が闘争を禁書にしようとしたこともあるドイツ、現在では全文がウェブ上でも読める。「表現の自由」は市民的公共性の理想型に依拠している。ナチズムに関しては「許すことができない」「自由を守り抜かねばならない」といったディシプリンの話法が多用されるが、もともとこれはファシストの語り口ではなかったか。必要なのはファシストの話法によらないファシズムの語りであり、ファシストの裏返し

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    2019年06月25日
  • 現代メディア史 新版

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    今のメディアは過去のメディアに準拠しつつ前に進む、という話を聞いたことがあります。例えば、ページじゃないのにホームページ、フォンを忘れてもスマホ(スマートフォン)、そして強引にテレビであろうとしているAbemaTV、等々。通信と放送が融合し、コンテンツとデータが結合し、AIが生活のすべてをメディア化している「今」だからこそ、著者がまえがきで述べている「バックミラーを覗きながら前進する」ことが、結果的に未来を見ていることになるのかもしれません。本書の初版は20年前の刊行、その時点にバックミラーに映っていた世界に、新たに20年分の進んだ分を付け加えての新版です。すべての歴史が近代までは体系づけて語

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    2019年05月02日