“「あ、いえ……」
さっきまで元気いっぱいに僕とキャベツを取り合っていた真紀のトーンが急に下がった。
「ん?どうかしたかい?」
「あ、あの、私、父と母が離婚していて、今一人暮らしなんです」
真紀は、小さな声で、でも大ばあちゃんの方を見て、言った。
「だから、大丈夫です。家に、誰もいないから……」
「そうなのかい……」
大ばあちゃんが少し寂しそうな顔をした。真紀は慌てて膝立ちして、両手を振る。
「あ、でも!両親と仲が悪い訳じゃないんです!毎月会ってるし、二人とも大好きなんです!それに、お兄ちゃんがいつも東京に来て一緒に住もうって言ってくれてて、だから、高校卒業するまでは名古屋にいたいっていうのは私のわがままなんです!ええと、それで……」
別に大ばあちゃんは何も言ってないし聞いてもない。真紀もそれに気づいたのか、急に真っ赤になって座布団にぺたんと座った。そしてうつむいて、それでも、言葉を続けた。
「あ、あの、だから、いつもは夕飯は一人だから、今日は、楽しかった……です」
大ばあちゃんは優しい目で真紀を見て、
「あたしも、楽しかったよ」
と、言った。そして、ゆっくりと立ち上がった。
「さあ、お皿を片付けるかね」”[P.215]
映画のOZの設定が生きてるなぁと。
カズマ格好いいし、KKの活躍は凄いし、大ばあちゃんが電話掛けた後の件は映画と同じ感じでわくわくしたし。
面白かった。
“「あ、忘れてた」
もう一つ、【カズマ】に伝えようと思っていた事があったのだった。実は、自分はキングカズマフォロワーではないという事を。
OMCスタジアムで初めて会った時、【カズマ】は早合点していたけど、自分のアバター名である【KK】は「キングカズマ」の略ではない。ただ単に自分の本名のイニシャルをアバター名にしただけなのだ。
「まあ、別にあえて言う必要もないか。キングカズマの団である事に、変わりはないし」
【KK】は苦笑しながら、ログアウトした。
こうして【カズマ】と【KK】は、現実<リアル>では顔を合わせる事も、まともに会話を交わす事もなく、お互いの事を最後まで知らないまま、別れた。
【カズマ】こと池沢佳主馬と、【KK】こと小磯健二が、運命の悪戯によって再会を果たすのは、この後、わずか3ヶ月後の事である。”[P.310]