鈴木透のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いかなる国家も、近代化の過程で暴力性が発露する。だが、アメリカにいたっては、建国後も、さまさざま社会矛盾が昂じて、その都度発露される暴力の連鎖に楔を打つことができなかった。その件に関して、丁寧な歴史解説が施されていく。
そして、「それほど矛盾を抱えた国が唯一の超大国として君臨できているのは何故か」という原理的問い、また「そんなアメリカという国と付き合うにはどうしたらいいのか」という遂行的な問いへのシフトが試みられている。
こういう弔い作業をきちっと果そうとするアメリカ研究者がいることに、なんだか深い安堵を感じた。そして何よりも、序説の副題として冠された「処女地の陵辱」というワーディングが素敵。
豊穣な自然を目の前にして、病的に興奮してしまったピューリタンのヴァイタリティ(活力)を、処女陵辱的な心性という(少し意地悪だが、的確な)メタファーで捉え直すと、アメリカの性と暴力の歴史が再解釈できるというしくみ。
そもそも、ピューリタンが最初に入植したヴァージニア州は、エリザベス女王の雅号Virgin Queenにちなんで名づけられたものだ。しかし、「ヴァージニア」という命名は、奇しくも、自然を前にして大興奮した開拓民の「処女陵辱的な心性」(それは以後アメリカの国内外への伸張の歴史を貫通する精神性となる)との奇妙な一致を見せてしまったのである。
「処女地の陵辱」というワーディングによって、この自然・大地に対して、身震いするような興奮を覚えた開拓民の心性を、少女を目の前にした男性の性的興奮になぞらえる。
このアメリカ社会に通底する精神性(「処女地の陵辱」)が環境に向いたときに、環境問題として、少数民族に向いたときに人種差別や暴力の問題(銃社会)の問題として、女性や子供に向いたときに性的虐待として浮かび上がるわけで。
インディアン駆逐も黒人差別も、米西戦争も、広島長崎への原爆投下も、ベトナム戦争も、パノマ侵攻もアフガン戦争も、イラク戦争も、この延長線上に定立できるだろうと。もはや一国だけでボリューミーなリンチの系譜。
なるほど。確かに、イラク戦争はリンチにしか見えない。さらに、治安維持の大儀のもとになされたあの忌まわしい女性兵士によるイラク人捕虜の性的虐待も、性と暴力が一体化して発動する、特異の国ならではの現象として浮かび上がる。
このように現代アメリカを取り巻くイシューを、建国の原初心性になぞらえて、パラレルに捉えていこうとする点に本書の秀逸性があると思います。
副読本はトクヴィルの『アメリカンデモクラシー』とエマニュエル・トッドの『帝国以後』。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
唯一の超大国として、最も進んだ科学技術を誇るアメリカ。
だが、キリスト教の倫理観に縛られ、二億挺を超す銃が野放しにされるなど、「性」と「暴力」の問題については、前近代的な顔を持つ。
それはなぜか―。
この国の特異な成り立ちから繙き、現在、国家・世論を二分する、妊娠中絶、同性愛、異人種間結婚、銃規制、幼児虐待、環境差別、核の行使などの問題から、混迷を深めるいまのアメリカを浮き彫りにする。
[ 目次 ]
第1部 「性と暴力の特異国」の成立―植民地時代~一九六〇年代(「性の特異国」の軌跡 「暴力の特異国」への道)
第2部 現代アメリカの苦悩―一九七〇年代~(「性革命」が生んだ波紋 悪循環に陥ったアメリカ社会 「暴力の特異国」と国際社会)
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