舘野泉のレビュー一覧
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ネタバレ2002年に脳溢血で倒れ、右半身の自由を失った舘野泉さん。
ピアニストとして右手を失うことは致命的な出来事で、普通であれば精神的ショックが大きい。
でも、舘野さんは落ち込まなかった。病気で奪われたものは右半身だけ。他はなにも変わらなかったと言う。
病気をする前もそのあとも変わらない。
舘野さんがそうであったのは、彼の生き方。いい意味でこだわりがない。そして新しいこと、未知への領域へ足を踏み入れるのを恐れない開拓精神ももっていたからだと本書を読んで感じた。
好きなものを長年仕事にしていると、大なり小なりその人のこだわり、「こうじゃなきゃダメだ」という部分が滲み出てくる。
でも、舘野さんにはそれが -
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この本を読んだ最初の感想は、「自由」と「寝かせる」が好きな舘野さんって「"リアルスナフキン"やん!」でした。
舘野泉さんは大河ドラマ「義経」で左手だけの演奏でオープニング曲を演奏された在フィンランドのピアニストさんです。
私は演奏から入って魅了された人間ですが、この自伝的作品を読んで、舘野さんのことがより好きになりました。
・「新しいことは素敵!」と全てを受け入れられるポジティブさ
・大事なご縁は寝かせて待つ(=私は勝手に「春待ち」と呼んでます 笑)謙虚さ
・自分の「心」の声を信じる誠実さ
全部共感できるし、尊敬できるポイント。
そんな舘野さんの魅力をエッセイのよ -
Posted by ブクログ
舘野泉さんはフィンランド在住の高名なピアニスト。
私もかつてコンサートで繊細で叙情的な美しい音色に魅了された。
その舘野さんが脳溢血で右手の機能を奪われた。
この本は65歳の2002年1月に、ピアニストとして致命的とも思われる悲劇にみまわれながら、左手のピアニストとして再生した著者の、力強い魂の物語である。
ピアニスト舘野泉の右手の損失は世界中の損失であったはずなのに、左手のピアニスト舘野泉の誕生によって、舘野泉に献呈されるために世界中でたくさんの左手のためのピアノ曲が生まれた。
不屈でありながら、とらわれない舘野さんの言葉は今、何かを失って絶望の中にいる方に、勇気を与えてくれるはず。
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読んでよかったと思えた本。舘野泉の魅力がいっぱい詰まっていた。
彼のピアノ演奏については作曲家の間宮芳生による次の文章がよく語っている。「ケレン味やら、情緒主義と、舘野さんの演奏の本質とは、実はずいぶんちがう。舘野さんの演奏はいつも、なんの虚飾もなく、真っすぐに音楽と向かい合っている」「それに加えて、舘野さんのこのところの演奏から、以前聴かれなかった、訴えの激しさを聴くような気がしている。なによりそれは、音それぞれの表情濃さ、訴えかけの激しさになって現れてきた」
脳溢血で倒れたのち、左手で演奏するようになったことでも注目されているが、その前も後も自然体で生きていることがわかり、かくあ -
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松居直さんのところを中心に抜き書き。
松居 ところが、中村さんがお感じになるその実感が多くのおとなには欠けているのです。だから、日本の教育は教え過ぎる。それで知識が頭には入る。だけど心が動かない。すると好奇心が出てこない。好奇心というのは頭ではなく、最終的には気持ちですから。今の子どもたちの好奇心はほんとうに弱くなっているのじゃないかな……。
八月十五日の玉音放送を聞いた時に僕が感じたのは、「死ななくてもよくなった」ということです。でも、喜びはまったくありませんでした。戦争が終わるという実感がない。当時の男の子というのは、皆、兵隊になって戦場で死ぬ。そのために生きていたのです。生きるなん