野家啓一のレビュー一覧

  • 科学哲学への招待

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    非常に分かりやすく面白かったです。

    著者は科学史、科学哲学、科学社会学という3つの観点による科学の捉え方を提示していらっしゃるようでしたが、それぞれ独立させて読んでも中身の濃い非常に面白い内容ばかりでした。

    スコラが余暇であったことやピアレビューの原型、技術と科学の区別と日本への普及あたりの話が、ナラティブとして私は特に好きです。

    あとがきの最後にあるように、「なんのための科学か」を改めて問う必要があるのが現代なんですかね。

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    2025年10月16日
  • 科学哲学への招待

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    アリストテレス、プトレマイオス、コペルニクス、ガリレオにニュートン、あるいはフレーゲ、ポパー、クワインにクーンといった人達が何を主張したのか。
    個別にはよく知られていると思いますが、それらを繋げて整理することができる本です。

    本書は3部立てです。

    第1部は科学史です。
    まず、古代ギリシアにおける自然観=アリストテレス的自然観が出発点です。
    このアリストテレス的自然観は、現代の知識を持っていなければ、「そうかも」と思ってしまいそうなもので、次のように整理されます。
    1 古代天文学のセントラル・ドグマ
    (1) 天上と地上の根本的区別
    (2) 天体の動力としての天球の存在
    (3) 天体の自然運動

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    2023年02月11日
  • 科学哲学への招待

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    ・「科学」って何なの? っていう疑問に、歴史・哲学・社会学の三方向から攻める本。
    ・それぞれの章が単独でも学びになるのに、組み合わせると「科学」が多面的に浮かび上がってくる構成、おもしろすぎ。
    ・特に哲学の章、「こういう背景があってこの考え方が出てきて、そのカウンターとしてこの考え方が出てきて...」って流れで書かれてるので、ストーリー性があって楽しい。
    ・タイトルから想像する以上に読みやすいよ。

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    2023年01月03日
  • 歴史を哲学する 7日間の集中講義

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    「歴史は過ぎ去った過去の出来事の記述である以上、その出来事を直接に知覚することはできず、言葉による『語り(narrative)』を媒介にせざるをえない」(p.183)
    これがどういうことなのかを、かなり丁寧に解説してくれます。

    ただ、解説が平易でも、色々な学説を広く引っぱってきているので、読者への要求水準は高めかもしれません。
    著者が分析哲学(科学哲学)の人だから科学哲学だけ押さえておけばいいというわけではなくて、解釈学、現象学、心理学…も知っている必要があります。
    ただ、同じことについて別の視点から語っていることが多く(それこそ複数の射映を提示して志向的統一に至るということを読者に体験させ

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    2023年01月01日
  • 科学哲学への招待

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    無茶苦茶おもしろい。高校生から10代のうちに読んでおくべき本。
    哲学→科学の歴史から、科学哲学と科学者、社会との関わりまで、時代を追いながら論者と理論の変遷がわかる。
    純粋に真理に至る道を探る素朴な科学像は今はもうないと思った。

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    2021年12月01日
  • 科学哲学への招待

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     科学とは何か。その問いに答えるため、科学史、科学哲学、科学社会学の三つの観点から論じた本。理路整然とした文章で、取り扱っている内容も質、量ともにバランスが良く頭に入れやすい。

     印象に残ったことは、古代理論が長い間支配していたのは、理論が日常の知覚的経験と合致していたから、また、理論の中核的な規則が、当時の信仰的背景と親和性を持っており、そのため、革新的な考えは発案者すら葛藤を生じさせるものであったからである。
    このことは、科学の発展を考える上で重要な事例である。なぜなら、科学とは仮説であることを如実に表している事実だからである。

     仮説ではあるが、悲しいことではない。科学とはそういうも

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    2021年03月16日
  • 科学哲学への招待

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    科学のはじまりから現代まで、パラダイムの変遷を中心に纏められた完成度の高い入門書。
    簡潔に淡々と科学の歴史を説明しながらも、没入感を感じさせる文章の上手さがある。
    西洋のサイエンスと日本の科学の違いと違いが生まれた理由についての記述は興味深い。

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    2019年08月15日
  • 歴史を哲学する 7日間の集中講義

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    『物語の哲学』と合わせて。哲学塾の一冊の文庫化だが、このシリーズ、見た目よりけっこう難しめのが多い気がする。

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    2018年10月14日
  • 科学の解釈学

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    20世紀の科学哲学の基礎を少しだけ学んだ後に、もう少し踏み込んだ議論を眺めてみたいと思って手に取りました。野家先生の80-90年代の論文をいくつか纏めた内容となっていますが、クーンのパラダイム論、クワインのホーリズムからネオ・プラグマティズム、はたまたサイエンス・ウォーズの話まで、入門的な本より少し踏み込んだ議論を平易な文章で読むことができます。
    ウィトゲンシュタインのアスペクト論に関する話は少し難しく感じます。

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    2018年05月30日
  • 科学哲学への招待

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    新書なのに科学史・科学哲学・科学社会学の三部構成で多角的に論じられている良質な入門書。放送大学の教科書がもとになっているだけあって、よくまとまっていて日本語も読みやすい。科学哲学の入門書はたくさんあるが科学史や科学社会学の入門書はあまりないので、その点でも貴重。

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    2017年01月30日
  • 歴史を哲学する 7日間の集中講義

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    学術書(講義録だからそこまで厳密なものでもないけれど)を一気読みしたのはいつ以来だろう。本当におもしろかった。裏表紙の案内文に「人文科学の在り方を問い直す、知的刺激に満ちた本」とある通りだと思う。

    でもそれは文字通りの意味で「人文科学の在り方」に興味がないとたぶんあんまりおもしろくない(そもそも講義ってことは、語りかけの対象が人文科学の学生になるってことだし)と思う。

    逆に言えば人文研究を志す大学生には是非読んでほしい本と言えるんじゃないかと思う(参考図書の紹介も豊富だし。とりあえず僕は武田泰淳の『司馬遷』は読んでみようと思います)。少なくとも僕は学生時代にこの本を読みたかったです。

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    2016年07月29日
  • 歴史を哲学する 7日間の集中講義

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    「歴史の物語論」の入門書として、同じ著者の『物語の哲学』や、アーサー・C・ダントの『物語としての歴史』よりも先に読むべきであろう。
    「補講」における遅塚忠躬『史学概論』の批判に対する応答は、史学と哲学における概念の取り扱い方の差異を浮き彫りにしている。「事実」という概念の考究に関しては、遅塚氏よりも野家氏の方がより根源的なものであるように思える。
    問題点を挙げるならば、「皇国史観」という、見直しの必要性が主張されるようなカテゴリーを用いていることであろう(若井敏明『平泉澄』,田中卓『平泉史学と皇国史観』参照)。

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    2025年02月10日
  • 科学哲学への招待

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    科学者の端くれとして,科学哲学での考える科学と科学者の考える科学は違っているのではないかという動機で読んでみて,やはり違っているという思いが強くなった.

    多くの科学者は,10章ポパーの反証主義に基づいていると考える.幽霊とか反証できないものは科学の対象ではなく,また反証されるまでの永遠の仮説で,絶対に正しい神話などではないという,周囲の科学者との交流で得ている認識と一致する.ただ,ポパーの中でも自然淘汰と関連付けるのはあまり同意できなかった.

    しかしながら,その後の議論の展開には同意できない点が多い.次のクワインテーゼだが,すでに公理主義になった数学についての議論の過程で,経験的な観測につ

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    2023年02月28日
  • 科学哲学への招待

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    【星:4.5】
    「科学」とは何か、哲学と何が違うのか、そんな疑問を抱いていたところで見つけた。そしてこの私の疑問に十分答えてくれた1冊であった。

    科学史・科学哲学・科学社会学と3部構成で、お堅い内容ではあるものの、非常に丁寧な説明で分かりやすく書いてくれている。
    正直分からない部分もあるが、文章・説明が丁寧なためか、それがストレスにならない。

    読んでよかったと思わせてくれる本であった。

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    2022年12月30日
  • 新視覚新論

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     1982(昭和57)年著。
     以前読んだ大森荘蔵さんの著作は結構面白く読めて共感する部分も多かったのだが、本書の前半、「視覚」現象を巡って常識を覆すような論が展開される部分は、どうも首肯できずに苦しかった。文章は哲学書としては恐ろしく平易・明解な方で、言っていることは理解できるのだが、どうしても「いや、どうかな、違うんじゃないかな」と疑わしい気持ちになるのだった。
     しかし本書後半、「視覚」を離れて心的現象全般について哲学的洞察が繰り広げられ始めると、これはなかなか面白く、かつ、同意できそうな点も多くなった。「立ちあらわれ」という独特のキーワードを軸に、「自分」と周囲の風景や事物との関わりを

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    2022年07月31日
  • 科学哲学への招待

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    ネタバレ

    ギリシア的コスモロジー(アリストテレス的自然観)
    =天動説

    アリストテレスの運動(実体も量も質も)
    可能態dynamisから現実態エネルゲイア

    2000年信じられてきたアリストテレス的自然観が「科学革命」によって崩れる
    =「十二世紀ルネサンス」
    アラビア科学をヨーロッパ世界にもたらした
    ・アラビア数字
    ・位取り法
    ・60進法
    ・アラビア語の定冠詞al(代数学、アルゴリズム、アルカリなど)
    ・実証主義と実験精神(錬金術からくる)

    コペルニクス「コスモロジーの転換」
    ニュートン「天と地の統一」
    ケプラー

    ガリレオ「自然の数学化」
    質的自然観から量的自然観へ

    ギリシア科学 演繹法の論証科学

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    2022年01月15日
  • 科学哲学への招待

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    とてもおもしろい。何よりも既出事項を何度も反復して振り返ってくださるので、折返し内容理解を深め、事実確認しながら読み進めていくことができる。正直、どのように自分が、科学に取り組んでいくかその立ち位置を確認するにはもっと学ばなくては、と思うものの、大きなヒントを与えてくれることは間違いない。
    近年における科学研究のあり方についてなども言及している最後の方は評価も別れるのかもしれないが、個人的には誠実な著者の学問に対する態度が表れているように思え、、非常に勉強になった。

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    2020年08月11日
  • 科学哲学への招待

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    天動説が間違っていて、地動説があっているという考えは、まだ学校で教えられているのかもしれないが、どちらがあっているか?という考えそのものが、社会のパースペクティブによって経験科学である自然科学が成立していくという、学問の歴史性を示している。
    また、地動説が正しいとしたとしても、それはより、「何が中心か」、何が慣性系かを考える我々の習慣が強くなっていることを物語っており、マイケルソン・モーリーの実験の執念への奇妙さを生んだ。そもそも、この世界に慣性系を物語るような現象は観測されたことがあるのだろうか?観測されたこともない現象に基づき物理法則の仮説が生まれること自体、錬金術の補完的要素が科学に残さ

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    2020年05月06日
  • 科学哲学への招待

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    科学とは何か?を広く紹介した本。科学技術という言葉があるが、本来科学は裕福な趣味のようにやるもので、奴隷のやるような労働の技術は別ものだった。それらがいかに結びついていくかのあたりが面白かった。

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    2020年01月06日
  • パラダイムとは何か  クーンの科学史革命

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    科学哲学者である著者が、クーンの考え方や生涯を「“科学”殺人事件」に見立てて紹介しながら、彼の登場による科学哲学の展開や今後について焦点をあて評じた本である。

    ここでいう「”科学”殺人事件」とは、クーンの「パラダイム概念」が科学の合理的進歩を否定し、科学的知見や成果が相対的なものにすぎないとして科学の権威を失墜させた、という見解を指している。
    しかし著者によると、パラダイム概念は科学的知識における進歩史観を否定したものではあるが、本来的(=クーンの意図したところ)には、パラダイム間は相互に理解不可能なものではなく、片方が立てばもう片方が立たないものではないという。そして何故クーンが科学を貶め

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    2018年07月31日