村岡直子のレビュー一覧

  • 雌犬
    面白いとか心震えるとかじゃない、「私がいる」と思った。
    女であること以外に共通点のないダマリスが抱えるものを私は知っている。
    根源的な母性の暴力性と濃密な南米の自然の描写はあまりにも似ていて、自分が子供の頃から振りまわされ持て余し恐れていた「これ」はまさしくこのジャングルであり母性。
  • 雌犬
    動物好きな人はご用心かも。
    重たすぎる愛は憎しみに変わるとき、暴力を伴う。

    ダマリスはずっと子どもが欲しかったから夫のロヘリオと努力したけどとうとう子どもは出来なかった。
    ロヘリオも若い頃は協力的で薬草を一緒に摘んで薬を作ったり、怪しい民間療法をうけたりしていたけれど今はもうそんなことは遠い話にな...続きを読む
  • ラスト・ウェイ・アウト
     あまりにも面白いので、最初の1/3は電車を乗り過ごすほど読みふけり、ラスト1/5を切ってからは、読み終えるのがもったいなくて少しずつ読み進めた。

     ある男が自殺を図ろうとしている。
     ノックの音が響く。無視しようとしたがずいぶんとしつこい。

     ドアを開くと、一人の美青年がいた。彼はとある男を殺...続きを読む
  • ラスト・ウェイ・アウト
    過去と現在を縦軸に、記憶と人物を横軸にとって、縦と横とに揺さぶる揺さぶる。何が本当に起こったことで、誰が何を…?と、「12モンキーズ」や「メメント」に似た目眩を覚える。人物造型にもプロットにも手抜きや隙がない。
    読みであり。
  • 雌犬
    コロンビアの海辺の村で邸宅の管理人をしているダマリスは、近所からもらった雌の子犬を飼い始める。ダマリスは不妊治療の末に子どもを諦めた過去をもち、子犬の成長に慰めを感じて溺愛するが、いつしか思い通りにならない犬への愛が歪んでいく。トラウマを持つ中年女性と雌犬の愛憎関係を乾いた筆致で描く。


    なんだか...続きを読む
  • 雌犬
    特段心揺さぶられることなく読み進めていたが、最後ガツンと頭を殴られたかのような衝撃があった。

    読み終わってじわじわくる雌の怖さ。自然と人間の生々しい部分が詰まった作品だった。

    可愛がっていた犬を邪険に扱うようになるなんてひどい!と思いつつ、相手が思い通りに動いてくれない時に起きる苛立ちは私の中に...続きを読む
  • 雌犬
    シンプルな話である。飼っている犬を最初は溺愛していたが、次第に憎しみがつのり、殺してしまうという話。コロンビアの女性作家。舞台は交通の便などで近代化されていなく、ほぼジャングルのような場所のよう。こういうテーマは時代、場所、人間の立場、心情など関係なく、誰もが共感できるテーマであり、故に作者の技量が...続きを読む
  • 雌犬
    コロンビア奥地の寒村。
    ジャングルの湿り気と主人公の渇きの対比がなんとも素晴らしく苦しい作品。
    特に犬との関係が悪くなってからの女性の感情や行動は、恐怖と悲しさの入り混じったサスペンスみたいに、ぐんと胸にせまる。
    雨。ジャングルの臭い。貧しい生活。汚れ。匂い。
    湿度や匂いまでも感じるような表現がまる...続きを読む
  • 雌犬
    南米の貧しい村に住む女性の話。
    不妊からのコンプレックスで心を病みかけた彼女が一匹の雌犬をもらって溺愛しつつ育てる。しかしその犬がある日姿を消し、帰ってきたら妊娠していたことから歯車が狂いだす。

    純文っぽい重苦しい展開と読ませる文章。あんまり普段こういうの読まないんですが、たまに読むと悪くないです...続きを読む
  • 雌犬
    可愛い愛しいだけでは決して済まない、犬との関係。愛と憎しみは常にセットだし、常に内包しあうな、と思う。
  • ラスト・ウェイ・アウト
    サイコサスペンスかスリラーを期待したんだけど、やっぱ南米作家ちゅうのは、アンニュイマジックリアリズムちゅうか、「実は最初から〇〇でしたの」というパターンになりがちで腹いっぱいなのである。でもやっぱ今回も「南米発」という文字に騙されて手に取る。いや、設定はしょうがないと思う。もういい。これで書き始めた...続きを読む
  • ラスト・ウェイ・アウト
    奇書って何でしょう?紹介文にありましたが。それはさておき最後までがんばって読んでみてよかったと言えるでしょう。
  • ラスト・ウェイ・アウト
    ハヤカワ文庫ってことで奇想天外な展開を期待し過ぎて、後半の綺麗にまとめに入った感じがちょっと肩透かしだったかも。映画も真っ当な作品になりそう。