野家啓一のレビュー一覧
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「歴史は過ぎ去った過去の出来事の記述である以上、その出来事を直接に知覚することはできず、言葉による『語り(narrative)』を媒介にせざるをえない」(p.183)
これがどういうことなのかを、かなり丁寧に解説してくれます。
ただ、解説が平易でも、色々な学説を広く引っぱってきているので、読者への要求水準は高めかもしれません。
著者が分析哲学(科学哲学)の人だから科学哲学だけ押さえておけばいいというわけではなくて、解釈学、現象学、心理学…も知っている必要があります。
ただ、同じことについて別の視点から語っていることが多く(それこそ複数の射映を提示して志向的統一に至るということを読者に体験させ -
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学術書(講義録だからそこまで厳密なものでもないけれど)を一気読みしたのはいつ以来だろう。本当におもしろかった。裏表紙の案内文に「人文科学の在り方を問い直す、知的刺激に満ちた本」とある通りだと思う。
でもそれは文字通りの意味で「人文科学の在り方」に興味がないとたぶんあんまりおもしろくない(そもそも講義ってことは、語りかけの対象が人文科学の学生になるってことだし)と思う。
逆に言えば人文研究を志す大学生には是非読んでほしい本と言えるんじゃないかと思う(参考図書の紹介も豊富だし。とりあえず僕は武田泰淳の『司馬遷』は読んでみようと思います)。少なくとも僕は学生時代にこの本を読みたかったです。
そ -
Posted by ブクログ
1982(昭和57)年著。
以前読んだ大森荘蔵さんの著作は結構面白く読めて共感する部分も多かったのだが、本書の前半、「視覚」現象を巡って常識を覆すような論が展開される部分は、どうも首肯できずに苦しかった。文章は哲学書としては恐ろしく平易・明解な方で、言っていることは理解できるのだが、どうしても「いや、どうかな、違うんじゃないかな」と疑わしい気持ちになるのだった。
しかし本書後半、「視覚」を離れて心的現象全般について哲学的洞察が繰り広げられ始めると、これはなかなか面白く、かつ、同意できそうな点も多くなった。「立ちあらわれ」という独特のキーワードを軸に、「自分」と周囲の風景や事物との関わりを -
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科学哲学者である著者が、クーンの考え方や生涯を「“科学”殺人事件」に見立てて紹介しながら、彼の登場による科学哲学の展開や今後について焦点をあて評じた本である。
ここでいう「”科学”殺人事件」とは、クーンの「パラダイム概念」が科学の合理的進歩を否定し、科学的知見や成果が相対的なものにすぎないとして科学の権威を失墜させた、という見解を指している。
しかし著者によると、パラダイム概念は科学的知識における進歩史観を否定したものではあるが、本来的(=クーンの意図したところ)には、パラダイム間は相互に理解不可能なものではなく、片方が立てばもう片方が立たないものではないという。そして何故クーンが科学を貶め -
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歴史の認識論をテーマに、歴史科の諸問題を扱っていました。この本を読んでよかったと思えた点が二つあります。一つは歴史について考える材料を得られたこと。少なくとも歴史について考える場合には「歴史はフィクションか」と「唯一の正しい歴史」が争点となるようです。もう一つは「科学とは何か」というより大きな問いへ向かうきっかけがこの本を通して得られること。『歴史は科学か』という主要な問いのなかで、科学哲学のいくつかの知見を分かりやすく解説しています。興味を持った議論を深堀りできるような仕方で解説しているので、参考文献などを通して知識を深めることができそうです。私自身は歴史科でも歴史に特に興味を抱いている者で