あらすじ
○日本の債務はついに1,000兆円の大台を突破。いまや、財政破綻は「起きるか、起きないか」ではなく、「起きたらどうなるのか」「どう危機をしのぐのか」を考えるべき時に来ている。デフレが終わり、金利が上昇期を迎えれば、財政赤字問題が一気に悪化する懸念があるからだ。「財政破綻」が実際に起こったら日本経済は一体どうなるのか? どのような危機対応策をとるべきなのか。
○本書は、「財政危機時のトリアージ」、財政破綻後の「日本銀行の出口戦略」「公的医療と介護・福祉」「長期の財政再構築」「経済成長と新しい社会契約」といった重要課題を取り上げ、日本経済・財政の再生への道を探る。
〇切迫した状況のもとで、国家の運営に支障を来さないように何をするのか、何を守り、どう再生するのか。政策の優先順位が厳しく問われるが、そのシナリオ分析は、財政破綻そのものを回避するための方策を考える上でもヒントを提供する。
○編著者の小林慶一郎氏はじめ、小黒一正(法政大学教授、財政・公共政策)、左三川郁子(日経センター主任研究員、金融政策論)、小林庸平(三菱UFJリーサーチ&コンサルティング経済政策部主任研究員、公共経済学)、佐藤主光(一橋大学教授、財政)、松山幸弘(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、社会保障)、森田朗(津田塾大学教授、行政学)と、経済・財政・社会保障の専門家が執筆。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
民間シンクタンクの活動を基点とした経済学者のワーキンググループによる、日銀金融緩和の出口検証と財政デザイン論考。個人的には、これまで接してきた金融政策に関する知識から大きく逸脱せず驚きは少なかったものの、知識の再整理には大いに役立った。
威勢は良いが論理的冷静さを欠くリフレ支持派には、是非とも「統合政府」のB/Sの意味を論じた第3章と、財政破綻で最も大きな影響を受ける医療福祉領域の未来を予測する第4章を一読してもらいたいところ。しかしおそらく彼らの多くは、「現状何事も起きていない」という刹那的な事実を持ち出して問題の先送りを正当化するばかりか、あまつさえ巻頭に福井俊彦全日銀総裁の名が現れることのみを以てして、本書の主張を(内容を吟味することもなく)日銀バンカーや官僚の保身が目的だとして拒絶するだろう。
以前、「政府紙幣」の発行で国家の過剰債務は即解決する、と主張する友人と一頻り論争を交わしたことがある。その時「そんな簡単なフリーランチが存在するのなら、なぜギリシャもアルゼンチンも、そして日本もその政府通貨とやらを発行していないのか」と尋ねたところ、その友人はこともなげに「それは官僚らの陰謀のためだ」と答えたのだった。
無論、彼の無知を嗤うのは容易い。しかしことほど左様に問題の根は深いのだと認識せねばならない。本書のように「フリーランチなんてものはないんだよ」と、噛んで含めるようにわかりやすく諭してくれる書に対しても、自分から縁遠いアカデミズムの匂いがするというだけで、端から拒絶反応を示す層が、確実に日本にも存在するのだ。
知識層が研究と議論を深めれば深めるほど、その成果は彼らの耳には届かないというジレンマ。今後日本経済が苦境に陥るにつれ、不遇を託つ彼らの声は知性の囁きを掻き消して益々大きくなるだろう。それを思うと、いかに本書でフューチャー・デザインが熱っぽく語られようと、シニカルな思いを抱かずにはいられない。
Posted by ブクログ
財政破綻後の対策と、今後起こさないための構造改革案についてわかりやすくまとめられていた。
間違ったこと・先送りしたことはどこかで帳尻をあわせないといけないのは個人でも国家でも同じ、ということだと思います。
Posted by ブクログ
コロナ禍における各国政府の財政出動はまさしく異次元のレベルだが日本もスゴイ。よって、財政破綻後の事を真剣に想定しておきたいなと思って、以前に献本頂いていた本作を緊急事態宣言下において読んでみた。内容は財政破綻の定義とそのメカニズムに始まり、それが起きた後の緊急対応(財政トリアージ、日銀施策)と恒久対応(医療・介護制度の再編と財政規律の再設定、予算庁の設置等)の具体的策にかなりの字数を割いて提示している。そして最後はナイトの不確実性や時間整合性問題などに触れたうえで、人類の長寿命化における財政の世代間格差問題を新しい社会契約論で刷新していくことを提唱して終わっている。
これを読んでの感想は2点。1つは財政破綻から破綻後の再生局面においては個々人の「健康」がとても重要になること(多くの医療機関等が破綻し、医療・健康サービスを受けれなくなる。)これは今のコロナ禍においても言えることなので、コロナ禍から財政破綻が連続する現象になるならば健康を維持し続けることが極めて重要な要素になりそう。
もう1つは財政の世代間格差問題は、結局は「同世代互助」に仕切り直さない限り、人生百年時代においては書中にあるような新しい社会契約は理想的過ぎて難しいのではないかということ。これは政治家にはぜひ検討いただきたい。
とにかく、「健康」の価値に改めて気づけたのはよかった。財政破綻までもう少し時間はあるだろうから、運動したり、食べるものに気を使って、備えるぞ。
Posted by ブクログ
人口減少が進み大幅な経済成長が期待できない中、膨大な政府債務が累積しており、今すぐにではないにしても、日本の財政が持続可能でなくなる、すなわち、いつか破綻する可能性は低くないと考えられる。本書は、財政破綻が起こるとき、日本社会に何が起きるか、また、財政破綻の「後」の社会を立て直すためにどうすべきかを論じている。
本書における「財政破綻」の定義は、国内外の市場の投資家が日本国債を買わなくなるという事態が発生することを前提に、インフレ率又は名目金利が高騰する状態であるとする。
財政破綻後の対応としては、➀歳出の執行停止・先送りなど直後の対応、②歳出削減を含む「止血措置」、③財政赤字を作らない体質(構造)への展開に向けた「構造改革」があるとした上で、特に最初の2つの段階においては、歳出面において何を残し、何をカットするかをあらかじめ決めておく「トリアージ」が必須となると指摘している。また、長期の財政再構築として、ミクロ的な措置=歳出・税制の効率化が重要であり、赤字が膨らんだときの対処をあらかじめ「財政ルール」として定めることを提言している。一方、財政再建を進める中でも、社会の分断等を防ぐために、弱者を救済するセーフティーネットの整備も必要だと指摘している。最後に、財政破綻を防ぐための経済・政治思想的な議論も行っている。
財政破綻の可能性を提起する論者を「狼少年」に喩え、本書のような議論を馬鹿にしたり、忌避したりする向きも少なからずあるが、東日本大震災における原発事故の教訓があるように、将来起きる可能性が少しでもあるのであれば、「最悪の事態」を想定して政策議論をしておくことは、たいへん意義のあることだと考える。
また、現状の「国債のパラドックス」とも呼ばれる国債残高が累増しているにもかかわらず国債金利が低水準で推移している状況は「危うい均衡」であり、国債への信認を変化させるような何かをきっかけ(国債を国内の金融資産で支えられなくなったとき等)に財政危機につながりうるという本書の見立ては、納得のいくものであり、その点でも「財政破綻への備え」は必要だと感じる。
本書で示される財政破綻後の措置や財政破綻を防ぐための処方箋は、いずれも厳しいものではあるが、目を背けてはならないと思う。
Posted by ブクログ
財政破綻は「今そこにある危機」
日本人よ覚悟を持て!という内容です。
本書は、元日銀総裁の福井俊彦氏らの支援で
書かれただけに、背筋が凍る程の恐ろしい内容
です。
みなさんも是非一読を!
Posted by ブクログ
日本が財政破綻した後の経済や医療について、現在の統計データに基づいて予測・考察する本。これはこれで興味深いけど、実際の生活には役立ちそうにない。