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◆科学が解き明かす、イチョウの謎◆
植物にあまり関心のない人でも知っている樹木といえば、サクラとイチョウでしょう。全国各地に約50万本の街路樹が並び、寺社のご神木としても多くの巨樹が知られています。秋には黄葉が観光の名所となり、東京・大阪・神奈川ではシンボルツリーに指定されるなど、まさに日本人に最も親しまれている木のひとつです。
しかし、その正体は意外と知られていません。イチョウには親戚がおらず、一属一種として唯一生き残っている存在です。恐竜時代から氷河期を経て仲間が絶滅するなかで、ただひとり現代に生き残った“特別な木”なのです。近年、海外ではイチョウに関する本が次々と刊行され、世界的な注目が高まっています。一方、日本の出版物には誤った記述や思い込みも少なくありません。
本書は、著者が長年の観察を通して事実を検証し、その実像に迫った一冊です。葉や幹、根の特徴、精子が水中を泳ぐという驚きの繁殖法、さらに江戸から明治にかけての研究史なども紹介。身近な一本の木を通して、自然科学の奥深さと探究の喜びを味わえるでしょう。読み終えたとき、道端のイチョウがまったく違って見えてくるはずですよ。
■こんな方におすすめ
・イチョウという植物に興味のある方
・植物学に関心のある方
※イチョウを愛する方に特にオススメ。マニアも納得の1冊です。
■目次
●第1部 イチョウの樹木学
第1章 分類学から見たイチョウと、その研究史
・1. 分類学的位置
・2. 日本に於けるイチョウの植物学的研究史
第2章 イチョウの樹木学的特徴
・1. 葉
・2. 枝と葉
・3. 幹と樹形
・4. 根
・5. イチョウの花と種子(銀杏:ギンナン)
第3章 ギンナン栽培の展開
・1. 祖父江町のギンナン栽培
・2. 静岡市清水農業共同組合銀杏部会
・3. イチョウの葉の栽培
●第2部 歴史の中のイチョウ
第1章 江戸時代に起きたヨーロッパ植物学の大発展とその日本への影響
・1. ケンペルからシーボルトへ、そして日本へ
・2. 江戸時代に日本の科学の進歩に貢献した3人の学者
第2章 開国前夜の幕府の混乱と明治への曙光
・1. 鳴滝塾に関わる幕末の歴史・高野長英と渡辺崋山
・2. 江川英龍から矢田部良吉へ
第3章 創世記の東京大学
・1. 東京大学を立ち上げた明治の指導者達
・2. 植物学の基礎作りに努力した矢田部良吉教授
・3. 植物学教室の第二世代の発展 松村任三教授とその周辺
・4. 平瀬作五郎の生涯と蘇った栄誉
■著者プロフィール
近田 文弘(こんた・ふみひろ):国立科学博物館名誉研究員、理学博士。新潟県新発田市生まれ。京都大学大学院理学研究科修士過程を経て、国立科学博物館植物研究部植物第一研究室長。専門は植物分類学。タイ国および中国長江流域と天山シルクロードの植物相調査に従事。『中国天山の植物』(トンボ出版)、『アジアの花食文化』(誠文堂新光社)、『皇居吹上御苑、東御苑の四季』(NHK出版)、『ずかん たね』、『桜の樹木学』(ともに技術評論社)などの著書がある。
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