小林慶一郎のレビュー一覧
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民間シンクタンクの活動を基点とした経済学者のワーキンググループによる、日銀金融緩和の出口検証と財政デザイン論考。個人的には、これまで接してきた金融政策に関する知識から大きく逸脱せず驚きは少なかったものの、知識の再整理には大いに役立った。
威勢は良いが論理的冷静さを欠くリフレ支持派には、是非とも「統合政府」のB/Sの意味を論じた第3章と、財政破綻で最も大きな影響を受ける医療福祉領域の未来を予測する第4章を一読してもらいたいところ。しかしおそらく彼らの多くは、「現状何事も起きていない」という刹那的な事実を持ち出して問題の先送りを正当化するばかりか、あまつさえ巻頭に福井俊彦全日銀総裁の名が現れるこ -
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日本のコロナ対応について、経済学者の視点から問題点とその解決策を述べたもの。前半の医療体制に関する考察は素晴らしく、とても参考となった。ただし、財政についてや税制については、コロナとはかけ離れた内容も多く、参考にならなかった。また、後半の解決策もそれぞれの章をまとめた内容でくどく感じた。
「医療エリートによる判断は、医療システムを平時と同じ状態に保つことと医療機関の経営が成り立つことを優先し、そのために国民の様々な経済社会的な活動は大幅に制限する、という判断に傾きがちなのだ。コロナ危機は社会全体に大きなコストをもたらしたが、非医療の活動が受けた制限とコストがあまりのも大きかったことに比べて、 -
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コロナ禍における各国政府の財政出動はまさしく異次元のレベルだが日本もスゴイ。よって、財政破綻後の事を真剣に想定しておきたいなと思って、以前に献本頂いていた本作を緊急事態宣言下において読んでみた。内容は財政破綻の定義とそのメカニズムに始まり、それが起きた後の緊急対応(財政トリアージ、日銀施策)と恒久対応(医療・介護制度の再編と財政規律の再設定、予算庁の設置等)の具体的策にかなりの字数を割いて提示している。そして最後はナイトの不確実性や時間整合性問題などに触れたうえで、人類の長寿命化における財政の世代間格差問題を新しい社会契約論で刷新していくことを提唱して終わっている。
これを読んでの感想は2点 -
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人口減少が進み大幅な経済成長が期待できない中、膨大な政府債務が累積しており、今すぐにではないにしても、日本の財政が持続可能でなくなる、すなわち、いつか破綻する可能性は低くないと考えられる。本書は、財政破綻が起こるとき、日本社会に何が起きるか、また、財政破綻の「後」の社会を立て直すためにどうすべきかを論じている。
本書における「財政破綻」の定義は、国内外の市場の投資家が日本国債を買わなくなるという事態が発生することを前提に、インフレ率又は名目金利が高騰する状態であるとする。
財政破綻後の対応としては、➀歳出の執行停止・先送りなど直後の対応、②歳出削減を含む「止血措置」、③財政赤字を作らない体質( -
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経済学を専門としない幅広い層向けに、経済学の基本的なものの見方を知り、経済学を使って現代日本のさまざまな問題を考える一歩としてほしいという趣旨の経済学の解説書。「経済学のメガネ」として、「虫の目」(ミクロの視点)、「鳥の目」(マクロの視点)、「魚の目」(時代の趨勢を捉える視点)の3つの視点に内容を分けて書かれている。
多少は経済学の素養があったので、「世の中の見え方がガラッと変わる」とまではいかなかったが、ミクロ・マクロ経済学の基本的な考え方と、それを使って現実の問題をどう考えるかについて、要となるポイントを押さえた解説がなされており、非常に優れた経済学の入門書だと感じた。
特に、 「第6章