近田文弘のレビュー一覧

  • イチョウの謎を解く─ 一属一種の不思議な木

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    2025年刊。一冊丸ごとイチョウ。専門外でも十分楽しめる。著者はもと科博の先生。
    2部構成。第1部は「イチョウの樹木学」、第2部は「歴史の中のイチョウ」。
    第1部の冒頭は、イチョウのさまざまな謎、えーっそうなのといったトリビアも満載。たとえば、イチョウの学名、Ginkgo bilobaはもとは日本語、しかもそれが誤記のまま定着してしまった!
    歴史好きには、やはり第2部がおもしろい。イチョウは当時はヨーロッパにはなかった。それを日本から持ち込んだのはケンペル。その後来日して詳しく調べたのがツュンべリー(ツンベルク)とシーボルト。日本人ではなかった。彼らの学問的伝統が江川英龍へ、そして矢田部良吉に受け継がれてゆく。最後は東大の創世記の植物学教室の様子で締めくくられている(なお著者は京大出身)。イチョウの精子を発見した平瀬作五郎のことも詳しく書かれている。
    以下、個人的感想。これまでケンペル関連の本を読んだことがあったが、彼が日本をどう見たのかがメインで、イチョウのことなんか書かれていなかった。日本の植物についての本を著しているのに、どこにもそんな紹介がなかった。これっておかしくないか。そして日本の植物学の基礎を築いた矢田部良吉。3年前のNHKの朝ドラ「らんまん」では、牧野富太郎に嫌がらせをするアカハラ教授として描かれていた。40歳で東大教授を免職、47歳で鎌倉の海で溺死、それなのに悪役、可哀想すぎるよー。なお、本書では、牧野についてはnegativeな記載がちらほら。

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    2026年05月17日
  • イチョウの謎を解く─ 一属一種の不思議な木

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    ネタバレ

    イチョウは秋になるとあちこちで見分けられ、澄んだ黄色がとても美しく目立ちます。
    会社が淀屋橋にあったので、朝は地下鉄を降りたら大急ぎで走る毎日で、帰りはたまに仲間と話しながら難波まで歩いたり心斎橋筋を冷かしたり、今は昔、まだ相互通行だった御堂筋のイチョウ並木は今でもたまに通りかかると懐かしいところです。

    今住んでいる、車で近いところに公立大学理学部の植物園があり、生家がまだ遠かったころから四季折々の花や木を見るのに通っていました。
    桜山の下にイチョウの木が一本あります。桜の花がつぼみのころ、イチョウの枝の小さなこぶからグーのような丸まった緑の芽が出てきます。次に行くと葉のわきから細い花房が伸びています。
    また次に行くと根本あたり一面に花が落ちでいます。あの木はオスだな。

    この本では
    1雌雄異株 
    となっています。細い花に見えた部分が雄株と雌株で見分けるのは難しく雌雄混在のイチョウというコラムに詳しい話があります。
    ここで普通でない銀杏の生まれ方の勉強をしました。
    読むほどにとても変なヤツということで、いくら見ても雌株らしい可愛らしい(想像)花がないなぁと思っていました。写真で見ると雌花は葉の根に隠れるように伸びて胚がY字型についてここに風に乗った花粉がやってきてめでたく受粉となるそうです(見たことがないはずだわ)受粉後は胚から芽が出て普通に発芽するようで、このシステムは進化しようがないんですね。種から芽が出る、でも双葉ではなくて茎の様なものがのびて三角の葉っぱが開いていく。ここらあたり以前に銀杏を植えて観察してみました、育ったらいいななんて先も考えずに。

    でも植える所はありません。種を撒いて育ったイチョウを庭に植えたところ大きくなって葉が落ちるし地面にひびが入るし問題になってとうとう引っ越してしまったというご近所話があります。住宅事情ももうイチョウが住めるところではなくなってきています。

    奈良の「一言主神社」は古代からあって一言の願いを聞いてくれるお社とか。
    ハイキングがてら行ったことがありますがもういつから生きているのかという大きなイチョウの木がこれもまた大きくたくさんの乳を垂らしていました。一言の願いはなんだったか忘れましたが。

    三角の葉っぱで鮮やかに紅(黄)葉する、葉は触るとしっとり感はあるし、あちこちでもう見上げるようにでっかくそびえていたり、神社の御神木になったり、すごい歴史とともに黄色に染まる生き方や、乳と呼ばれる奇妙な丸い根が下に向かって伸びていたり、木だけれどうろには何か別な何か生き物が住んでいそうな、長い歴史を生きた物語がありそうな、奇妙な雰囲気も感じる木なんです。でもまたその風情が、何とも言えずいいんですね、特に秋!!

    秋に銀杏を頂きます。銀杏の産地があるそうで、収穫時期には人手が足りないほどで、イチョウ栽培も重労働だそうです。この本で初めて知りました、ぎんなんの産地。
    幼木の芯を止めて枝を四方に広げて伸ばし、しごいて実をとるそうです。
    種類によって長く保存できるものとしぼんでいくものがあるそうです。

    ここからとても感動しました。
    研究者の方たちです。ただの観察ではありません。縦から横から幹から根から勿論葉っぱや実、発芽して育って受粉して結実。見守ってイチョウってなに?の全てを根気よく調べてそれを絵にして、論文に残し世界の分布を追いかけ、移植を観察している努力。美しいこの本にはイチョウって何?どこから来たの?どうして育ってきたの?その答えが多くの人たちの地道な研究が書いてあります。

    始まりは「蘭学事始」かも。三代将軍の時代から目的は違っても日本の国に興味を持って訪れたオランダの博士たち。医学者が多い中、植物好きで東洋の国の名もない花や木を見て研究者魂が、人体だけでなく花や葉っぱにまで及んで、それが類が友を呼んだのか名高い分類という学問になったそうで。
    今の山を歩いて知らない花の写真を撮り名前を調べる、これは何の仲間かなというところから始めるけれど、難しいアルファベットの並んだ中からやっと見慣れた名前をお見つけるとわ~いわ~いと喜んでしまう。

    因みに人の分類は(AIさんに聞くのが早いですが一応)
    生物学的分類では人間は以下の階層で分類されます:界 → 門 → 綱 → 目 → 科 → 属 → 種。現生人類は**哺乳綱・霊長目・ヒト科・ヒト属・ヒト(Homo sapiens)**に属し、学名はラテン語で世界共通です。ヒトは直立二足歩行を行い、大脳が発達して道具の使用や言語・文化活動が可能な点で他の類人猿と区別されます。
    チャンと人間やってるかしら?私。

    界 → 門 なんてはじめてお目にかかりました。「界」なんて、私まだ生きてますけど、って無知は敵なしです。

    だそうで面白いけど。こんなの勉強した人にとってはただの入り口かも。


    今は写真を写して名前は?と聞くと答えてくれたりする。それでも名前のもとは属や科だったりするし。それを調べてくれた人たちの努力の結晶のようです。

    余談ですが田舎の大イチョウを切ったそうで、板前ばりの厚め大判のしっかりしたまな板が来ました。雷が鳴るたび逃げていましたがマナイタになるなんて、嬉しかなしです。

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    2026年03月09日
  • イチョウの謎を解く─ 一属一種の不思議な木

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    yosimiko0126yumさんの本棚からです♪

     イチョウは、みんな知ってる親しみある木です。
     子どものころ、押し葉にはあの黄色い扇形の葉が欠かせませんでした。葉を本にはさんどくと虫よけに?
     そんなイチョウに謎なんてあるの? と思います。
     あるんですね~ 2つの謎が! ひとつは植物としての謎、もうひとつは研究史の謎です。この研究史がおもしろかったです!


     2つの謎に共通する出来事が「イチョウの精子発見」です。発見したのは、福井県出身の平瀬作五郎さん(1856ー1924)です。この発見は1896年(明治29年)のことです。
     これは、明治の日本が世界に向けて発信した、科学分野の「偉業」でした。
     しかし、その発見の1年後に平瀬さんは突然辞職、滋賀県尋常中学校の教師になります(現在の滋賀県立彦根東高等学校)。イチョウの研究もやめてしまいました。さらに日本の学界はなに事もなかったかような感じに・・・
     いったいなぜ? 研究史の謎です。

     この謎について、著者の近田文弘先生が、幕末から明治にかけて、日本の植物学がどう発展していったのか、丹念に、かつ、簡潔に事実を積みあげられています。
     ヨーロッパと日本の植物学の歴史をふり返りながら、近田先生は、平瀬さんの突然の辞職の謎にせまります。

     平瀬さんが「イチョウの精子」を発見した1896年、日本の植物学と言えばの牧野富太郎さん(1862ー1957)は34歳でした。
     ですから、NHK朝ドラ『らんまん』まるかぶりです。
     俳優の要潤(かなめ・じゅん)さんが演じられたかたのモデルも重要人物として登場します。


     植物としてのイチョウの謎はさまざまあるようですが、「イチョウの精子」が一番ではないかと思いました。
     そもそも、平瀬さんの「イチョウの精子発見」は、なぜ「偉業」なんでしょうか。
     実は、イチョウよりも古い時代から存在したシダ植物について、1840~1850年ごろ、ドイツの学者たちが水中を泳ぐ精子を発見していました。
     それから半世紀、おおきな進展のなかったところでの、平瀬さんの発見だったのです。まさに教科書を書き換える、植物学や進化学に大きなインパクトを与えた発見でした。


     そんな重要な発見であるにも関わらず、わたしは全く知らなかったです。しかし、この本のおかげで、平瀬作五郎さんは、もっともっと、称えられるべき人だと知りました。
     そして思うのは、日本で研究者が正しく評価され支援されてほしい、ということです。さらには、それを世界から認められるようになってほしですね。

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    2026年03月06日
  • イチョウの謎を解く─ 一属一種の不思議な木

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    イチョウ 裸子植物
    イチョウ植物門Ginkgophyta イチョウ科Ginkgo biloba
     変種・品種、通称としてトウガタイチョウ、シダレイチョウ、キレハイチョウ、オハツキイチョウ、フイリイチョウ、キバイチョウ、ラッパイチョウ、チチイチョウなどがあるが、種として確立はしていない。
     樹木学上のイチョウの区別と、分類学上のイチョウの区別は別物なので注意……ってなんでやねんっっと思ったが、樹木学は農学みたいなものなので、大根にいろんな品種があってその土地ごとに生育に向き不向きがあるから、そのあたりを区別するのと、分類学として交雑が可能かどうか(まあ、これも暫定的な定義ではあるんだけど)で区別する学問上の取り扱いでは違うのは当たり前で、この本を読むまで失念していたのが、ちょっと我ながら間抜けだったなあなどと思うなどした。
     イチョウの本なので、当たり前にイチョウについて書かれている。
     分類やら、イチョウの特徴である精子による受精などが図解されている。イチョウの特徴として乳という樹体から成長して根になったりする部分とかの解説、薬効についてとかも書いてある。
     ここからはちょっとネタバレになるが、この本の半分は確かにイチョウについての解説だが……うしろ半分は違う。完全なこれは告発本だ。
     高校の教科書に載っているイチョウの精子による受精は平瀬作五郎という人が発見し、世界でもすばらしい評価を得たのだが、何故かこの人の偉業は黙殺された形跡がある。それはどうしてなのかという話を、これでもかと丁寧に解説している。江戸時代にまでさかのぼっているのだから念が入っている。(イチョウという海外では珍しい樹木がヨーロッパに紹介されて標本として採取されたのが江戸時代なので、まあそこまでむりくりという訳ではない。この本はあくまでイチョウの本なので……)細かな図解や人物の略歴も交えて、歴史好きの人ならばとても楽しめると思う。
     明治の混乱期にマスコミがろくでもないデマを報じて、有能な政治家が命を落としたりしていることや、それに伴う現場の混乱とか政治的な争いとか……多分、現場ならではの危機感があるのだろうなあなどと思う。著者は科博の名誉研究員なので、おしてはかれる。
     本としてはそう厚みのあるものではない。イチョウの本だけど、これはイチョウだけの本ではない。

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    2026年01月01日
  • 桜の樹木学

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    第1章 サクラの分類学
    第2章 サクラの植物学
    第3章 人と桜

    日本の野生種・15種・三亜属
    サクラ亜属
     花托筒は長く、花は集散花序か散形花序に付き、少数。
     落葉樹。いわゆるサクラ。
    エゾノウワミズザクラ亜属
     花托筒は短く、花は総状花序に多数付く。落葉樹。
    バクチノキ亜属
     花托筒は短く、花は総状花序に多数付く。常緑樹。

    桜餅
    徳川吉宗が享保2年(1717年)江戸の隅田川沿いに桜を植えさせました。その年隅田川の左岸にある長命寺の寺男山本新六が落葉を醤油樽で塩漬けにし餅に巻いて売り出したのが関東風の始まりとされます。
    関西風は別名を道明寺という。大阪南河内の尼寺で作った乾飯が有名だったことに由来。
    関西風は関東風を真似たことが始まり。
    桜葉は伊豆半島の南西部の静岡県松崎町にある小泉商店他3社のみが生産。

    桜湯
    八重咲きの花の塩漬けを湯に浮かべて桜湯として楽しむ。
    八重の桜はソメイヨシノが終わった4月中下旬に咲きます。園芸品種の「普賢象」「関山」「一葉」など小花柄が長い花が適しています。
    小花柄のついた満開前の花を2個ずつ小花柄ごと摘み取ります。花を水洗いしてザルの上で、2〜3時間陰干しします。桶のような容器を用意し花を入れ、花の重さの2割の粗塩をかけて重石をします。水が上がってきたらその水を捨て、梅酢をふりかけて、1週間ほどたったら陰干しして出来上がりです。後は容器に塩をよくまぶしてふた、のついた容器に入れて保存します。

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    2022年03月18日
  • 桜の樹木学

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    ネタバレ

    タイトルに引っかかったが、実は今年の桜の本の中で一番硬派だった。分類学は楽しめるようになるのに素養が必要なお愉しみであろうということも分かった。老後の趣味にはいいかもしれ兄。

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    2018年03月20日
  • 桜の樹木学

    購入済み

    前半は、形態偏重で読むのが辛い

     冒頭から半分過ぎまで、形態の記述偏重で、結構読むのが辛かった。冒頭から半分過ぎまでの記述も、目に付く桜の木と思われるものを、同定しようとするなら、結構役立つ。「これは桜か否か」「桜としたら、何か?」「同定出来ない(交雑種?)だとしても、何と何の交雑種の可能性が高いか?」を同定しようとするなら、好適な本。が、そんな事まで、私は考えていないので、読むのが辛かった次第。

     が、それ(p.124)以降(枝垂れ桜~)は、論理が納得出来るものだったし、類書では、あんまり記述される事の無い部分(樹皮とか、材としての特質とか、根とか)で楽しめた。また、人文的な分野の記述は、薄いものの独自の視点があり、読んでいて楽しかった(尤も、樹木学がそうした人文分野を含むものだとしても、そこまで網羅的に記述する必要は無いとも思うのだが…記述量も薄い訳だし)。

     類書に比して高価な本だが、これは結局、需要の大きさを勘案したものだろう。そんなに人気の出る様な書き方をした本ではない。但し、掲載されている画像は美しく、これで対価に対する不満を癒やすしかあるまい。

     なお、本書中の気付いた誤植を挙げて措く。そんなに多い訳じゃないが、校正漏れが、散発的に残っていた。

    p.17 l.1 ×密を出す蜜腺 → ○蜜を出す蜜腺
    p.63 l.13 ソメイヨシノは両親がある伊豆半島である ← 意味不明。気分が高ぶり過ぎた? 推測すると「ソメイヨシノの起源は、両親がある伊豆半島である」か?
    p.87 l.25 アブシジンサン → ○アブシジン酸(この前後では、きちんと酸の字が使われている)
    p.128 l.14 ×確立 → ○確率
    p.166 l.2 ×分化 → ○文化
    p.170 l.16 ×真言宗の高僧、蓮如 → (蓮如の時代には、既に、真言宗とは分けて考える方が妥当と考える。故に、当時の宗派名ではないが)浄土真宗の高僧、蓮如

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    2023年03月19日