高杉康成のレビュー一覧
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通勤電車内の広告に高杉さんの新著があり、読んだことがない人の著作を読むときは、出来るだけ初期作品を読むようにしているので(ビジネス本を書く位言いたいことがある人は、普通一作目で言いたいことを全部書いちゃうもんだろう、と勝手に思っているので)、6年前の本だけど読んでみた。
キーエンスの人、と思って読んでいるので、相当バイアスは掛かっているかもしれないけど、文句のつけようがない成果を出している人の言うことだけに説得力あるな。自分の会社で新事業開発に苦労している理由がよく実感出来た。
特に、デザインレビュー会議のやり方。合意形成を目的とせず、初期設定事項の確認を目的とすると、仕様がブレないようだ。 -
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そもそも「キーエンスとは何か」もよくわからないまま読み始めた。
読み終わるとタイトルにある「性弱説」は腑に落ちる。
P.106
「『人は難しいことや新しいことを積極的には取り入れたがらない』『人は目先の簡単な方法を選んでしまいがちだ』。こういった前提の下に戦略を立て、仕組みをつくり、実践する。これが、キーエンス流の性弱説経営です。」
澤田さんの「職業、挑戦者」ともオーバーラップするところだが、人は難しいことからは逃げる方向に動くのが当たり前で、それをカバーするための仕組み化、あるいはリーダーの覚悟が必要なんだろう。
心理学者ハーズバーグが唱えた「動機付け・衛生理論」についても知らなかったので勉強になった。
前者の「動機付け要因」は、「あるとやる気につながる要因」、後者の「衛生要因」とは、それが「不足すると不満につながる要因」。
この二つが欠けないように、環境を選ばなければならないと認識した。 -
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ネタバレ1. 「性弱説」とは
・人の弱さを前提とする考え方: 「性善説」(人は正しく指示すればできる)でも「性悪説」(人は罰しないと手を抜く)でもなく、「人は弱い生き物である」という前提に立つ。
・「弱い」の定義: ここでいう「弱い」とは、道徳的な善悪ではなく、「困難なことや新しいことには積極的になれない」「つい目先の楽な方、簡単な方を選んでしまいがち」という人間の本質的な傾向を指す。
・「できるだろう」の否定: 多くの企業が性善説で「できるだろう」と楽観視するのに対し、キーエンスは「できないかもしれない」という性弱説の視点から、誰もが成果を出せる仕組みを徹底的に作り込む。
・個人ではなく仕組みで成果を追求: 属人的な能力や根性に頼らず、人の弱さをカバーし、誰もが同じレベルで成果を出せる再現性の高い仕組みを構築する。
2. 人材育成とマネジメント
・事後指導ではなく事前フォローの徹底: 失敗してから「なぜできなかった」と叱責するのではなく、「できないかもしれない」を前提に、事前に弱点行動を修正し、成功の確率を高める仕組みを導入する(例:ロールプレイングの徹底)。
・プロセス重視とKPIマネジメント: 結果だけでなく、目標達成に至るプロセス(KPI)を詳細に設定し、日々チェックする。上司はKPIを基に行動の改善を促し、小さな成功体験を積み重ねさせることで部下の成長を促す。
・「努力不足」で終わらせない: 失敗や未達の原因を「努力不足」で片付けず、仕組みやプロセスの中に問題がないかを深掘りし、科学的に改善していく。
・公平性の確保: 評価や報酬において、頑張っている人が報われる公平な仕組みを徹底し、全体のモチベーションとパフォーマンスの底上げを図る。
3. 営業戦略と顧客ニーズの深掘り
・真のニーズの探求: 顧客の言うことが常に正しいとは限らない、という性弱説的な視点を持つ。顧客自身が気づいていない、**潜在的な「大きな困りごと」**を見つけ出すことに注力する。
・「今、どうやっているか?」を問う: 顧客の真のニーズを構造化するために、「誰が」「今どのようにして」「何が問題で」「どれくらい困っているか」の4要素を明確にする。特に「今、どのようにして」という現状把握を重視する。
・情報収集の仕組み化(ニーズカード): 顧客のニーズを組織的に収集・共有するため、「ニーズカード」制度を導入。提出しないと評価が下がるペナルティと、良質なニーズには賞金を与えるインセンティブにより、情報収集を徹底的に行う。
・高付加価値製品の提供: 顧客の**「大きな困りごと」を解決する製品**は、他社には真似できないため、高価格であっても顧客に選ばれ、高収益につながる。
4. 仕組みを機能させるための仕組み
・楽な方への逃避を防ぐ: 人は楽な方へ流れがちであるため、せっかく作った仕組み自体が形骸化しないための、監視やチェックの仕組みを同時に用意する(例:一分単位の日報、上司による顧客への提案満足度確認の電話)。
・数値化の徹底: 目標、行動、成果のすべてを**数値化(KPI化)**することで、曖昧さを排除し、誰もが同じ基準で仕事に取り組めるようにする。
・徹底した事前準備: 「できるかもしれない」ではなく「できないかもしれない」を前提に、あらゆる業務で事前準備の徹底を仕組みとして義務付ける。 -
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ヒットの原理の方程式は、トレンド×ニーズ、である。
例えばコンビニコーヒーは30年前に登場したが、3年前に大ヒットした。その理由は、追い風トレンドが弱かったからである。トレンドとは、世の中の大きな傾向のことで、また加えて、ニーズを深掘りすること(隠れたニーズの抽出)ができれば、商品企画や販促活動の具体案を考えやすくなる。大ヒットした3年前には、①時短トレンド、②セルフトレンド、③香りトレンドといった3つの追い風トレンドが、コンビニコーヒーを後押ししてくれた。
また、コンビニのプレミアムロールケーキのヒットは、食べきり、時短、車内といったトレンドがあるのに、ロールケーキが一本単位でしか売っておらず、切ったり食べたりするのに、包丁や皿が必要で、車内で食べにくそうに食べている、といったトレンドと実際の消費者の行動観察とのギャップから、隠れたニーズを把握したことが成功につながった。
これらのトレンドやニーズは、具体的には以下のように捉える。
①「見る」でなく「頭で捉える」:多い、変わった、手間がかかっているモノ・コトを特に意識する
②「マクロ」と「ミクロ」:マクロニーズとは、世の中全体が求めているもので、トレンドと同等。ミクロニーズとは、ニーズが深掘りされた隠れたニーズである。
③ニーズタイムを作る:頭で捉えることを、意識的に実行する時間を1日5分でもいいので、確保する
④深く掘り下げる:言われたことをそのまま受け止めず、縦に深く掘り下げる
⑤横に連鎖させる:他に似たようなケースはないか、同じような要望を持っている顧客はいないか、を考える
競合(3C)分析は後でもよい。必ずしも、競合の戦略が正しい訳ではない。3T分析(市場動向:Trend、顧客ターゲット:Target、自社技術・ノウハウ;Technology)から始めるべきである。 -
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消費財というよりは、BtoBで生産財の商品開発を行う中小企業がメインターゲットと思われる書籍。ただし、顧客ニーズの適切な把握が商品開発において一番大切ということは、どのカテゴリーでも共通すると思う。
文中では「困りごと」と表現されているが、それがなぜ生じているのか、これまで対策を打ったのか、放置しているのかで、顧客にとっての困っている程度を把握するのが出発点。そのため、商品開発のインプットをもたらし、商品価値をターゲットセグメントに伝える営業担当者を重要な位置づけとしている。営業部門との関わりまで踏み込んでいる商品開発の本は珍しい。
SWOTから直接的に商品開発に移るのは危険であるとし、本当に市場機会があるのか、何らかの兆しに見える顧客動向は「なぜそうなっているのか」を把握することが大切。確かに、いわゆるSWOTだと漠っとし過ぎて使いづらいんだよね。
商品開発時のレビューのあり方、上市後レビューの重要性、営業戦略のPDCAは、中小企業診断士らしい提言だと思う。もっとも、どのような企業であっても、成功確率を高め、組織と人材のレベルを高めるには必要な仕組みである。社内視点で関係者の納得感を高めることに注力するのではなく、顧客の困りごとにどうやって応えるかという視点で商品に取り組みたいものである。