野家啓一のレビュー一覧

  • 科学哲学への招待

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    学者としての面目躍如な論考である。これまでの歴史の中で行われてきた学説を解説する手際は一流である。つまり、精彩を放つ学説のその有様を再現することにかけて、著者に知の閃きが十分に看取できる。一方で、学説史のみならず、現代社会の問題にも言及があるが、その点に関しては、マスコミが口にするような、常識的な言説しかこの著者は描いておらず、創造性が発揮されていない。これでは社会に対して通り一遍な承認しか与えられず、突破口となる言説からは遠い。とはいえ、知の紹介に関しては私も興奮したし、面白い論考である。

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    2018年02月24日
  • パラダイムとは何か  クーンの科学史革命

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    前半は、明快でわかりやすく、クーンが痛撃した「科学」(産業化、社会化された科学コミュニティが進める活動のことか)についての説明もよくわかった。しかし後半は少しもたついている印象で読みやすいとは言えなかった。

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    2018年10月14日
  • 歴史を哲学する 7日間の集中講義

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    歴史の認識論をテーマに、歴史科の諸問題を扱っていました。この本を読んでよかったと思えた点が二つあります。一つは歴史について考える材料を得られたこと。少なくとも歴史について考える場合には「歴史はフィクションか」と「唯一の正しい歴史」が争点となるようです。もう一つは「科学とは何か」というより大きな問いへ向かうきっかけがこの本を通して得られること。『歴史は科学か』という主要な問いのなかで、科学哲学のいくつかの知見を分かりやすく解説しています。興味を持った議論を深堀りできるような仕方で解説しているので、参考文献などを通して知識を深めることができそうです。私自身は歴史科でも歴史に特に興味を抱いている者で

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    2018年07月29日
  • 科学哲学への招待

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    放送大学のテキストとして刊行された『科学の哲学』に、福島原発が科学技術に対してどのような問いを投げかけているのかという問題を考察した補章を加えた本です。

    全体は三部に分かれており、第一部では古代から近代に至るまでの科学史の概略が説明されています。第二部では、ウィーン学団による論理実証主義の運動から、ポパーの批判的合理主義を経て、クーンのパラダイム論がもたらしたインパクトまでの科学哲学の経緯を簡潔に説明しています。第三部では、科学知識の社会学の現代的展開から、いわゆる「ソーカル事件」によって広く知られるようになったサイエンス・ウォーズなどのテーマがとりあげられています。

    著者は、村上陽一郎と

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    2022年01月26日
  • パラダイムとは何か  クーンの科学史革命

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    クーンの「科学革命の構造」からくる、パラダイムについて論じた書。

    クーンは、科学の歴史においての変化を論じたにもかかわらず拡大解釈されて、その中で論争に巻き込まれたことがわかる。

    パラダイム論をとなえたクーンが、社会にどのように位置づけられたかを考える意味では良い本だと思う。

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    2011年10月07日