ミック・ジャクソンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
英国人作家の寓話集で、イギリスで絶滅した熊に捧げる8篇からなります。個人的に英国文学は不案内ですが、いかにもな?皮肉とユーモアが満載の大人向けの短編集と感じました。
興味をもち手にする方への助言です。訳者の田内さんのあとがきに、本書に限って本編より先に読んでいただきたい、とありました。えー、読んじゃいましたよー! 仕方ありません…トホホ。イギリスの熊史を把握すると理解が進むんですね。
凶暴な熊と人間の長きに亘る格闘の結果…と勝手なイメージは、見事に裏切られました。8篇全て、熊たちの悲哀に満ちた声が聞こえてくるようです。
この時代の熊が、いかに人間に振り回されていたかが解ります。勝手 -
Posted by ブクログ
コンテのようなショートストーリーが10篇おさめられているのですが、奇妙奇天烈な物語で映像が浮かんでくると不気味だたり、滑稽だったり、美しかったりと読後はモヤモヤが残るんですが心地よかったりです。
正気と狂気、日常と非日常の境界線で揺れるファンタジーにSF、サイコホラーな感触がおどろ可笑しく影絵をみてるようなナイトメアーでした。
ティムバートンのイラストを彷彿させるタッチでアダムスファミリーかって表紙絵がそれぞれの話の主人公たちなんです。
映像的には「蝶の修理屋」なんですが1000匹の蝶が飛び交うシーンは幻想的なんだけど集合体恐怖症の私は想像しただけで鳥肌たってしまいました。
「宇宙人にさ -
Posted by ブクログ
なんとも不思議な本である。
イギリス人は熊を絶滅させてしまったと言う話は聞いていたので、熊絶滅に至る物語を時代を追ってやや幻想風に書いた連作かな、と思って読みはじめたのだが。
どうも、必ずしもそうではなさそうだ。
どこまでが史実で、どこが寓話で、どこからが伝説なのか、奇妙にぼやけてわからない。
途中までは、たしかに伝承に基づいた実話だろう。熊は森では恐れられ、サーカスでは虐待されてきたのだろう。だが、その先は?
史実として熊が下水掃除をしたり、潜水士をしていたわけがないと思う。
この辺は寓話なのだろう。
だが、その光景は妙に心に届く。
たぶんこの本は、伝承であり、史実であり、寓話であり、伝説 -
Posted by ブクログ
イギリスが生み出した(^(エ)^)キャラは有名なのに、この国では11世紀には野生の熊は乱獲により絶滅、動物虐待ショーをするために熊を輸入していたそうだ。
そもそも人間が生み出したキャラクターたちとその生態とにこれほどギャップが激しい動物も珍しいのだが、本書に登場する熊は、熊本来の野生と我々が熊に感じる独特の神秘性を備え、8つの話に見事に収められている。(ちなみに私のお薦めは「下水熊」)
短編集ではなく、串刺しで読まないと意味がない。
話(時代)の順に、熊たちは森から町に近づき、聖性を失い、人に虐げられるようになる。いつも彼らに言葉はなく、荒ぶる野生を抑えながら運命と諦めるがごとく哀しく生きるが